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綾瀬はるかの一気コールをどう捉えるか 『義母と娘のブルース』が映し出す“こうあるべき”姿

リアルサウンド

18/7/18(水) 12:10

「同じ色じゃないから」

 『義母と娘のブルース』(TBS系)第2話。良一(竹野内豊)が“奇跡の”花屋で購入したカーネーションは2本だった。1本は娘・みゆき(横溝菜帆)の実母である亡き妻・愛(奥山佳恵)への赤いカーネーション。そして、もう1本はみゆきの義母となった現妻・亜希子(綾瀬はるか)への紫のカーネーション。良一がどこまで考えてのチョイスだったのかはわからない。だが、赤いカーネーションの花言葉は“母への愛”、“真実の愛”。そして紫のカーネーションの花言葉は“誇り”、“気品”だ。カーネーションをみゆきに手渡し、「活けて」と実母の遺影に飾らせ実母への想いはそのまま持ち続けていいこと、そして「あげて」と義母に差し出させたのは文字通りカラーの違う新しい母親への敬意と尊重を持ってほしいと願ってのことだったように思えた。「手伝わせるのは、みゆきのため」と話していた良一なら、きっと。

参考:綾瀬はるかが結婚に感じる“メリット”とは? 『義母と娘のブルース』が示した、人と向き合う勇気

 仕事はできるが少しズレているキャリアウーマンの亜希子が、いよいよ良一とみゆきが暮らす家にやってきた。亡くなった母親を求めるみゆきと、理想の母親像を思い描けない亜希子。不器用なふたりを繋ぐのが、良一の大らかな人柄だ。決してやり手タイプではないが、小さな奇跡を見つけて微笑む良一の周りはいつも温かな空気が流れる。偶然出会った麦田章(佐藤健)にも、“奇石”の花屋と掲げたのぼりの誤字を丁寧に教えて一緒に笑う。他の客が素通りするところを、立ち止まって楽しめるのが良一の魅力だ。みゆきと亜希子がスーパーで繰り広げたハンバーグの材料クイズ対決にも、電話口で最初は何をしているのかと困惑するが、事情を知るとノリノリで付き合う。

 そんな良一を亜希子は「私の足りないところを持っている人」と語った。ビジネスライクで合理的な亜希子に対して、良一は柔軟で臨機応変。きっと良一ならば、ひとりでもみゆきを愛情たっぷりに育てられたはずだろう。実際にパートナーを失ってから約3年、そうしてきたのだから。だが、みゆきの気持ちを押し切るように再婚をしたのは、きっとエンディングで彼が倒れ込んだことと関係していると推し測れる。だが今は考えたくない。少しずつ3人での暮らしが見えてきた今はまだ……。

 それにしても10年前を振り返るようなの形でストーリーが展開されていく設定とはいえ、このドラマには度々ドキッとする場面がある。「男が寿退社するなんて」や「仕事で朝帰りをして栄養ドリンクを一気飲みするって、おっさん」など、今よりもずっと男と女の役割が“こうあるべき”と定義されているようなセリフが飛び交う。亜希子が空気が読めないと感じるのも、“女性”や“母親”というポジションに対する理想像が私たちに定着しているからかもしれない。だが、その“空気”とは一体なんだろう。“母親はこうあるべき”、“女性はこうあるべき”、“普通はこうあるべき”……というものは、確定されていない。地域や時代が変われば、“こうあるべき”も異なる。概念は構築されては疑問視され、そして再び構築されていく。それが、時代に漂う“空気”なのだろう。

 もしかしたら“家庭はこうあるべき”という手本があれば、亜希子も忠実にその役割を担ったのかもしれない。だが、それは実母のハンバーグレシピのようにあいまいで、文字や言葉で残すことは難しい。食事をしたり、テレビを見たり、買い物をしたり、と同じ経験を重ねていくことで伝わっていく。人生を共有することでしか得られない。母娘になるレシピは、一人ひとりが試行錯誤で作っていくしかないのだ。

 一方で“仕事人間ならばこうあるべき”は完璧にマスターした亜希子にとって、感情的な場面は全て宴会芸になってしまう。唯一、その方法が理屈抜きでクライアントの心を開かせてきた実績が伴っているからだろう。だが、キライな人参を食べてもらおうと、「みゆきのいいとこ、見てみたい! 一気! 一気!」と一気コールを繰り広げるのには、少々面を食らった。これをビジネス経験を活かした“しつけ”ととるか、イヤがっている娘に食べることを強要する“ハラスメント”ととるか。「シュールな展開」だと笑えるか、「ありえない」と眉をひそめるか。そして、亜希子と一緒に盛り上げた良一を包容力があるととるか、あまりにも鈍感ととるか。物語は、いつだって私たち自身を映し出す鏡だ。ドラマを疑似体験することで、見えてくるのは自分が今持っている“こうあるべき”なのだろう。

 過去から続いてきたものと、同じ色に染まろうとする必要はない。それまであった価値観にも愛を持ち、そして新しい自分の考えにも誇りを持つこと。良一の2本のカーネーションは、多様な価値観が広がりつつある今を生きる視聴者にも、手渡されたものなのかもしれない。(佐藤結衣)

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