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ジェイソン・ムラーズが語る、アルバム『Know.』制作背景「いいインスピレーションを与えたい」

リアルサウンド

18/8/10(金) 18:00

 今も夏が来るたび、あちこちのラジオでかかりまくる、21世紀のスタンダードソング「I’m Yours」の大ヒットからちょうど10年。ジェイソン・ムラーズ、4年ぶりのニューアルバム『Know.』は、「I’m Yours」に通じる爽やかな先行ヒット「Have It All」を筆頭に、躍動感あふれるポップ路線へと回帰した最高の1作になった。先日のプロモーション来日時には、早朝のテレビやラジオ出演、LINE LIVEで配信されたイベントではアコースティックライブに加え、自らファンにコーヒーを淹れるサービスなど、日本のファンのハートもがっちりキャッチ。そんな充実の日本滞在の間に実現した、新作について語るジェイソン・ムラーズの最新インタビューをお届けしよう。(宮本英夫)

・どこにいても何かを作り続ける人間であり続けると思う
ーー先日のテレビ出演の時に着ていた、アボカドがプリントされたシャツは、今日は着ていないんですね。

ジェイソン・ムラーズ:気に入ってもらえてるなら、着てくればよかった(笑)。

ーーあれはベリーキュートでした(笑)。ジェイソンは今、アボカド農園とコーヒー農園を経営してると聞いています。そういった生活と、音楽家の自分とを、分けて考えているんでしょうか?

ジェイソン・ムラーズ:いや、全部一緒だと思う。今日のインタビューの合間にも、農園を管理してくれてるマネージャーや、ファームプランナーにメールを送って、灌漑用の水路の設計について相談していたところなんだけど。農園のプロジェクトで成功しようと思っているから、僕自身はセミリタイアというか、音楽半分、農業半分でやってもいいと思ってるんだけどね。彼らが言うには、農場の経営はそれじゃダメだ、すべてを注がなきゃやっていけないと言うんだ。

ーーなるほど。

ジェイソン・ムラーズ:セミリタイアと言っても、音楽を作るのをやめるわけではなくて、ワールドツアーの数を減らして、より農園に力を注ぎたいなということなんだけど。僕はどういう立場になろうとも、クリエイティブな人間であることは変わらないから、どこにいても何かを作り続ける人間であり続けると思う。農業をやることは、忍耐や我慢強さや、学ぶことがすごく多いんだ。種をまき、水をやり、肥料を与え、大きく育てて、収穫して、それをみんなに味わってもらうのは、音楽を作ることとすごく近いものを感じるしね。

ーー確かに。ひょっとして農園で働いている時に、曲のアイデアが浮かんだりも?

ジェイソン・ムラーズ:農園にスピーカーを置いて、音楽を聴きながら作業している。そうすると楽しくできるし、色々なアイデアが浮かぶこともあるよ。

ーー曲作りはインドア派、それともアウトドア派?

ジェイソン・ムラーズ:どちらでも。今はサンディエゴの田舎に住んでるから、周りのことを気にせずに大きな音を出せる環境がある。自分で設計したスタジオがあるんだけど、外で作業できるようにもなってるから、どちらでも作ることができるんだ。

ーーニューアルバムの話をさせてください。今回のアルバムはとてもアクティブで、躍動感がある。前作『YES』が静謐な、スピリチュアルなイメージが強かったのに対して、とてもエネルギッシュで開放的に感じます。その間に、どういう変化があったんですか? そして、アルバムのコンセプトは?

