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わーすた、“イロモノ”にならない卓越した歌唱力と表現力ーー冬将軍が音楽的魅力を熱弁

リアルサウンド

18/12/4(火) 13:00

 目まぐるしく変化していくアイドルシーン。日々新しいグループが出てくる一方で、今年2018年は悲しい知らせも多くあった。Cheeky ParadeとGEMの解散、そしてSUPER☆GiRLSは複数メンバーの卒業発表など、アイドル戦国時代を彩ったエイベックスのアイドルレーベル<iDOL Street>もまた、そうした時代のうねりの渦中にあったように思う。そんな中で、2015年の結成以来、不動の5人で我が道を突き進んでいるのが、わーすたである。

参考:EMPiREは“覇道から生まれた王道”のアイドルだーーシーンにおける特異性を考察

 大手メジャーのアイドルが、SNS拡散を目的として公演の撮影をOKとしたことは画期的な施策であったし、ゲームミュージックテイストのサウンドに乗せてジェットコースター的楽曲展開のマッシュアップを猫耳衣装で歌い踊る2.5次元アイコンは、シーンに大きなインパクトを与えた。「うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ」の〈マジでトリケラトプス強い〉というパワーフレーズは、日本語詞の概念を覆してしまった感すらある。

 そんな“The World Standard(世界標準)”を掲げるデジタルネイティブ世代のアイドルが、今年4月より「わーすたワンダフルYEAR」を掲げた新たなモードに突入している。結成以来のサウンドプロデューサー・鈴木まなかの退任を経て、SHIROSE(WHITE JAM)、みきとPといった新たな制作陣を迎えリリースされた2枚のミニアルバム『JUMPING SUMMER』(6月リリース)、『GIRLS, BE AMBITIOUS!』(11月リリース)はグループの魅力をさらに強調しつつ、新たな可能性を提示した聴きどころ満載の仕上がりになっている。

 時代の異端児ともいうべき、いい感じにぶっ飛んだ印象もあるわーすただが、その魅力はなんと言っても卓越した歌唱力にある。どんなフレーズでも精確に悠々と音を置いてくる廣川奈々聖と、強堅でしなやかな三品瑠香の鉄壁のツインボーカルはシーン屈指の強さを誇る。加えて、無邪気さ溢れる坂元葉月、精悍で凛々しい小玉梨々華、ちょっととぼけた松田美里――といった各メンバーのキャラクターを満遍なく詰め込み、独自の世界観を作り上げているのが『GIRLS, BE AMBITIOUS!』のリードトラック「大志を抱け!カルビアンビシャス!」だ。

 わーすたらしいはっちゃけ感のあるコミカルさを見せているが、楽曲を手掛けたみきとPによれば「小林旭『自動車ショー歌』にインスパイアされ」(参考:音楽ナタリー「わーすた、みきとP提供の新曲MVで“肉奉行”目指す」)の言葉通り、昭和歌謡の古典手法的言葉遊びが印象的で、ありそうでなかった曲だ。赤、黒、金を基調としたコントラスト強めのビジュアルワークも、淡いパステルカラーをメインカラーとしてきたこれまでとはまた違った印象を受ける。

 “デジタルネイティブ世代”と“昭和歌謡”、一見ミスマッチのように思えるが、これまでもわーすたにはそうした楽曲が多くあった。1stアルバム『The World Standard』収録の「ちいさな ちいさな」はカントリーフォーク、「らんらん・時代」はフラメンコ、2ndアルバム『パラドックス ワールド』の「ねぇ愛してみて」や「Stay with me baby」の音域広めなメロディは、往年のニューミュージックを彷彿とさせる。他にもあげればキリがないのだが、一般的なアイドルポップスにはあまり見られない哀愁感のあるシリアスな雰囲気の曲が多いのだ。先述の「うるチョコ」をはじめ、「いぬねこ。青春真っ盛り」や「グーチョキパンツの正義さん」といった、斬新かつその情報量の多さに一聴しただけでは困惑してしまいそうな奇抜な楽曲が表立っている裏で、「洋楽に憧れていたあの時代」を思い起こさせるような、古き良き日本の普遍性を歌う懐の広さを持ち合わせている。これも“世界照準”を見定めた“世界標準”なのかもしれない。ひとえに、絶対音感を持ち合わせているような廣川と、気丈さと細やかさを使い分ける三品のボーカルだからこそ為せる業でもあるだろう。

