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村上虹郎は演じる役柄を引き寄せる 『この世界の片隅に』水原哲に感じる“少年っぽさ”

リアルサウンド

18/7/29(日) 6:00

 ドラマの放送開始前は不安視される声もあったが、ふたを開けてみれば、丁寧なドラマ作りとキャストたちの安定した演技によって好評を博している『この世界の片隅に』(TBS系)。その中で主人公・すず(松本穂香)の幼なじみ・水原哲を演じている村上虹郎も、思った以上にハマリ役と評価を得ている俳優の1人だ。

【写真】『この世界の片隅に』水原哲演じる村上虹郎

 河瀬直美監督の映画『2つ目の窓』で俳優デビューした当初から、業界内では高い注目を集めていた村上。それは俳優・村上淳と歌手・UAの子供ということだけでなく、どこか憂いを秘めた瞳と、少年らしいナイーブさを漂わせる表情や佇まいは、ほかの若手俳優とは一線を画す独特の存在感があった。

 当時17歳であったことから、少年っぽさを残しているのは当たり前のことかもしれないが、21歳となった今もその印象は変わらない。そして、その少年っぽさが『この世界の片隅で』で演じている水原にも生かされている。例えば、第1話での初登場シーン。教室内で友達とふざけていて、すずにぶつかってしまい、すずの持っていた鉛筆がコロコロと転がり、床の穴に落ちてしまう。そのときに見せた屈託のないいたずらっ子の表情は、少年そのものだった。そして、その後、大好きだった兄が海難事故で亡くなり、悲しげな表情で海を見つめているシーンでは、村上の持ち味である憂いを秘めた目が水原の心にあるやり場のない気持ちを的確に表現していた。ゆえに、その場に居合わせたすずだけでなく、視聴者も水原の思いに自然と寄り添うことができたのだろう。

 俳優には、役になりきる憑依型タイプと、役を自分に引き寄せるタイプがいるが、どちらかといえば村上は後者だといえる。原作の水原はガキ大将ということもあり、わりと体格のいい印象があったが、村上は小柄できしゃな体型。それでも水原役に違和感を抱かせないのは、水原を自分の中に取り込み、それを自然体で表現しているから。以前、村上が出演した映画『武曲 MUKOKU』の熊切和嘉監督にインタビューしたとき、村上の印象について「物おじしない、屈託のない青年」と語っていたが、水原の屈託のない雰囲気を自然と醸し出しているのは、村上自身にその要素が十二分にあるからであり、それが水原というキャラクターをより魅力的にしていることは間違いない。

 ちなみに、村上は声も特徴的で、彼の魅力の一つでもある。少しハスキーなのは母親のUA譲りかもしれないが、とても耳心地のいい声をしている。これから描かれるであろう水原の登場シーンはもちろんのこと、もし彼の声に興味を抱いた人がいるならば、ぜひ『武曲 MOKOKU』を観てほしい。村上はラップのリリック作りに夢中の高校生を演じており、劇中ではラップも披露しているのだが、それが驚くほどのうまさ。ここでも俳優・村上虹郎の比類なき才能を感じることができるはずだ。

※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記

(馬場英美)

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