ジェイソン・ムラーズ:アルバムを作り始める時には、いろいろなアイデアがあって、特に明確なビジョンを持って作ったわけではなく、思いついたアイデアをどんどん出していっただけなんだけど。ただ、サウンド的にエネルギッシュなものになったのはその通りで、なぜかというと、前作ではレコード会社が僕に、僕の好きなように作品を作らせてくれたから、今回は彼らにお返ししようと思ったのもあるかもね。その方が彼らも喜ぶだろうし(笑)。

ーーなるほど(笑)。すでにリリースされている「Have It All」は、ジェイソンらしい爽やかなアコースティックサウンドと、なめらかなラップ調の歌が素敵な、ベリーグッドソングですね。曲作りのエピソードを聞かせてください。

ジェイソン・ムラーズ:2012年に、ミャンマーに行った時のことなんだけど。そこで会ったプリースト(僧侶)が、ある挨拶の言葉を教えてくれた。それは英語でなんて言うの? って聞いたら、“May you have auspiciousness and causes of success”(あなたに幸運の兆しと成功の種が与えられますように)だって。「ワオ、そいつはクールだ」と思ったね。初めて会う人にそんな言葉をかけてくれるなんて、なんて素敵なんだと思ったし、言葉の響きも良かったから、書き留めておいた。いずれ歌にしようと思ってね。その4カ月後、プロデューサーのデヴィッド・ホッジス(元Evanescence)と曲作りをした時に、いい感じの曲ができあがって、「そうだ、これにあの時の言葉を乗せよう」と思って、そこで曲の骨組みができあがった。ただ『YES!』に入れるにはちょっと合わないなと思ったから、ストックしておいたんだけど。去年になって、アメリカで子供たちの虐待や迫害が増えているというニュースを見て、彼らのために何かポジティブなことを言いたいなと思ったのと、子供たちだけじゃなくて、たとえば仕事をリタイアした大人たちが新しい人生を迎える時にも、励ますような歌を作りたいと思って、曲を完成させたんだ。コーラスはレイニング・ジェーン、プロデューサーはアンドリュー・ウェルズ、いろんな人が関わって、長い時間をかけて生まれた曲だね。

ーーメーガン・トレイナーをフィーチャリングした「More Than Friends」も、とても素敵な曲です。彼女との作業はどうでした?

ジェイソン・ムラーズ:ファンタスティック! 彼女はグレート・パーソン、グレート・ライター、グレート・シンガーだからね。この曲は2年前に、僕が一人で歌うために書いたんだけど、男の側からの一方的な目線ではなくて、女性の視点がほしいと思った時に、彼女に声をかけて、歌詞を書き加えてもらった。おかげで一方通行の歌ではなく、会話のようなリズムができて、とてもよくなったと思うよ。

ーーもうね、好きな曲がいっぱいあるんですよ(笑)。「Might As Well Dance」とか、ほんとに最高で。

ジェイソン・ムラーズ:僕も大好きな曲だよ。

ーーこの曲にはボブ・ディラン、The Bandを思わせるようなルーツミュージックのフィーリングがあって、大好きなんです。

ジェイソン・ムラーズ:うれしいな、ありがとう。実は僕のバンドのドラマー(マイケル・ブラム)は、The Weight Band(80年代に再編された時期のThe Bandのギタリスト、ジム・ウィーダーを中心としたグループ)にいて、リヴォン・ヘルムのパートを歌ってるんだよ。

ーーそうなんですね! 知らなかった。

ジェイソン・ムラーズ:この曲は、僕のバンドのベースプレイヤーがプロデュースしてくれた。元々は僕の妻へのラブレターのような曲だったんだけど、それがこんなにカントリーファンクな曲に仕上がったのは、バンドメンバーたちの貢献がすごく大きいと思う。ライブで何度も演奏しながら、磨きをかけていった曲だね。

ーーそういったカントリー、ファンク、あるいはアメリカーナと呼ばれるような音楽は、あなたにインスピレーションを与え続けているものですか。

ジェイソン・ムラーズ:そうだね。でも好きなものはそれだけじゃない。今までちゃんと聴いたことのなかった、昔のボブ・ディランのアルバムを聴きこんでみたり、Grateful Deadだけを3週間聴いていたこともある(笑)。あるいは、女性アーティストだけをずっと聴いていたりね。時期によってハマるものがあるから、どれか一つとは言えないな。

・ヒューマンな部分に訴えかける歌を歌いたい
ーーアルバムのラストを飾る「Love Is Still The Answer」は、弦楽器、管楽器を全面に配して、レイニング・ジェーンのコーラスも素晴らしい、壮大なスローバラード。グレイトソングだと思います。

