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今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、2019年の春ドラマ注目作ベスト5

リアルサウンド

19/5/3(金) 8:00

 2019年4月クールのドラマが出揃った。最大10連休というこのゴールデンウィークを利用して第1話から見ていた方も多いのではないだろうか。現在は、TVerやFOD、Huluをはじめとするサービスが充実しており、話題作はどんなタイミングからでも1話から観始めることができる。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきドラマとは。ドラマ評論家の成馬零一氏に、春ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。

【参考】平成ドラマ史を振り返る【前編】 “暗さ”を楽しめた1990年代と、俳優・木村拓哉

1.腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。(NHK)

 1位の『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』はNHKのよるドラ枠で放送されているゲイの高校生が主人公の青春ドラマ。

 男性同士のラブシーンから物語がはじまり、BL(ボーイズラブ)を愛好する腐女子のライフスタイルを容赦なく描く一方で、ゲイでありながら普通の幸せを求めるあまり、(ゲイであることを隠して)異性と付き合ってしまう主人公・純(金子大地)の弱さをしっかりと見せるストーリーの掘り下げは一筋縄ではいかない。

 前作『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(以下、『ゾンみつ』)に続くNHKならではの攻めたドラマだが、SNS受けを狙ったタイトル、そして『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットした後で、クイーンの楽曲を重要なアイテムとして使用してしまうこと(クイーン自体は映画が公開される前に書かれた原作小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(KADOKAWA)にすでに登場している)に、あざとさを感じて避けている人もいるかもしれないが、キャッチーな仕掛けの中心にあるのは、ボーイ・ミーツ・ガールの青春ドラマで、思春期の不安と甘酸っぱさがしっかりと描かれている。

 このあたり、脚本を担当した三浦直之ならではだろう。劇団ロロでの活躍はもちろんのこと、昨年手がけたインスタグラムで配信されたドラマ『それでも告白するみどりちゃん』が素晴らしく、いつかテレビで連ドラもやってほしいと思っていたため、今回のNHKドラマ執筆は嬉しい。先入観を捨てるのは難しいかもしれないが、時間に余裕のある人は一度見てほしい。すごく大事なことを描いている。

2.きのう何食べた?(テレビ東京系)

 2位の『きのう何食べた?』は、よしながふみの原作漫画を作り手が作品の良さをしっかりと理解した上で、2019年現在に描かれるべきドラマに仕上げている。

 40代のゲイのカップルの日常を食事を通して描いた作品で、グルメドラマとしても秀逸。脚本は昨年『透明なゆりかご』(NHK)が高い評価を受けた安達奈緒子。出世作、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)でもBLテイストを持ち込んでいた安達の作風はよしなが作品と予想以上に相性がいい。何より面白いのは、両親や友人がゲイの主人公たちに見せる視線を丁寧に拾っており、その気まずさが、ドラマのスパイスとなっている。

 上位二作はゲイの男性を主人公にしたもの。他にも『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)などLGBTQをモチーフにしたドラマが少しずつ増えているのだが、同時に近年のドラマの主戦場として盛り上がりつつあるのが会社を舞台にしたドラマだ。

3.わたし、定時に帰ります。(TBS系)

 3位の『わたし、定時で帰ります。』は今期のダークホース。WEB制作会社を舞台にした会社モノで、労働観の違う世代が入り混じる職場で上のバブル世代と下の若者世代の狭間で思い悩む30代の心情が描かれている。主人公を演じる吉高由里子の一見、ちゃらんぽらんに見える雰囲気が良い方向に作用しており、ハードのストーリーの緩衝材となっている。『ゆとりですがなにか』、『獣になれない私たち』(ともに日本テレビ系)、『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)など会社モノの傑作が近年増えているが、本作もその一つとなるのではないかと思う。

4.やすらぎの刻~道(テレビ朝日系)

 4位の『やすらぎの刻~道』は、2年前に話題となった倉本聰による老人ホームを舞台にしたシルバードラマ『やすらぎの郷』の続編。見どころは主人公の老脚本家が執筆するドラマ『道』を劇中で展開する脳内ドラマ。『北の国から』の純くん(吉岡秀隆)を彷彿とさせる風間俊介の朴訥としたナレーションと、前作で主人公に心酔する女性・アザミを演じた清野菜名が演じるヒロイン・しののアクションが見どころ。まだ導入部だが、一年間の長丁場なので、壮大な作品になるのではないかと期待している。

5.夫のちんぽが入らない(Netfrix/FOD)

 5位はNetflixとFODで全話配信しているドラマ『夫のちんぽが入らない』。話題となった原作小説の映像化という意味では『火花』に続く路線。『ゾンみつ』で主演を務めた石橋菜津美がヒロインを演じている。タイトルの通り、夫との性生活が重要なモチーフとなっているので性描写は外せないが、石橋はちゃんと脱いで濡れ場を披露している。

 最終的に子供を産まない(産めない)カップルがどのように年を重ねていくのかという方向に向かうのだが、このあたり、『きのう何食べた?』にも通じるものがある。

 どの作品も、戦後核家族のロールモデル(男がサラリーマンとして働き、女が専業主婦で、子供が1~2人いる)が崩壊した後で、家族、会社、老後、ジェンダー観といった価値観をどう再編成していくのか、というテーマを物語の中で追求しており、エンタメ性の中に、社会的なテーマに対する志の高さを感じる。

(成馬零一)