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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

fhánaのメンバーとリスナーの“物語”が交差する 5周年ライブ『STORIES』を見て

リアルサウンド

19/2/25(月) 20:00

 昨年12月にデビュー5周年を記念したベスト盤『STORIES』をリリースしたfhána。彼らのライブ「fhána 5th Anniversary SPECIAL LIVE『STORIES』」が1月27日に中野サンプラザで開催された。

 メンバーがライブのMCやインタビュー等で語ってきた通り、fhánaはこれまでの活動で様々な「物語」を紡いできた。それぞれ別の世界線を過ごしてきたメンバーが出会い、ひとつの物語が生まれ、そこにリスナーそれぞれのストーリーまでもが幾重にも交差していく――。バンドという共同体でありながら、個々を尊重し、それぞれの世界線が交わる場所として「fhána」がある。メンバーのそうした思いはベスト盤や今回のライブに冠された『STORIES』(=物語たち)というタイトルにも顕著で、彼らのファンならば、その物語がこの5年で豊かな広がりを見せてきたことは周知の通りだろう。そんな活動の集大成とも言えるこの日のライブは、これまでの公演とは異なり、「First ACT」「Second ACT」「Last ACT」という3部に分けられ、この日だけの特別なセットリストでライブが進んでいった。

 第1部の「First ACT」は、TVアニメのタイアップ曲を披露するセット。つまり、ベストアルバム『STORIES』にも収録されたシングル曲の数々だ。まずはこれまでの道のりに思いを馳せるような歌い出しにこの日ならではの意味が加わった「calling」でライブをスタート。続く「ワンダーステラ」では合いの手の前にtowanaが観客席をぐるっと指さすなど、早速5年を経た今ならではの光景が広がっていく。その後もイントロのストリングスが鳴った瞬間に大歓声が生まれた「tiny lamp」や、「Hello!My World!!」「ムーンリバー」「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」などを次々に披露。「デビュー曲を聴いてください」と伝えてはじまった「ケセラセラ」では、両サイドに陣取る佐藤純一とyuxuki wagaが互いに顔を見合わせるようにして向かい合い、バンドにより一体感が生まれていく。そうした楽曲から、様々なアニメ作品の魅力だけでなく、同時に彼らのバンドとしての歩みがとても鮮明に浮かび上がってくるのは、これまで一貫してアニメ作品に寄り添いながら、同時に自らの物語や多くのリスナーとの物語も大切に紡いできたfhánaならではの雰囲気だ。

 中でも「First ACT」のハイライトは、終盤にまとめられたキャリア屈指のヒット曲。星形の照明が会場を照らした「わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~」を経て、「青空のラプソディ」ではディスコのダンスフロアを連想させるカラフルな照明を受けながら、kevin mitsunagaとtowanaがステージ前方で観客と一緒にダンスを披露するお馴染みの光景が広がっていく。観客による「どこへでも!」という歌詞の合唱も、今やそれさえも楽曲のひとつと言えそうな親密な雰囲気だ。その後は「divine intervention」を経て、初期の代表曲のひとつ「星屑のインターリュード」でひとたびのクライマックスを迎えると、「First ACT」のラスト曲として披露されたのは、ベストアルバムに収録された新曲「STORIES」。〈続いていくストーリー/僕らのストーリー〉という歌詞は、この日のライブがこれまでの集大成であると同時に、fhánaの過去と未来とをつなぐ新たなスタート地点でもあることを伝えるようだった。

バンドのこれまでが、一気にフラッシュバックしていくステージ

 とはいえ、ライブはまだまだ終わらない。「Second ACT」では、ベスト盤には収録されなかったアルバム曲やシングルのカップリング曲の中から、彼らが選び取った世界線の賛歌とも言える「What a Wonderful World Line」や「現在地」といった楽曲を披露。彼らのアルバム曲やカップリング曲にはバンドの音楽的な引き出しの多さや実験性、もしくは新たな試みが感じられる楽曲が多く、そこに今ならではの演奏力やアレンジが加わることで、楽曲が新たな表情を見せる。中でも「Relief」で見せたLCDサウンドシステムのライブを髣髴させる永遠に続くかのようなミニマルなファンクグルーブは圧巻で、「洋楽的なエッセンス」と「アニソンとしての機能性」、そしてJ-POPやJ-ROCKなど様々なジャンルのリスナーにも訴えかける「普遍的なメロディ」を持つ彼らの魅力を、最もエクストリームに体現する瞬間のように感じられた。

 そして通常のライブのアンコールにあたる「Last ACT」では、昨年リリースした通算3作目のオリジナルアルバムのタイトル曲「World Atlas」を披露すると、続いて佐藤純一がフロントを務めていた前身バンドFLEETの楽曲「Cipher」を披露。この曲は現在までfhánaの多くの楽曲で作詞を担当してきた林英樹と佐藤純一が初タッグを果たした、fhánaの結成へと繋がっていく重要な楽曲だ。そして最後は、towanaが加わった今の編成でのfhánaにとっての“はじまりの曲”「kotonoha breakdown」で終演。関東大震災直後の混沌とした時代にインターネットを介して出会った佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人に、towanaの歌声が加わって豊かな物語が生まれていったバンドのこれまでが、一気にフラッシュバックしていくような感動的な雰囲気でこの日のステージを終えた。

 彼らが今回のライブを「First ACT」「Second ACT」「Last ACT」として構成したのはなぜだったのか。あくまで想像でしかないものの、全編を観終えた瞬間、その意図がこちらにも伝わってくるように感じた人は、多かったのではないだろうか。fhánaの物語は、その先の可能性に心をときめかせながら進んできた旅路のようなものであり、その過程で出会った様々な人々とともに、その旅はまだまだ続いていく。「アンコール=再演」のないこの日のライブは、fhánaのこれまでと、この先に紡がれるだろう新たなストーリーとがひとつの線となって広がっていくような、バンドの今後へのさらなる期待を感じさせてくれるものだった。

(取材・文=杉山仁)