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『大恋愛』戸田恵梨香が演じるのはただの“悲劇のヒロイン”ではない 感情表現の豊かさに注目

リアルサウンド

18/11/22(木) 6:00

 現在放送中のTBS系連続ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』で、若年性アルツハイマーにおかされていく女医・北澤尚を演じている戸田恵梨香。難病ものの恋愛物語ということで、ある程度終着点が想像できつつも、ムロツヨシ演じる小説家・間宮真司との恋愛模様は多くの人の共感を呼んでいる。そこには“悲劇のヒロイン”という立ち位置で悲しみや憂いを纏いつつも、それを凌駕するだけのポジティブさで、見ている人に希望や未来を感じさせるからだろう。戸田の喜怒哀楽の表情が素晴らしいのだ。

 本作の脚本を務める大石静は、ドラマ放送前の試写会の席で、自身が務めたNHKの連続テレビ小説『オードリー』に戸田が、大竹しのぶ扮する滝乃の幼少時代を演じていたことに触れると「名前まで覚えていませんでしたが、とてもうまい子だなと思った」と小学生だった戸田の演技に見入っていたと語っていた。

【写真】『大恋愛~僕を忘れる君と』第1話~第7話までの戸田恵梨香

 以前から注目していた女優とのタッグを喜んでいた大石だったが、戸田にとっては相当な難役だったという。試写会で戸田は「演じていて感情のコントロールが難しい。泣いてはいけないところで涙が出てしまう」と語っているように、演じているというよりは尚として生きているという感覚なのだろう。

 戸田といえば、今年30歳を迎えたが、前述したように小学生からドラマの出演があるなど、女優としてのキャリアは長い。大石が語っているように“芝居のうまさ”には定評があり、木村拓哉主演のドラマ『エンジン』(2005年、フジテレビ系)では、養護施設に入所した女子高生を好演。この養護施設のメンバーには上野樹里、夏帆、石田法嗣、 有岡大貴、中島裕翔など現在も活躍している俳優たちが顔を揃えていたが、戸田の愛に飢えた儚げな表情をした女の子は目を引いた。

 一方で『野ブタ。をプロデュース』(2005年、日本テレビ系)の上原まり子では清純な黒髪ロング、映画『デスノート』シリーズ(2006年~)のミサミサ(弥海砂)ではツインテールを披露し“美少女ぶり”を思う存分見せつける。確かな演技力と、ビジュアルの可憐さは大きな話題となり映画・ドラマへの出演が相次いだが、ここでも戸田は、恋愛もののヒロイン一辺倒ではなく、さまざまな役柄に挑んでいた。『ギャルサー』(2006年、日本テレビ系)で極貧ギャルを演じたと思えば、『花より男子2』(2007年、TBS系)では、スポット参戦ながら道明寺の気を引こうと嘘をつく女の子らしい女の子・中島海を好演。

 さらにドラマ初主演となった『LIAR GAME』シリーズ(2007年~、フジテレビ系)では「バカ正直のナオ」と呼ばれるほどまっすぐで、ちょっと抜けた守りたくなるような女の子・神崎直を演じた。ある意味で、この直はとても好感度の高いキャラクターであり、この路線でいくのかなと思われたが、翌年放送された『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(2008年~、フジテレビ系)では、根はやさしく情にもろいものの、非常にプライドが高く強い上昇志向を持つフライトドクター候補生・緋山美帆子(のちに医師)に扮し“強さ”を見せた。

 そして2010年から放送開始された『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』では、ボサボサの髪の毛に女性を消したような雰囲気、がさつで「バ○と天才は紙一重」というギリギリのキャラクターを思い切りよく演じて、大いなる評価を得た。

 上記以外にも『大切なことはすべて君が教えてくれた』(2011年、フジテレビ系)でのしっとりとした恋愛物語や、亭主の暴力から命からがら逃げてきた女性を演じた時代劇映画『駆込み女と駆出し男』(2015年)の迫真の演技、さらに、初となる本格アクションに挑戦した映画『無限の住人』(2017年)の乙橘槇絵など、印象に残る役柄は枚挙にいとまがない。

 「戸田恵梨香が演じたキャラクターで印象に残っている人物は?」という質問があったなら、非常に多くのキャラクターが回答にあがりそうなぐらい良作が多いのも、戸田の女優としての実力ではないだろうか。

 多岐にわたる感情をさまざまな役柄で表現してきた戸田だからこそ、今回の尚という役を表情豊かに演じることができるのだろう。しかし、そんな戸田をしても今回は「これまで経験したことがないぐらいの難役」だという。アルツハイマーという病について、資料等で知識を得ていたというが「簡単に理解しきれるものではない」というのは本人も分かっていると試写会では語っていた。

 だからこそ、ムロ演じる真司と現場で対峙することによって湧き出る感情を大切にしているのだろう。ここまで心の内から感情が“漏れ出てくる”と感じたキャラクターはいなかったかもしれない。ドラマなのだが、ドキュメンタリーを見ているような気になる瞬間もある。

 それでも、重くなりすぎないのは、二人によって作り出された空気感が、未来に絶望しつつも、どこか希望に満ち溢れているからだろう。そこには本来の持つ戸田とムロのハートフルな人間味も役柄に染み込まれているのだと感じる。

 物語は第二章に突入。さらにシビアな展開が待ち受けていることは想像できるが、戸田が試写会で見どころにあげていた「登場人物がどう選択して運命を捉えていくのか」という部分をじっくり堪能していきたい。

(磯部正和)

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