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ISH-ONE、ワールドワイドな活躍と今後「母国語で歌うことがユニークだと思ってもらえる状況に」

リアルサウンド

19/3/19(火) 15:00

 18歳で渡米し、バイリンガルスタイルなラップで日本のヒップホップシーンを席巻。ワールドワイドな活躍を見せているISH-ONEが自身初となるベストアルバム『ONES』を発売した。今回リアルサウンドでは、これまでのキャリアの振り返りだけではなく、日本と世界両方を見てきた彼が考える「日本の音楽が海外でどう戦っていくか」という戦略なども踏まえ、話を聞いた。(編集部)

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■色んな定義や意識も変わってきている

――今回、キャリア初のベスト盤を制作されたきっかけは?

ISH-ONE:2006年リリースの『ST-ILL』からこれまで5枚のアルバムを出してきて、6枚目のアルバムも完成間近で。だからそのタイミングで、自分の今までやってきた道のりを総括してみたいっていう気持ちがあったんですよね。ニューヨークから帰ってきて、日本でデビューしてからの13年に対して、いちど節目を入れた方が良いのかなって。

――ご自分のキャリアを纏められての手応えはいかがですか?

ISH-ONE:制作してた時に絡んでくれた人間や、客演してくれた人とのスタジオセッションを思い出したりして楽しかったですね。ベストっていう作品が作れるぐらい頑張ってきたんだとも自分で思えたし、過去曲のこっ恥ずかしい部分も含めて、ラッパーとして成長してこれたっていうのが見えたのも嬉しかったし、学びにもなりましたね。

―― 「ラジオ体操参拾八 ft’ SAGGA」や「NYJP」のような初期作は、現在のサウンドとはかなり違いますね。

ISH-ONE:そうですね。自分の作品でもそうだし、僕がニューヨークに渡ったのが98年だったんですけど、この20年でヒップホップ全体のサウンドが変わっていった流れを、ずっと目撃できたのはラッキーだったと思いますね。そして、その変化こそヒップホップかなと思うんです。時代時代によってリアルの定義の方も変わっていくと思うし、インターネットが未発達だった頃と、今みたいに誰でもネットにアクセス出来て、自分の音楽を自分で発信できる時代とでは、色んな定義や意識も変わってきてると思う。それこそ、昔だったらニューヨークに渡って、本場で黒人から教わらないとヒップホップじゃないとか、ストリートじゃなきゃみたいな、ヒップホップの固定観念があったと思うんですね。でも、いまはリッチ・ブライアンみたいに、インターネットで学んで、一気にスターダムに上るようなアーティストもいる。言語に関しても、昔だったら英語じゃなくちゃ世界には通用しないみたいなイメージもあったけど、今は英語じゃなくても、面白ければ聴いてもらえますよね。

――88rising勢のように、英語と母国語のミックスであったり、母国語が優先するようなアーティストにも注目が集まりますね。

ISH-ONE:僕も先日フランスでライブをしてきたんですけど、みんな日本語で反応してくれるんですよね。その数がスゴく多いかっていうと、そこまででは無いんだけど、それでも日本語で歌ってくれる人がいる。だから、母国語で歌うってこと自体がユニークだと思ってもらえる状況になってると思うんです。特にフランスみたいにアートにうるさい国だと、日本人が英語を使うよりも、そのまま日本語を使った方が受け止めてくれる。そういう風に、誰でもヒップホップが出来る時代になって、だからこそ生まれるトレンドだったり、新しいフロウがあると思うんですよね。そういった変化も含めてヒップホップが大好きだし、その変化に追いつくために新しい音にチャレンジしてきたのが、今の自分の結果かなと思いますね。

