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米津玄師、ソフトバンクCM起用でさらに国民的アーティストへ 「Lemon」に宿る普遍性と新しさ

リアルサウンド

18/9/19(水) 8:00

 米津玄師の「Lemon」がソフトバンクの新テレビCMシリーズ「白戸家ミステリートレイン」に起用され、再び注目を集めている。「Lemon」が使用されているのは、ソフトバンクの新料金サービス「ウルトラギガモンスター+」のCM「白戸家ミステリートレイン『リョウマの事情聴取』篇」。このCMのストーリーは、白戸家が家族旅行で乗車した豪華寝台列車のなかで次々と事件が起き、偶然この列車に乗っていた名探偵(堺雅人)が解決に挑むというもの(もちろん「オリエント急行殺人事件」のパロディ)。『リョウマの事情聴取』篇は、探偵とリョウマ(竹内涼真)の会話(取り調べ)で構成されている。

参考:米津玄師は間違いなく2018年上半期を代表する存在に ビルボードジャパンチャート分析

「あのとき僕はスマホで米津玄師を見ていました」

「景色も見ないで米津玄師ですか」

 ここでスマートフォンの画面に「Lemon」のMVが流れ始める。さらに「米津玄師」の文字が大写しとなり、「“げんし”ではなく“けんし”です」というナレーションも。このCMで米津玄師の「Lemon」が使われている理由はもちろん、この曲の圧倒的な認知度の高さだろう。

米津玄師『Lemon』
 ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として書き下ろされた「Lemon」は、8月27日付けのデジタルダウンロード(単曲)で150万ダウンロードを突破。日本レコード協会から「史上最速100万DL認定作品」とされ(4月30日付、レコード協会調べ)、オリコンでも「史上初100万DL認定」を受けたこの曲は、リリースから半年以上が経った現在も、驚異的なロングヒットを記録している。2月26日に公開されたミュージックビデオ(監督/山田智和)も1億6000万回越え(CMでは、動画見放題の新サービスとかけて、さらに動画の再生回数が伸びる可能性にも触れられている)。幅広い層のリスナーにリーチしたこの曲は、2018年の音楽シーンを代表する楽曲であることはもちろん、2010年代における最大のヒット曲といっても過言ではない。

 ボカロP“ハチ”としてキャリアをスタートさせ、ロック、ヒップホップ、エレクトロなどを融合したハイブリッドなサウンドメイク、豊かな物語性と生々しいメッセージを共存させた歌詞、ボーカリストとしての豊かな表現力によって、コアなファンをしっかりと惹きつけたまま、リスナーの層を大きく広げてきた米津玄師。その根底にあるのはおそらく“幅広い世代を魅了する、すべての日本人に響く歌を作りたい”という意識だろう。戦後から積み上げられてきた日本の大衆音楽(歌謡曲)を紐解き、そのなかに含まれた豊かな音楽を自分自身の血肉に取り込み、さらに2000年代の新しいサウンドを織り交ぜながら(米津は現在進行形の海外のインディーロック、オルタナR&Bなどにも造詣が深い)、誰もが楽しめるJ-POPへと結びつける。普遍性と新しさを兼ね備えた楽曲こそが米津の真骨頂であり、そのスタンスがもっとも良い形で具現化されたのが、「Lemon」という楽曲なのだ。

 「Lemon」を聴くと、その質の高さに改めて驚かされる。豊かな叙情性と憂いを感じさせるメロディライン、一瞬のギターカッティングの直後に放たれるサビの解放感。生々しいバンドグルーヴ、壮大なストリングスサウンドを軸にしながら、現行のR&B、ヒップホップの要素を隠し味的に加えたアレンジ、そして、大切な人との悲しい別れを“今でもあなたはわたしの光”というラインに結びつけた歌詞。「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」(YouTubeで公開された特別ネット番組『米津玄師と、Lemon。』の発言)をテーマに制作され、幅広いポップネスとディープな音楽性がひとつになった「Lemon」が老若男女のリスナーに受け入れられたことは、きわめて当然のことだったのだろう。蛇足かもしれないが、カッティングエッジな才能を持ったアーティストが大衆性を獲得したという意味で、米津のキャリアにおいて「Lemon」は、サザンオールスターズの「いとしのエリー」と同じような役割を果たすと思う。

 10月27~28日には初の幕張メッセ公演『米津玄師 2018 LIVE / Flamingo』を開催する米津玄師。最近はテレビで取り上げられることも増えており、その知名度はさらに上がっている。YouTuberに夢中になっている世代からコアな洋楽を追いかけている音楽ファン、ごく一般的なJ-POPユーザー、40代以上の(新しい音楽に疎くなっている)リスナーまでを巻き込でいる米津はここから、国民的なアーティストになっていくはず。エッジの効いた表現を追求しつつ、お茶の間レベルにまで届けることを諦めない米津の存在は、やはり特別だ。(森朋之)

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