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加瀬亮×木竜麻生『鈴木家の嘘』対談 「すごく純粋に出発した映画に参加できた」

リアルサウンド

18/11/22(木) 13:30

 映画『鈴木家の嘘』が11月16日より公開中だ。“作家主義”と“俳優発掘”をテーマに 、『恋人たち』『滝を見にいく』などの作品を生み出してきた松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト第6弾となる本作は、橋口亮輔監督、石井裕也監督、大森立嗣監督ら、数多くの作品で助監督を務めてきた野尻克己の劇場映画監督デビュー作。引きこもりの長男の突然の死に直面した家族の混乱と再生を笑いと涙で綴る。

参考:<a href=”http://www.realsound.jp/movie/2018/11/post-281980.html”>その他画像はこちら</a>

 今回リアルサウンド映画部では、自らこの世を去った引きこもりの長男・浩一役を演じた加瀬亮と、その妹である富美役を演じた木竜麻生にインタビュー。野尻監督への強い想い、二人の両親役を演じた岸部一徳、原日出子らとのエピソード、充実感に満ちていたという現場の雰囲気まで話を聞いた。

ーー改めて本作の撮影を振り返ってみていかがですか?

木竜麻生(以下、木竜):大変は大変でしたし、いろんなことを考えた時間だったんですけど、撮影の間は私にとってものすごく幸せでした。

加瀬亮(以下、加瀬):野尻監督のデビュー作なので、絶対いい映画になって欲しいという思いでした。

ーー野尻監督とは現場で一緒にお仕事された経験はあるんですか?

木竜:私は初めて映画の現場に入らせていただいた時に、野尻監督が助監督をされていて、その1回だけですね。

加瀬:僕はもう何度も。約18年~19年の付き合いになります。ちなみに、野尻監督が助監督をしている現場は寝れない、大変というジンクスが僕の中ではあります(笑)。

ーー今回は寝られました?(笑)

加瀬:今回は僕はそんなに撮影日数が多くなかったので大丈夫でした。

ーー撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

木竜:すごくよかったと思います。スタッフのみなさんが野尻さんの作る映画を観たいと思って現場にいるという雰囲気を毎日感じられて、素敵な現場でした。

加瀬:僕は、初日だけ変な感じがしましたね。監督している姿を見たのが初めてだったので(笑)。でも2日目からは、もう野尻さんが監督として立っている感じがしました。

ーー加瀬さんと木竜さんとのやり取りは?

加瀬:ここ(加瀬と木竜)はおしゃべりが禁止されていました。

ーーおしゃべり禁止の理由は、監督から聞いていたんですか?

加瀬:僕は知らないんですよね。聞いてた?

木竜:野尻監督は「加瀬さんは優しいから、話したら優しい部分が見えてしまって、富美という役に入りづらくなる」と言っていました。でも加瀬さんとは1回だけ、映画とは関係なく「音楽はなに聞くの?」みたいな話をしました。

ーーお二人の両親を演じた、岸部一徳さんと原日出子さんとはどんな会話を?

加瀬:岸部さんとは何度か共演したこともあって、みんなでご飯を食べたり、少し話したりはしました。でも、僕は今回の役を演じる上で、基本的にちょっと離れていた方がいいとは思っていたので、現場にいた時はそこまでたくさんは話をしてないです。

木竜:私は、自分から話しかけるのがあんまり得意じゃないんですが、お二人から話しかけていただいて、いろんな話をしました。原さんは、私が吹き出物を作ってきた時に「このビタミンがいいんだよ! 飲んで!」って言ってくれたり(笑)、「今日はバナナ持ってきたからあげる!」って分けてくれたり(笑)。

ーー本当のお母さんみたいに(笑)。

木竜:本当にそんな感じでした。原さん、岸部さんと岸本(加世子)さんでスーパー銭湯に行ったこともありました。「私、すごい人たちとお風呂に入っていたな……」と今になって思います(笑)。

ーー加瀬さんは、突然自ら命を絶ってしまった鈴木家の長男というシリアスな役柄ですが、役作りの工夫は?