――そういった発言が、いわゆる「バイリンガル・スタイル」とカテゴライズされるISH-ONEさんから出るのは非常に興味深いですね。

ISH-ONE:ニューヨークでラップを学んだという部分もあるので、やはり英語のラップが基礎にありますね。だから、英語を使うのはスゴく自然なことだったし、別にアメリカ人になろうと思って英語を使ってるんじゃなくて、普段からそういうバイリンガル的な喋り方だったから、それがラップに繋がっていっただけなんですよね。それに、僕がデビューした当時は、まだ日本語のラップのリズム感だったりフロウが90年代を引きずってる部分があったので、それを進化させたり、壊したいっていう感覚はスゴく強かった。ヒップホップは究極的に言えば「ダサい」か「かっこいい」かしかないと思うし、若かったこともあって、その当時の日本語ラップのスタイルはダサいって攻撃的になってた部分もあると思いますね。だから英語に偏ってた時期もあったんですが、一方で日本語でしか表現できないニュアンスだったり、日本語ならでは言葉の深みもスゴくあるから、それはないがしろにしたくないなって。そう思ってた時期に、KOJOEやAKLOっていう、バイリンガルで面白いラップをする奴らがポンポン出てきたんで、そういうムーブメント的に捉えられた部分はあると思いますね。そして、そこで新しいレベルにシーンが開けていって、それが今の若い子たちに影響を与えられたんだとしたら、それは良かったと思います。

―― その時期に、仮想敵だと考えていたシーンや物事はありますか?

ISH-ONE:あえて言うなら、日本よりも海外ですね。ニューヨークでワイクリフ(・ジョン)も所属してたレーベルと契約してた時に、ワイクリフに「日本人よりも俺たちの方がヒップホップをわかってる」的なことを言われたんですよね。やっぱり、ニューヨークに住んで、ヒップホップコミュニティを見てると、そこには黒人至上主義みたいな部分が垣間見られたし、そこを打破したくて自分はヒップホップをやってたって部分がありますね。そこをぶっ飛ばさないと、俺たちはいつまでたっても借り物の文化で、他人のふんどしで相撲取ってると思われてしまう。その状況をどうにかして打破して、世界で認められたいっていう。だからそれがモチベーションではありましたね。

――今回のベスト盤の具体的な話を伺うと、選曲はどのように決めていかれましたか?

ISH-ONE:自分の中で自分のことを成長させてくれた、自分を前に進ませてくれた曲が中心になりましたね。あとはライブでの定番だったり、自分で歌って救われたような曲とか、そういう曲が中心になったと思います。

――曲順的には時系列順ではなく、1曲目は2012年リリースの「NEW MONEY」から始まっていますが、それはご自身にとっても印象深い曲だったと言うことですか。

ISH-ONE:やっぱり、自分を一番変えてくれた曲だと思いますね。

――収録されたアルバム『NEXT』、そして制作されたMVも含めて、この曲からISH-ONEのニューチャプターが始まった感触がリスナーとしてもあります。

ISH-ONE:スゴい良い曲できたという感触や、HilcrhymeのTOCくんがリミックスしてくれたりっていう広がり、ネットでのバズり、それから後に俺がプロデュースするS7ICKトルツメCHICKsと出会うきっかけになったりとか、いろんなものが動き出すイミングを作ってくれた曲が「NEW MONEY」なんですよね。だからそこから始めようかなと。時期的にも、ちょうどバイリンガルのラッパーみんなで集まって色々やろうぜって意気込んでた時期なんで、エナジーとしても自分たちが時代を作ろうっていう気持ちがすごく入ってます。あの時は俺らまだ全然認められてないし、スキルはあるのに全然アンダードッグで。だからこそ、そこで仲間と切磋琢磨できたし、何でも好きなことやってやろうぜって思ってた時期なんで、勢いはとにかくあったと思いますね。「NEW MONEY」の頃は本当に。今そこからどんどん成長してる仲間を見てると、成長もすごく嬉しいし、またどっかのタイミングでみんなで一緒にできたら面白いなとは思います。

■人生が見えてくるフレーズを出せるラッパーが好き

――時期的にもCDから配信に徐々に移行し始めたり、YouTubeの発達や、SNSの普及など、様々な部分でゲームチェンジが起きていましたね。

ISH-ONE:僕はTwitterで有名になったようなもんですからね(笑)。当時はビートジャックやミックスCDが流行ってたんで、毎週毎週新しい音楽を作ってたし、海外のフリーダウンロードシーンと同じような感覚で制作して、矢継ぎ早にリリースしてっていう。だからすごくワクワクしてましたね。とにかくスタジオに集まって、ワイワイガヤガヤしながらいろんなアイデアが飛び交って、そこからフレッシュなモノがポンポン生まれてくる。『JP STATE OF MIND』のシリーズなんて、その最たるものだと思いますね。逆に今はスタジオに一人で籠って、自分と向き合う事が多いんで、そういう感覚が懐かしくも思えますね。