ジェイソン・ムラーズ:ありがとう。この曲はダン・ウィルソン(Semisonic)との共同プロデュースで、ダンと僕は長いつきあいなんだけど、僕たちが曲を書く時はいつも、目の前にある大きな問題をなんとか解決しなきゃ、という時なんだ。この時もそうで、それはアメリカの大統領選挙(2016年)だったんだよ…(苦笑)。

ーーああ……なるほど。

ジェイソン・ムラーズ:実はこのアルバムの仮タイトルは、『MASTER PEACE』だった。“MASTERPIECE”(傑作)じゃなくて、“MASTER PEACE”(平和を、習得する)だね。大きな困難に直面した時に、僕たちはどうやったら平和へと戻れるのか、この時代を生きてゆく中で、僕たちはどうやったらLOVE&PEACEを取り戻すことができるのか。そういう大きなトピックがあって、ある日の午後、ダンと二人でこの曲を書いたんだ。歌詞はとても短いけれど、これは僕らだけじゃなくて、多くの人が思っていることだと思う。僕が書いてきた曲はすべてラブソングだと思うし、だから「Love Is Still The Answer」というタイトルは、この曲にとてもふさわしいものだと思う。

ーー使う言語は違うけれど。あなたの言っていることは、日本人の僕にもとてもよく伝わります。

ジェイソン・ムラーズ:ありがとう。僕はいつだって、あなたが地球のどこに住んでいようとも、ヒューマンな部分に訴えかける歌を歌いたいと思ってるから。

ーーこのアルバムのレコーディングには、素敵なエピソードも多いでしょうね。

ジェイソン・ムラーズ:話せないものもあるけどね(笑)。とても楽しかった。一つエピソードを教えると、「Love Is Still The Answer」には、ハイスクールクワイヤが参加してくれてる。そのクワイヤを教えている先生は、グラミー賞を取ってるんだ(※正式にはGRAMMY Music Educator Award)。年間最優秀教育者という、そんなカテゴリーがあることを初めて知ったんだけど。実は以前に彼に会ったことがあって、「いつか一緒に何かできるといいね」という話をしたことがあったんだ。そしてこの曲を書きあげ、ダンと二人で「この曲にクワイヤを入れたいね」という話になった時に、ダンのアシスタントが「僕の出身高校のクワイヤの先生が、最近グラミー賞を取ったんだ」って言うから、「その人、たぶん僕知ってるよ」って。びっくりしたけど、これは運命的なものだと思ったから、連絡を取ってもらったら、すぐに「やるよ」と言ってくれた。その高校に行って、ある日の午後にレコーディングをして、授業の終わりのベルが鳴る前には完成していた。素晴らしいアレンジをしてくれて、感謝しているよ。

ーーいいエピソードです。

ジェイソン・ムラーズ:今までに2回、ハイスクールクワイヤと一緒にレコーディングしたことがあるんだけど、自分も高校生の時にクワイヤをやっていたから、もしも僕が高校生の時に、プロのレコーディングに関われたらすごくうれしいと思っただろうし、若い人たちにそういう機会を与えられたことが、僕もすごくうれしかった。

ーーうまく言えないですけれど。「Have It All」の僧侶も、「Love Is Still The Answer」のクワイヤも、「Might As Well Dance」のメンバーとの関わりも。人と人とをコネクトする力が、このアルバムには宿っている気が強くします。

ジェイソン・ムラーズ:その通りかもね。「Unlonley」という曲のリリックで、僕はこう歌ってる。〈人々の人生は、周りにいる人が形作るものだ、そして最後に残る一番大事なものは愛なんだ〉と。今回のアルバムを作るにあたって、僕の周りには素晴らしいミュージシャン、プロデューサーがいて、みんなが僕を信頼してくれて、愛を持ってお互いをインスパイアしあっている。全員が大きな一つのビジョンを共有していたと思うし、それがこのアルバムには出ていると思うんだ。それを通して、聴いてくれた人に何かいいインスピレーションを与えたいと思っているし、今だけじゃなく、何年後かに聴いてくれた人にも、感動してもらえる作品になっていればいいと思う。

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