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「21世紀の女の子」Q&Aの様子。

「21世紀の女の子」若手監督14人が赤裸々に語る!「映画が言葉を追い越す瞬間」

ナタリー

18/11/2(金) 21:02

第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品された「21世紀の女の子」が、11月1日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにてワールドプレミア。上映後のQ&Aに監督・企画・プロデュースを担当した山戸結希ら14人が出席した。

本作は1980年代後半から1990年代生まれの新進監督15人が、自分自身のセクシャリティやジェンダーがゆらいだ瞬間をテーマに監督した8分以内の短編を集めたオムニバス映画。Q&Aでは山戸を含む監督陣14人が、上映された短編の並び順に自作の着想や背景について語った。

トップバッターは処女作「あみこ」が第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品された山中瑶子。中国人の母親を持つ彼女は、自身のルーツに興味が湧きアルバイト先である中華料理屋を舞台に「回転てん子とどりーむ母ちゃん」を撮り上げた。「本当に混乱していたんです」と、ベルリンから帰国した際に本作のオファーを受けたときのことを述懐。「映画祭から放り出されてよくわからない状況で、世界とは、人間とはと考えるようになってしまって。その結果がセックスだった(笑)」と物語の背景を明かした。

最新長編「いつも月夜に米の飯」が劇場公開されたばかりの加藤綾佳は、日南響子が出演した「粘膜」を監督。山戸が提示したテーマの中に「肯定」というワードがあったことに触れながら、本作の根底には「女性が『セックスをしたい』と言うこと自体がはばかられる世の中で、それを別に言ってもいいじゃないか」という思いがあることを明かす。そして、そこから「誰かの一番になって愛されたいけどセックスができない子」「セックスは好きでいろんな人とできるけど本当の愛を持っていない子」と対照的な登場人物を作り上げていったことを説明する。

唯一、約200名の公募の中から選ばれた立命館大学映画部に所属する現役大学生・金子由里奈は「projection」に、自身のヌード写真を登場させている。写真は18歳の頃、写真家の北田瑞絵に撮ってもらったもの。その経験を、彼女は「社会性とか意味とかを脱いでいった状態の自分みたいなものを撮られて。今までは撮って見る側だったのに、初めて撮られて見られて。それが自己肯定につながったんです」と振り返った。

初長編作「少女邂逅」がMOOSIC LAB 2017で観客賞を受賞し、今年劇場公開も果たした枝優花は「恋愛乾燥剤」を発表。タイトルにもなった薬のアイデアの根底には「もっと本能的に人を好きになれればいいのに」という思いがあるそう。仕事で10代の人々と触れ合ったことがきっかけで「昔はもっと気軽に人を好きになれた。大人になると職業とか、服装とか相手の真ん中を見れなくなる瞬間が多くなった」と気付き、創作につなげた。

ファッションブランド「縷縷夢兎」のデザイナーであり、短編映画「THE END OF ANTHEM」の監督経験も持つ東佳苗。彼女は、モトーラ世理奈を主演に迎えた「out of fashion」について「ファッションやアートを志す女の子たちがぶつかる壁。映画もそうですけど、自分の内面を形にしてお金をもらう仕事自体が非効率的だし、常に悩みを抱えるもの。でもそれをどうしても選んでしまう自分がいる。そういった思いを持つ人も多いんじゃないかと思って作りました」と語る。

初長編「真っ赤な星」の公開を12月に控える井樫彩は「君のシーツ」を監督。山戸からオファーを受けた時期を振り返り「めちゃくちゃ女の子とセックスしてる夢を見てた頃でした。それがテーマにぴったりだなと思って作りました」とシンプルに着想を明かす。

「みちていく」で知られ、2018年には東京・テアトル新宿で特集上映も行われた竹内里紗は「Mirror」を手がけた。オファーを受け「また“女性”監督でくくられる」と不安を覚えたことを述懐し、「男性監督を入れてもいいのでは?」と山戸に直接相談したこともあった。「そのときに山戸さんは『みんな女性だったら、女らしい感性とか言われることはない。作品それぞれに対してちゃんと話ができる映画になる』とおっしゃってくれて。その時間が私にとってとても大切で、映画では外側から求められるイメージと本当の自分の間で悩む人を描こうと思いました」と制作の背景を語った。

現在ABC、テレビ朝日ほかにて放送中のドラマ「深夜のダメ恋図鑑」の監督であるふくだももこは、最近別れたばかりという元彼のメモに着想を得て「セフレとセックスレス」を監督した。「7年ぐらい付き合ってて、もう恋とか愛とか超えた何かだと思ってたんですけど。いろいろあったんです」と赤裸々に語り出す。この日はその元彼の名前が書かれたパーカーを着て登壇し、「セックスをするためにいる2人がそれをしなくなる。矛盾の関係が面白いなと。そして、その関係を始めたい男の子と終わらせたい女の子を設定しました」とキャラクター造形のアイデアを述べた。

CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)の企画として制作した「Dressing Up」で、第25回日本映画プロフェッショナル大賞の新人監督賞を受賞している安川有果。自作「ミューズ」の着想源は、あるテレビ番組で観た「酒豪の妻を自慢するお笑い芸人」だったという。「テレビに出ていた奥さんも、その豪快なキャラクターを保とうとしていました。でもその合間に見せる繊細な表情を見たときに、『ああ、この人を自由にしてあげたい』と思った。ただテレビを見て感じただけのことですが……」とコメント。

「なっちゃんはまだ新宿」でMOOSIC LAB 2017の3冠に輝いた首藤凜は、「I wanna be your cat」を監督した。温泉旅館でカンヅメになりながら脚本を執筆する主人公のキャラクターについては、オファーを受けたときの自身の境遇が影響している。「すごく追い詰められているときでした……」と振り返りながら、山戸に提示されたテーマに言及。そして「私が『女性であること』『自分であること』をただ恥ずかしくなるときは、自分のことを『愚かだな』と思ったり、逆に『自分が自分でよかった』『生まれてきてよかった』と思ったりする瞬間だなと気付いたんです」と当時の心境を明かした。

2019年に初長編監督作「浜辺のゲーム」が公開予定の夏都愛未は、「珊瑚樹」でFTMの人物と彼を好きになる少女たちの三角関係を描いた。「彼女たちが当たり前のように彼を好きになって、なんの戸惑いもなくストレートに感情をぶつけるさまを描くことが1つのテーマでした」と述べる。

「おばけ」がMOOSIC LAB 2014で上映された坂本ユカリは、「女の子や男の子という役割を窮屈だな、生きづらいなとは感じていた」という思いから「reborn」を制作した。「そんなことを考えているときに、自分がベッドの上から見ていた天井がすごい狭いんだけど、心次第ではそれを広げることができるんだなと気付いて。そういう女の子の心は、たぶん締め付けるものではないという気持ちがありました」と作品に込めた思いを明かした。

「脱脱脱脱17」でMOOSIC LAB 2016の4冠を獲得している松本花奈は、橋本愛を主演に迎えた「愛はどこにも消えない」を監督。彼女はオファーを受けたときに、考えを巡らせていた「無駄な時間」をもとに映画を形作った。そして「例えば誰かと結婚するとき、それまで付き合った人との時間は無駄と思っちゃいけない。過去の自分の積み重ねで今の自分が形成されているから、死ぬときに丸ごと『今までの自分、好きだったな』と思えたらいいなという願いで作りました」と語る。

各監督の話をメモを取りながら聞き入っていた山戸は「初めて知ることが多くて、本当に素晴らしいお話でした」と感慨深げ。「『21世紀の女の子』はある1つの言葉に過ぎなくて、きっとこの映画で瞬間的にすれ違っただけ。皆さんはこのペルソナを脱いだら、また違うペルソナを自由に付け替えて、作家として、人間として羽ばたいていかれる方々だと思います」と監督たちを称賛する。自作「離ればなれの花々へ」に関しては「母と神と映画が三位一体になっている構造」と明かした。

最後に山戸は「おそらくここにいる全員が『女性監督ならでは』と言われたことがある。それに言葉で反論しようとは思いません。なぜなら映画が言葉を追い越す瞬間があると思っているから。映画的な批評よりも、批評的な映画のほうがずっと速度が速いと思います。これは批評へのチャレンジでもあります」と宣言。さらに「ここに強い意志を持って観に来てくださった皆さんは、この第一歩をともに歩まれた方々です。ぜひぜひ、まだまだ命は続いていくということで、何卒何卒よろしくお願いいたします」と呼びかけ、イベントを締めくくった。

東京国際映画祭で上映されたバージョンとは並びが異なる「21世紀の女の子」は、2019年2月8日より、東京・テアトル新宿ほかでロードショー。玉川桜がエンドロールアニメーションとメインビジュアルを手がけ、大森靖子と平賀さち枝が主題歌として「LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ--」を提供している。

「21世紀の女の子」監督、主演キャスト

参加監督

山戸結希 / 井樫彩 / 枝優花 / 加藤綾佳 / 坂本ユカリ / 首藤凜 / 竹内里紗 / 夏都愛未 / 東佳苗 / ふくだももこ / 松本花奈 / 安川有果 / 山中瑶子 / 金子由里奈 / 玉川桜

主演キャスト

橋本愛 / 朝倉あき / 石橋静河 / 伊藤沙莉 / 唐田えりか / 北浦愛 / 木下あかり / 倉島颯良 / 黒川芽以 / 瀧内公美 / 日南響子 / 堀春菜 / 松井玲奈 / 三浦透子 / モトーラ世理奈 / 山田杏奈

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