Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

ムロツヨシが語る、『大恋愛』で掴んだチャンスへの喜び 「あがき続けてきました」

リアルサウンド

18/10/26(金) 6:00

 回を重ねるごとに、注目を集めている『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)。10月19日放送の第2話は、スポーツ中継延長のため放送開始が55分遅れたにも関わらず、初回を上回る視聴率をマークし、初回の無料見逃し配信でも、TBSドラマ歴代最高再生数の153万回を記録している。SNSなどで話題となったのは、戸田恵梨香とムロツヨシが終盤に見せたシーンだった。病を告白した尚(戸田)に、真司(ムロツヨシ)が「病気なんて屁でもない」「俺は、尚と一緒にいたいんだ」と言い切る。現実の悲しさと愛に触れた幸せが入り混じった涙の笑顔は、戸田とムロツヨシが築き上げた関係性があればこそ生まれたものだろう。

「やりすぎかな。でも、ここでは表情を出さないほうがいい、絶対に。でも……」

 古びたアパートの一室で、ムロツヨシが監督と議論をしている。小さなローテーブルを挟んで、向かいに座っているのは戸田恵梨香だ。ここは、金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君を』の撮影現場。本番に向けて、何度も何度もテストが繰り返される。ムロツヨシは自身が演じる間宮真司が“どんな人間なのか”、“本音はどこにあるのか”を、監督と話し合いながら掘り下げていく。

 この日の撮影スケジュールを終えた、ムロツヨシがインタビューに答えてくれた。“ラブストーリーの名手”である脚本家・大石静が描くオリジナルドラマは、ヒロインの病が進むにつれて波乱に満ちていく。本格恋愛ドラマは初となるムロツヨシは、どのような心持ちで演じているのか。話を聞くうちに、役者・ムロツヨシが挑む大きな山が見えてきた。

■「自分がやっていいのかな」

ーー『大恋愛』の台本を初めて読んだとき、“この役、本当に自分が演じていいのだろうか”という感想を抱いたとお聞きしました。

ムロツヨシ:僕を知ってくれている多くの視聴者さんと、僕が僕自身で抱いている“ムロツヨシ”というイメージは、ほぼ変わりがないと思っています。その“ムロツヨシ”が『大恋愛』というドラマをやるんだと思ったとき、客観的に“ムロツヨシがやっていいのかな”って思ったんですよね。ただ、一方で、僕ムロツヨシ本人からすると、19歳から役者をやって、恥ずかしながら努力不足・覚悟不足もあり、いろんなことがうまくいかず、考え方を変えたり、あがき続けてきました。いつかこういうお芝居を求められたらいいな、とは思っていましたので、いろんな人に助けられ、42歳にしてようやくこういうチャンスをもらえたというやりがい、喜びはありますね。

ーーたしかに、コメディのイメージが強かったので、恋愛ドラマに出られると聞いて意外に思った方も多かったかもしれません。

ムロツヨシ:そうですよね。目標は、いくつかあるんです。みなさんが持ってるイメージ通りのことをずっとやっていきたいというのと、みなさんが持っているイメージを裏切る何かを出していきたいなというのと。たまたまひとつの仕事がうまくいったからって、決して長続きしない世界であることは、イヤというほど思い知らされました。お芝居に対しての考え方をいくつか持っていないと。どんな仕事も山に例えられますが、いろんな筋道の考え方を作って上っていかないといけない。“この道を知っているから”って、その山を知っているような気になりますが、まだまだ知らない道はたくさんあるわけです。一度わざと下ったり、あるいは下らざるを得なかったり。そういう意味では、僕は20代のころから今まで、準備する時間はあり過ぎるほどあったので。

■「尚と真司の間に流れている時間を意識して演じています」

――今回、演じている真司とムロさんは重なる部分も多いですよね。

ムロツヨシ:でも僕より真司のほうがすごいんですけどね。真司は21歳のときに、小説という自分のやりたいことで賞をもらっていますから。要するに一度、光を浴びているわけです。僕の場合は、28歳のとき全国公開の映画に出るまでは、光に当たっているなんて思ったことがなかったので。それでも真司は小説、僕はお芝居。本当はやりたいことがあるのに、本業はできなくなってしまった人、という意味では一緒です。それから真司は引越しのアルバイトしかしてない。僕も肉体労働のアルバイトしかしていない時期もありました。引越し、建設現場、コンサート会場の設営・撤去もしましたね。そういう重なりが照れくさいというか、やだなーって。思い出すことがたくさんあるので。

ーーあけたくない記憶のトビラが開いてしまうような?