 しかしながらその完成度ゆえ、そうした“大人びた”楽曲は、背伸びしているようにも思えた。10代というメンバーの年齢を考えればあたりまえのことであるし、逆にそれが狙いだったところもあるだろう。それが現在では見合ったものになったどころか、余裕さえ感じられるようになった。ここに来て歌唱力と表現力はさらなる飛躍を見せているのだ。

 『JUMPING SUMMER』の「スタンドアロン・コンプレックス」で聴ける高らかなる歌い上げ、テレビアニメ『キラッとプリ☆チャン』(テレビ東京系)のエンディングテーマ曲「プリティー☆チャンネル」でのアニメ声優風の歌唱法など、廣川の歌は青天井。近頃はアコースティックギターの繊細な弾き語りやエレクトリックギターの豪胆なプレイを披露するなど、その才を着実に拡げている三品の、「PLATONIC GIRL」における甘い猫なで声から吐き捨てるような野太いボーカルへと豹変する様に、彼女の持つアイドル性の中にあるアーティスト魂が一気に覚醒した瞬間を見た気がした。ライブでは、廣川と三品のスタンドマイクでバシっとキメるアクションと、坂元、松田、小玉による複雑なダンスに思わず拳が上がる同曲であるが、これもまたどこか懐かしく、昭和の“とっぽさ”を持ったロックナンバーであり、そうした楽曲がわーすたの新境地を感じさせているのは興味深いところである。

 対照的に今どきなスタイリッシュさを持ち込んだのは、SHIROSE(WHITE JAM)だ。

 工藤大輝(Da-iCE)との共作である「タピオカミルクティー」は、シティポップテイストのアレンジに大人びたボーカルが映える曲。アタック強めの言葉のアクセントを用らず、柔らかい言葉選びの字余り気味の詞ながらもスラッと聴かせる耳馴染みの良さは、彼女たちの持つリズム感によるものだろう。スペインの人気兄弟デュオAdexe & Nau(アデクセ・アンド・ナウ)とのコラボ曲「Yo Quiero Vivir(ヨ・キエロ・ビビール)」も、どこか日本人離れしたリズム感の鋭さが滲み出ている楽曲だ。

 リスナーがライブにおけるシンガーを称える言葉に「喉から音源」という表現があるが、わーすたのライブには音源以上のものがあるように思う。いうなれば、予定調和を嫌うミュージシャンたちが延々と繰り広げるジャムセッションのような、そんな心地好いグルーヴを感じるのだ。ステージ上の5人から紡ぎ出されるもの、それを見守る“わーしっぷ”(=ファンの呼称)とともに作り上げるもの、さまざまな要素がそれを生み出していく。歌の上手いアイドルも、パフォーマンス力が高いアイドルも多くいるが、ライブを観て聴いていて、突き抜けるような歌声とその姿に、この上ない心地好さを感じることができるアイドルは、そうはいない。

 そして何より彼女たちは、アイドルとして、女の子としての“輝き方、輝かせ方”を解っている。そのため、タピオカミルクティーに焼肉ソング……一歩間違えれば、イロモノになってしまいそうな楽曲や衣装も、この5人だからこその武器となり、唯一無二のエンタテインメントとして打ち立てられるのだ。古いものでも新しいものでも、ちょっとふざけたものでも、抜群のセンスと確かな実力で見事に昇華させていく。その比類なき圧倒的な確信こそ、わーすたのオリジナリティであることは言うまでもないだろう。

 「ロックフェスで焼肉衣装のアイドルするの楽しすぎた」とは松田美里がTwitterにて、今年9月に行われた西川貴教主催『イナズマロック フェス 2018』出演後にツイートした言葉だ。こうした何気ない本心の発言に、彼女たちの“強さ”を感じざるを得ない。(冬将軍)

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