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役所広司は怒り、古舘寛治は困る 『いだてん』のユニークさを担う対照的な演技

リアルサウンド

19/2/11(月) 12:00

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第6話では、羽田で行われたオリンピック予選大会で世界記録を出した金栗四三(中村勘九郎)が、日本代表選手として出場を決意するまでを描く回となった。

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 オリンピックに日本代表として派遣するに値する選手を見つけ喜ぶ嘉納治五郎(役所広司)。しかし嘉納は、オリンピックの莫大な派遣費用に頭を抱えることになる。そのうえ日本代表選手として改めてスカウトした四三は、負けたら腹切りかと恐縮し、オリンピック出場を辞退しようとする。短距離走の覇者・三島弥彦(生田斗真)も大学卒業後の進路を理由に出場を断ってしまう。

 第6話は、オリンピック出場を辞退しようとする四三を必死に引き留めようとする嘉納と、大日本体育協会の予算組みを担当する可児徳(古館寛治)の悪戦苦闘する姿が印象的な回となった。後のことは考えず豪快に物事を決める嘉納と、冷静に対処するも最終的には嘉納に押し切られてしまう可児。この2人が見せるコミカルなやりとりが、前途多難だった当時のオリンピック出場の様子を、楽しくもひしひしと視聴者に伝えてくれる。

 ドラマ冒頭、大日本体育協会(大協)で会議が開かれている。そろばんをはじいている可児に対し「いつまでそろばんはじいてるんだ、君は」「高等師範の時間はおしまい。五時からは大協」と声をかける嘉納。しかし可児は「すいません」と手短に謝りながらも、「しかしこれは羽田の経費。つまり大協宛ての請求書で」と返す。オリンピック出場に関するあらゆる事象がお金の問題で滞っていたのだ。予算の都合で選手たちをオリンピックへ連れていけないかもしれない現実を前に、金がないから連れていけないなど言えないと力説する嘉納。しかし、嘉納の気持ちを汲みつつも口を結び、困った表情を浮かべる可児の様子からは、本当にお金がないことが伝わってくる。

 第1話から嘉納と可児の関係性はユニークだった。豪快な嘉納に対し、真面目で冷静ながらもどこか嘉納に押され気味な可児。しかし可児は決して嘉納本人に困り果てているわけではなく、むしろ一番の理解者とも言えよう。四三にオリンピック出場を断られる場面では、何も知らず純朴にオリンピックについて問う四三の姿に、嘉納の力説が見事に空回りする。そんな2人のやりとりを見て、嘉納の考えを身近で感じてきた可児は嘉納をフォローするかのように四三に言葉をかける。しかし四三はピンと来ていないようだ。このときの激しく一喜一憂するテンションの高い役所の演技と、古館の困り果てた演技が対照的で面白い。

 また劇中、最悪のタイミングで「辛亥革命」が起きる。ただでさえオリンピック予算が足りていないというのに、嘉納は清の学生たちの学費を全額負担すると言う。可児は嘉納の豪快な決断に弱々しい声で「出た……」と発し、思わずふらつく。笑顔で学生たちを励ます嘉納と、頭を抱え泣きそうな顔の可児。“どうにも報われない損を見る性格”の可児の特徴がこのシーンではよく表れていた。

 ただ、さすがの嘉納もオリンピック予算と「辛亥革命」の出来事が重なったことは負担となったようだ。四三のオリンピック出場を諦めたわけではないが、どことなく元気のない嘉納。しかし印象的なのは、元気がないまま四三をオリンピック出場へ口説き落とそうとする嘉納に、横やりを入れない可児の姿だ。嘉納のオリンピックへの思いを知る可児だからこそ、オリンピック出場に関しては口を出さないと決めているのかもしれない。四三に対し深々と頭を下げる嘉納の姿を、黙って心配そうに見つめる可児の姿は強い印象を残す。ここでの古館の演技は、可児の嘉納に対する信頼を体現していた。

 とはいえ予算組み担当の可児。四三が、頭を下げた嘉納の姿に涙し、オリンピック出場を決めるや否や、嘉納に対しアイコンタクトやジェスチャーでお金の話を正直にするよう促す。なかなかお金の話を切り出せない嘉納に、お金を意味するジェスチャーで促す可児の姿はコミカルだ。このときばかりは、いつもの豪快な嘉納の姿はない。可児に押され、自費出場を勧めるまでに至った。嘉納を信頼しつつ、締めるところは締める可児の姿を演じられるのは、真面目さとコミカルさを併せ持った古館にしかできないのではないだろうか。

 四三がオリンピック出場を決めるまでが描かれた『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』第6話。四三たちのオリンピック出場は、今後も前途多難な道のりが続きそうだ。

※古舘寛治の「舘」の字は、正しくは、外字の「(※舎官)」

(片山香帆)

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