ムロツヨシ:そう! だから真司の悶々とした気持ちはすごくわかりますよ。真司は光を浴びた後、次に書いた小説が酷評されて何もできなくなってしまったわけですけど、僕も自分で脚本を書いて演出した舞台が、全くお客さんに届かず、届かないどころかもうなんかすごい訳分かんない時間を過ごさせてしまったという自覚から、真司のように“何もできない時間”に突入しましたから(笑)。書きたいものがないと諦めている真司と、いつか芝居だけで食べていけるようにもがいていたムロと。今42歳で、書きたいものが見つかる真司と、色んな人のおかげでこの役にたどり着いたムロと。重なるところはありますね。

ーー今回、撮影現場を見学させていただいて、ムロさんが真司の人間性をつかもうと丁寧に議論を重ねている姿がとても印象的でした。

ムロツヨシ:そういうふうにみていただけるのはありがたいですね。今回、大石さんが書いてくださっている脚本が、すごく深いといいますか、何通りにも考え方ができるなって思う場面が多々あるんですよ。今日撮影したシーンは、こういう考え方もできるな、ああいう考え方もできるなって、僕の中では3層くらい真司の考えを想定していたんですが、監督の演出プランとか、考えや、解釈を聞いていたら、「あ、確かに、そういう考え方もできるな」って、どんどん層が広がっていって……本音を押し殺して反対のことを言っていたり、反対のことを言っている振りして本音だったり。正直言うと、(身をよじらせて)「もー! わっかんなくなっちゃったなー!」みたいな(笑)。時間をかけさせてもらって恵梨香ちゃんには申し訳ないなと思いながら。でも、それくらいすごく重要なシーンだったので。僕にとっては今日大きな1日でしたね、いい意味でドッと……。

ーー疲れが?

ムロツヨシ:はい~! アハハ、いやでも、疲れたからイヤっていうわけじゃなくて。あんまり考えたことのない脳を使ったんじゃないですかね。

ーーありますよね。脳みその筋肉痛といいますか。

ムロツヨシ:そう! そこに使うべき脳があったか、みたいな(笑)。ただ今回、そういう話ができるというか、スタッフさんには現場が少し止まってしまうんで、申し訳ないですけど、ちゃんと確認して共通項を持って、あるいはあえて共通項を持たず、監督がきたらこう返すみたいな、こんなやりがいのある現場はないですね。重いシーンがより重みを増すのは、その前にどれだけ笑えるシーンがあるかにかかっていると思うので、恵梨香ちゃんと真面目なシーンじゃないときは、あえて明るすぎるくらいふざけたりもします。尚と真司の関係性を作るためにも。

ーーなるほど。真司の佇まいを見ていると、私たちがイメージしているムロさんよりも、少し声のトーンが抑え気味に感じるのですが、真司を演じるにあたって意識しているところはありますか?

ムロツヨシ:あえて低い声を出そうとかはしていないですね。台本を読んで、セリフを覚えたときに、自分がやってくれていることなので、そういうことなんだろうなと思いますけど。ドラマの撮影は一発本番ではないので、テストを重ねて……“落とし込める”って言葉を今回の役に関してはよく使うんですけど、すんなり落とし込めたら、そのまま怖がらずにいくべきだし、落とし込めないでいるんだったら少しやり方を変えたりとか。もちろん、それは、声ひとつかもしれないし、姿勢、目線、言葉の捉え方、相手のことをどう思ってるか、この時間、この瞬間は……って。これは、テレビドラマのスケジュール上、仕方がないことなんですけど、今は3話、次は4話ってシーンを混ぜこぜに撮らなければならなくて。でも、このドラマでは時間軸がとても大事なんですよ。この時間の後だからすごく盛り上がってる、この時間が流れたから落ち着いている、この時間を経たから好きだけどこういう感情になっている、とか。真司単体の“らしさ”よりも、尚と真司の間に流れている時間を意識して演じていますね。

ーー第3話の予告映像で話題になっている、尚が真司のホクロを押すと変顔になるというシーンは、おふたりが「実際にやっていた」と戸田さんがインタビューでお話していました。

ムロツヨシ:アハハ。前にやられた記憶があったので、台本を読んだとき“あら!”って思ったんですよ。どうやら噂によると、恵梨香ちゃんが大石さんに言ったみたいですね。脚本家として大石さんが即採用されたのなら、それはいいんです。ただ、発信元が戸田恵梨香っていう疑惑の眼差しはありましたね(笑)。だって、無茶振りもいいとこですよ。“尚、真司のホクロを押す。真司、変顔する”って、ト書きはたったの2行さ! でも、こっちは笑わせるために何行分も考えていくわけですから! まあ、自分の好きな人を、自分のことを好きでいてくれる人を笑わせるっていうシーンは、いいなと思ったので、なんの文句も言わずにやりましたよ。ただ、ト書き2行か、ってね(笑)!