ーーいまお話に出たS7ICKCHICKsなど、「TEAM2MVCH」としてアーティストのプロデュースも手がけられるようになりますね。

ISH-ONE:S7ICKCHICKsに関して言うと、彼女たちが「NEW MONEY」をリミックスをやってくれた時に、ポテンシャルをすごく感じたんですよね。世界中どこ探しても、女の子のラッパーがグループやってるというアプローチは無かったんで、この子達をちょっとテコ入れしたら、スゴく面白いことになるなって思ってプロデュースを始めて。リリック的にも、自分ではちょっと書きにくい内容のリリックや、自分では動きにくいアプローチであっても、彼女たちに仮託すれば具現化出来るってことに気づいて。そこからですね、自分で勝手にプロデューサーと名乗りだしたのは(笑)。

ーー結果が伴っているので、自称という事もないと思いますが(笑)。

ISH-ONE:でも、最初は言った者勝ちみたいな感じでしたよ(笑)。だけど、それから色んなお話をいただくようになって。それこそいま話題になってる孫GONGも、最初は「ラップ上手くなりたいねん」みたいな感じで俺とTEAM2MVCHを組んでるプロデューサー/エンジニアのDELMONTEのスタジオ「DELMONTE STUDIO」に遊びにきて。最初は全然がっちりしてなかったんだけど、フロウのやり方を教えたりしたら、どんどん成長していって。

ーープロデュースというよりは塾のような感じなんですね。

ISH-ONE だからトラック渡して終わり、アドバイスして終わりじゃないですね。カウンセリングみたいな感じで、スタジオに来させて1、2時間くらい話すんですよ。「最近どう、人生?」みたいな部分まで(笑)。そこからキーボードを叩いて、その人にあったトラックを作っていくんですよね。そうやって、1曲1曲カスタマイズで作って、ラップなり歌を作ってもらう。そうすると、その人の面白さが出てくるんですよね。そこで人を作るっていうことの面白さみたいなのを学んだんだんですよね。自分としても、プロデュースによって人から学ぶ部分も大きかったし、自分自身にとっても「次はこうしよう」みたいに、いろんな観点を与えてくれたんですよね。ただ、人を育てるには責任あるし、労力も使う。だから、最近は控えようとしてるんですよね。自分のことをやりたいっていうのもあるんですけど。

――また、サウンドクリエイティブも手がけられてますね。

ISH-ONE:元々、ビートメイクは高校生くらいからやってたんですよね。だから、どちらかというとプロデューサーになりたかったんですよ。その意味でも、自分がやってたことを、また新しい形で再構築してるのが、いまの動きっていう感じですね。でも、意識的にというよりは、自然といえば自然にサウンドクリエイトもスタートさせたんですよね。

――今作に収録されている曲に限っても、KOJOEやAKLO、EGOなどマルチリンガルなラッパーに加えて、MIDCRONICAの894など、客演の人選は非常に幅広いですが、その基準は?

ISH-ONE: 基本的には「一緒に遊んでるかどうか」ですよね。人気だからとか、最近面白いからとかはあんま無くて、実際に遊んでる仲間と曲を作ってのが多くて、フィーチャリングしてるやつらも本当にちゃんと繋がりがあるやつらなんですよね。それこそGASHIMAもニューヨークの頃からの後輩だったりするし。だから基準としては、ラップが上手いっていうことと、一緒に遊んでる、感覚が似てるっていうことがあると思いますね。

――「ラップの上手さ」を言葉にすると?