加瀬:監督の実際のお兄さんのこともあったので、撮影前に監督と飲んで、たくさん話を聞きましたし、メールのやりとりなどもしました。当然、自分が経験したことのない役を演じないといけないので、自分が何に対してだったら、命を投げ出せるのかということをずっと考えていました。

ーー木竜さんはいかがですか?

木竜:私は、撮影前のワークショップで、監督の話はもちろん、私自身の家族の話も監督としました。あと、劇中で富美がやっている新体操の練習を4カ月くらい通わせてもらって、それも今思うとすごく大きかったかもしれないです。自分の体をなにかのために一生懸命使っている時は余計なことを考えないからこそ、役に溶け込めた気がして。

ーーワークショップはどのような内容だったんですか?

木竜:全部で4日間、脚本の中で、富美が出ているシーンや大事なシーンを何度もやっていただきました。私も家族ではないですけど、身近な人を亡くしているので、そのことをワークショップを通して初めてちゃんと考えた気がします。悲しい気持ちにはなっていたけれど、ちゃんと考えていなかったんだなと思って、ワークショップの間に監督とお話をして、自分が見ていなかった部分を見る機会をもらいました。

加瀬:僕は、映像でしか木竜さんのワークショップを見ていないんですけど、監督はすごくしつこい(笑)。でも監督は、ある出来事によってどのような気持ちが起こるのかということを、非常にきめ細かく知っている人なんです。それは現場でも同じで、何回もテイクを重ねることもあるんですが、監督の感覚はものすごく信じられたので、役者としては信頼して体を預けられる監督でした。

木竜:私も、大事なところでは何度もテイクを重ねて撮影したんですが、監督が「もう1回」と言うことに対して「どうして?」とも思いませんでしたし、それだけきちんと時間をかけてくれるのも監督の愛だと感じました。きちんと一つ一つのシーンに向き合ってくれているから、私も持っているもので応えていかないといけないという意気込みでしたね。

ーーテイクを重ねるというのは、体力的にも精神的にも大変かと思います。

木竜:どのシーンもその時は大変でした。でも、私だけじゃなくて、現場にいるスタッフ全員が同じように『鈴木家の嘘』を背負ってくれている雰囲気があったので、通して撮れたのはこの組だったからだという実感があります。

加瀬:僕が出ているシーンは全て重いんです(笑)。でも現場は、監督の人柄、共演者の人柄もあって楽しいんですね。でも、そういう気持ちとはちょっと違うところにいなくちゃいけなかったのでそういう意味では集中が大変な時もありました。

ーー『鈴木家の嘘』を通して、新たに得た経験はありますか?

加瀬:邦画をいろいろ観ていますけど、この映画はとてもいいと思うんです。企画の成り立ちの時点でビジネス・興行優先の映画が多い中で、野尻監督のデビュー作に関われてよかったのは、すごく純粋に出発した映画に参加できたということです。現場にいて思ったのは、キャスト・スタッフも含めてみんなの顔がいいんですよね。作っている充実感を皆が感じてるといいますか。映画の大小に関係なく、そういうもの作りの姿勢を基本にしてほしいですし、自分もそうありたいと改めて思いましたね。

木竜:撮影後半くらいの時に、原さんから「麻生ちゃんはまだ現場をそんなに経験していない中で、5本の指に入るくらい良い現場を経験しちゃったから、こういう現場はもう10年は無いと思っておきなさい」って言われて(笑)、岸部さんも別のタイミングで同じような話をしてくださったんです。同じ現場で、違う方に同じ話をしていただいたことは私の中で大きくて、嬉しかったですね。今年、私は年女なんですけど、事務所の方にも「年女以上の運を使っちゃった」って言いました(笑)。それくらい濃い時間をいただいたんです。だから、現場で経験したことは絶対に忘れないです。また違う現場に入ったり、違う作品に関わる時に、私ができること、やるべきことをちゃんと考えていかないといけないと思いましたし、そのためにがんばろうという気持ちをいっぱいもらえた現場でした。  (取材・文・写真=島田怜於)

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