ーーはい、心して観ます(笑)。第1話からアップルパイや黒酢はちみつドリンクなどのアイテムが登場していますが、何か物語のキーとなるのでしょうか。

ムロツヨシ:それ気になっている人、多いみたいですね。第1話の感想を見たとき、けっこう「フックになってるんじゃないの?」ってコメントを見かけました。大石さんが何か引っかかるようにしているのかな……。でも、演じ手が“これ、引っかかるとこやで?”、“アップルパイ、くるで~!”みたいな顔してたら変でしょう(笑)? 昔から一緒にやってくれてる衣装さんが、真司と尚の服を象徴的な色にしてくれたり、監督やみなさんがいろんな演出プランを考えてくれているのは知っているので、そういう部分はお任せして僕は演じ手に徹していようと思います。だから、さっきの冗談じゃないですけど“これがドラマのポイントやで~?”なんて変な意識をせずに、恵梨香ちゃんと向き合っていこうと。じゃないと、イチャイチャも複雑な心情の変化も描けないと思うので。

■「戸田恵梨香を好きにならない方法を教えて!」

ーー真司は尚のようなスレンダーな女性がタイプでしたけど、ムロさん自身の好みのタイプは?

ムロツヨシ:昔は、どちらかといえばぽっちゃりした人が好きだったんですよ。モデル体型の人を目の前にすると“いやー、俺なんて!”っていう感じで。でも、この世界、すげーキレイな人がいっぱいじゃないですか。もう“マジかッ!”っていう人ばかりで。例えば、テレビ局に行くと女優、モデル、アイドル、アナウンサー、番組アシスタント……って次々にキレイな人と行き違うわけですよ。廊下で(左を振り向きながら)「マジかッ!」、(右を振り向きながら)「知的ッ!」、(再び左を振り向きながら)「エ~ロいッ!」って、もう好みなんてどれとったらいいのか。もう感情が渦巻いちゃって、好みなんて、もー、そりゃあ!

ーー素敵な人がたくさんいますもんね。

ムロツヨシ:だって、もー、恵梨香ちゃんが毎日となりに来て笑っててごらんなさいよ。あんな可愛くて、いつもニコニコしてて。はぁ~……もう好きにならない方法を教えてくださいよ。ほら、うちのマネージャーだって頷いてますよ。マネージャーもずっと同じ部屋にいますから、「たしかにそうですね」って! マネージャーまで好きになっちゃってるんですから(笑)。ど、ど、どうしたらいい? どうしたら好きにならずにいられる? ずっと楽屋にいたほうがいい? 本番以外、もう楽屋から出ないほうがいい?

ーーダメです(笑)。尚と真司はイチャイチャしないと!

ムロツヨシ:アハハハ。いやー、本当にどう見たってかわいいもんなー。戸田恵梨香を好きにならない方法を教えてほしいですよ。

ーー当初「自分でいいのかな?」と仰っていましたが、こうしてお聞きしているとムロさんと戸田さんだからこそ、『大恋愛』という作品が生き生き描かれているように思います。改めて、ムロさん自身が役者として最もやりがいを感じている瞬間は?

ムロツヨシ:そうですねー、本番じゃないですかね。もちろん、そのあと観てくれる人が多かったり、「よかった」とか「最初しっくりこなかったけど見入っちゃった」とかっていう褒め言葉も嬉しいですけど、やっぱり本番のときにしっかり落とし込めると、やりがいを感じます。もちろん、本番のあと“ああすればよかった”、“こうすればよかった”っていうのは、絶対あるんですけどね。でも、本番は基本1回ですし。2回3回あっても、そのときやらなかったことは自分でジャッジしているわけで。もしくは、勇気がなくてできなかったわけですから。それはもう観ていただいたみなさんに、けなしていただくしかないと思うんです。あー! でもねー、『大恋愛』だと、テストのときにいろいろ悩みながら、実は自分の中でどっか変えてて、尚のことを考えて考えて……“もう自分のやりがいなんてどうでもいいや”ってぐらい演技に集中したときに、一番やりがいを感じてるかもしれない。

ーーなるほど、作品によって異なると?

ムロツヨシ:ですかね。福田雄一組でのやりがいは、とにかくおもしろくすることが100点なので。本を壊してでも面白くできれば100点だし、福田雄一が喜んでれば100点。そのやりがいは、すごく明確。でも、その分、緊張感も半端ない。今やもう。1周も、2周も回ってしまったので。

ーーそれこそ、先ほど仰っていた道が違うということですね?

ムロツヨシ:そう、道が違いますね! 福田組で大きくしてきた道とは、また違う道を『大恋愛』で開拓している。たくさんの作品に触れて、試行錯誤を繰り返して、いろんな道を切り拓いて、役者という山を登り続けていきたいんです。

(佐藤結衣)

Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play