ISH-ONE:全てですね。円グラフあったら全て。1個だけ飛び抜けててもダメで、フロウ、言葉遊び、メタファー、プレゼンス、声の出方、そいつの実際の人生……みたいな、全てにちゃんと特徴があって、総合力としてもスゴイのが、ラップが上手いっていうことだと思いますね。それから、こいつじゃないとこのラインは絶対出ないなっていう、パンチラインがあると最高ですよね。そいつの人生が見えてくるフレーズを出せるラッパーはすごい好きだし、それが出せるのが本当の意味で上手いラッパーだと思う。

――ISH-ONEさんのラップはSWAGやパーティ・シットが基本だと思われがちですが、「SAME NIGHT」のようなポリティカルな内容も描かれますね。

ISH-ONE:あの曲はパレスチナとかイスラエルのような、中東の紛争の話を歌っていて。そういうでかいテーマの話ってなかなか日本てやらなかったりするし、僕自身も社会派じゃないんであえて書こうっていう気持ちは無かったんですよね。でも、本当にある時あの曲が「降ってきた」んですよね。それで降ってきたから、DELMONTEに電話して、「今日録りたいんだけど」って勢いで作って。この曲はヴァースごとに視点を変えて作ってるんですけど、そういう新しい切り口が出来たと思うし、自分にとっても手応えのある作品になりましたね。作品としても、SWAGだったりとかパーティ、女の子とかは、もうやり尽くしてきてるんで、そこじゃない違った側面というか、もっと語るべきこともあるんじゃないかなっていまは思ってますね。ラッパーって言葉に力があるから、その力をもう少し良いことに使ってみたいなっていう気分にはなってきていて。

――6枚目はそういう形に?

ISH-ONE:内省的な曲も多いですね。 フューチャリングもいますが、今までよりはぐっと少ないですね。ただ、スキルという部分では、マックスのレベルで見せられるように、現行のラップをちゃんと超えられるレベルのモノを作らないといけないっていうのは意識していて。そのために、今回は海外のプロデューサーを起用して、もう一段階レベルが上のプロダクションに向き合ったんですよね。それによって自分のスキルも底上げ出来た作品になったと思いますね。

――リリースの目処はもう見えてますか?

ISH-ONE:6月くらいとか7月くらい、夏前には出したいなとは思ってますね。早く出したいなと思うし、早く出して次のステップに行きたいなっていう。それから新しく作った「#SIXSIXSIK」っていうユニットでは、結構わかりやすいものだったりとかも取り入れたりとかしようとは思ってて。それは世界を照準にしているし、世界に発信出来るものを考えてますね。

――いま、「アルバム」というパッケージを作る理由はなかなか見えにくくなってますね。それよりも、You Tubeや配信の形で単曲で出していく方がメインになっている。ISH-ONEさんのようにトレンドや現行を意識する人が、アルバムという、ある意味では古式ゆかしい形式で作品を出す理由は?

ISH-ONE:先程も話したとおり、今回のアルバムは、海外の一流のプロデューサーと一緒に曲やろうっていうのがコンセプトで、日本人だけど世界の現行のトップのやつらとやってる事実を、一つのパッケージにしたかったんですよね。その意味でも、そのコンセプトをちゃんと提示するために、アルバムっていう単位で作品作りをするのが大事なのかなって。それに、やっぱり盤で欲しいっていうコレクターの子もまだいると思うんで、今回のベスト盤含めて、CDというパッケージでリリースしようと。それから、今回収録した曲を押さえておいてくれたら、これから出るアルバムとか、自分のこれからやっていくことも垣間見てもらえるのかなって。その意味でも、一つのまとまりにしたかったんですよね。

――では、このアルバムを出したことで、ご自身にエフェクトはありましたか?

ISH-ONE:自分を振り返ることで、自分はちゃんとやってきたなって、自分の中で自信になったと思いますね。振り返らないでずっと進んでいくと、「あれ? 何やってきたんだろう」ってたまに思うことって、人生にはあると思うんですけど、こうやって纏めたことで、「こうやって歩いてきたんだな」っていう、自分が歩いてきた道をちゃんと見る事が出来たと思いますね。それがあったから、次のアルバムで世界に出て行こうと思った自分の意思に対して、自分自身でブーストかけられたと思いますね。(高木”JET”晋一郎)

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