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いま、最高の一本に出会える

星野源、DÉ DÉ MOUSE、ゆず 北川悠仁……有名アーティスト手がけるNHK教育番組の隠れた名曲

リアルサウンド

18/8/5(日) 10:00

 未就学児を持つ子育て世帯にとってTVのゴールデンタイムと言えば、ほとんどの家庭においてNHK Eテレで7時45分から8時40分まで放送されている、子ども向け教育番組だろう。

 7時45分から年長向けの『みいつけた!』が始まり、2〜4歳児向けの『おかあさんといっしょ』、そこから0〜2歳児を対象とした『いないいないばあっ!』へと続く。独身やディンクスでも忙しい朝の時間に、子どもの注意を引きつけてくれる非常に有効な手段だけでなく、考える力やひらめきを与えてくれるコーナー作りなど、親として大変助かるコンテンツを毎朝(再放送の夕方の時間帯含めて)届けてくれる優良番組である。

 幼児番組の最重要コンテンツとして歌があり、どの番組もかなりの時間を割いているが、毎朝支度にバタつきながら聴いている曲で「すごくいい曲だな」と思いクレジットを見てみると、実は大物アーティストが手がけているケースが多いことに気づく。かつて『みんなのうた』で坂本龍一がプロデュース・編曲を務めた「コンピューターおばあちゃん」をはじめとして、宇多田ヒカル、椎名林檎、AKB48というように、アーティストが子ども番組に楽曲を提供することは珍しくないが、上記の番組内で放送されている提供曲は、出演キャストが歌唱するものがほとんどのため、アーティストの名前が大々的に謳われることはなく、子育て世帯以外に知られていることはあまりない。そこで、本稿ではいくつかの「意外な」アーティスト提供楽曲を紹介しようと思う。

「グローイング アップップ」(作詞:宮藤官九郎/作曲:星野源)

 2016年3月の『みいつけた!』エンディング曲として話題を呼んだナンバー。作曲は星野源、作詞は宮藤官九郎、歌唱は俳優の三宅弘城、内田慈によるもの。

 卒業シーズンの別れを、成長して小さくなって座れなくなったイスや、自転車に乗り換えるためにお別れする三輪車の気持ちになぞらえた歌詞だが、同番組のマスコットキャラクター「コッシー」がイスをモチーフとしていることもあり、小学生になって番組を卒業していく子どもたちとの別れと、新しく番組を見る子どもたちに引き継がれていく心境が重なり、毎朝観ていた全国の親が、番組への感謝の気持ちを胸に朝から滂沱の涙を流した。「お別れだけど、泣いたら負けで、笑ったら勝ちだよ」という意味で、にらめっこの「アップップ」と「グローイング・アップ」をかけていることに、短いセンテンスながら最大限のドラマを感じさせる。別れは成長であり、だからこそ笑顔で別れるのだ。星野源による切なくも温かいメロディに乗って、このメッセージがダイレクトに心を揺さぶる。同番組では同じ作詞:宮藤官九郎、作曲:星野源で「おっす!イスのおうえんだん」という、イスを使った体操ソングもあり、こちらもおすすめ。

「きらららダンス」(作詞:遠藤大介/作曲:DÉ DÉ MOUSE)

 Eテレ朝枠で最長寿番組である『おかあさんといっしょ』。今年で59年目ということもあり、過去に有名アーティストからの楽曲提供という例は多く存在する。代表的なのはさだまさしによる「魔法のピンク」。軽快なメロディに乗せて〈ぱぺぴぺぽぺぴぺぱぷぺぽ〉と思わず口に出して言いたくなるような言葉をリズミカルに歌うこの曲は、過去多くの子どもたちの発声を促してきたであろうし、中西圭三による「ぼよよん行進曲」は今でも歌い継がれている大名曲である。

 そんな中でも今回ご紹介したいのは、今年の6月に“今月の歌”として1カ月放送されたDÉ DÉ MOUSE提供の「きらららダンス」だ。6月の曲ということだけあり、雨をテーマとした楽曲だが、普段は感情的に高らかに歌う、ゆういちろうお兄さん、あつこお姉さんが無機質に歌うという意表をついたから冒頭から、サビから四つ打ちビートで加速し、ストリングス、ブラスが渾然一体となって鳴り響く。クラブでそのままかけても十分通用するサウンドと、シンプルな言葉で綴られた歌いやすい詞は、キッズソングとしてもかなり優秀だと言える。2分弱の時間に凝縮して詰め込まれた壮大な「シンフォニックテクノ」ともいうべき傑作だ。

「だいすきの木」(作詞・作曲:北川悠仁)

 『いないいないばあっ!』で今夏不定期に放送中の最新曲。ゆずの北川悠仁が楽曲提供をするのは、2016年の「かんぱーい!」、2017年の「じゃんじゃん!ジャンプ!!」に引き続き、3年連続の3曲目。

 ファンタジックなアレンジでパーティのワクワク感を打ち出した「かんぱーい!」は誕生日やお友だちとのパーティで最高の一体感を創出し、「じゃんじゃん!ジャンプ!!」は不機嫌なキッズも秒で笑顔に変わり、ぴょんぴょん跳ねだすほどのキラーチューンと、過去2年はパーティ向けな楽曲で全国の幼児をアッパーに鼓舞してきたが、今年の「だいすきの木」は、“子どもたちの心の中にある「だいすきの木」がすくすく育って、世界中を笑顔にするようになるように”という想いのこもったやさしい楽曲。たくさんの友だちと手を繋いで、大きな声でシンガロングしたいエヴァーグリーンなナンバーだ。

 子ども番組の曲はとても前向きな曲が多く、そのどれもがシンプルな言葉と、洗練されたトラックで作られている。ちゃんと声に出したくなるように、子どもたちが体を動かしたくなるように、考え、選び、構成された曲ばかりだ。だからこそ原始的な感情にダイレクトに響くので、聴いていると大人も自然に前向きになっていたりする。キッズソングは、親と子の最初の音楽の架け橋だ。共に歌い、共に笑い、共に踊る。当たり前のようで、この共有感の重要度はもっと注目されるべきものではないだろうか。今回紹介したアーティスト提供楽曲をきっかけに、この意味に触れていただければと思う。

(文=石川雅文)

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