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ドラマ『この世界の片隅に』は作り手の本気度が伝わる圧巻の出来栄え アニメ映画版と明確な違いも

リアルサウンド

18/7/16(月) 6:00

 前情報をほとんど入れずに、こうの史代の原作と2016年に公開された(今でもロングラン公開中というのだから驚きだ)片渕須直監督が手がけたアニメ映画版の知識だけをもって観たとしても、7月15日から始まったTBS系列日曜劇場『この世界の片隅に』は、作り手の本気度が伝わってくる圧巻の出来栄えだ。

 あえて現代パートを導入させることで、単に戦時下の物語だと落とし込まないあたりは、テレビドラマというメディアの持つリアルタイム性を存分に活かしていると見受けられる。さらに、アニメ映画版と比較されることが避けては通れない中で、今回のドラマ版ではひとつひとつのエピソードのディテールをさらに深く描きこみ、より一層ヒューマンドラマ色を強めてきた印象だ。

 冒頭の広島の街でさりげなく映る「産業奨励館」、主人公・すずが幼少期に遭遇する座敷わらしの正体を早々に明かし、すずの夫となる周作の視点も織り交ぜる。第1話で描かれたのは、アニメ映画版でいえば冒頭わずか23分程度のところまでであり、ほぼすべてのエピソードをより充実させてカバーしており、原作やアニメ映画版へのリスペクトも感じるほどだ。

 とはいえ、“ほぼ”と表現したのはアニメ映画版と明確なスタンスの違いが明確に現れているからだ。呉に嫁ぎに行くすずと家族が、海岸線を通る汽車の中で汽車の窓から軍艦が見えないように鎧戸を閉めるシーンがカットされていた点、そしてすずと周作が外に出るシーンで、アニメ版では軍艦の照射訓練を見るところを、静かな星空を見るシーンに変わっていた点から、もしかすると「戦争ドラマ」としての色は少し薄くなってしまうのではないだろうか。

 それでも、本作が目指しているところは「夜の朝ドラ」だそうだ。それを象徴するように、キャスティングから本家を意識したような布陣が揃う。すず役の松本穂香は『ひよっこ』の青天目澄子役でブレイク。すずの幼少期を演じた新井美羽は『わろてんか』でもヒロインの幼少期を演じ、またしても成長して松坂桃李と結婚する役柄になったわけだ。

 他にもすずの妹を演じる久保田紗友、呉の北條家のご近所さんを演じる土村芳はともに『べっぴんさん』で、同じく伊藤沙莉も『ひよっこ』の東京編に登場。『おしん』で姉役を演じた仙道敦子がすずの母親・キセノ役で出演し、小姑には『カーネーション』の尾野真千子、現代パートには『瞳』の榮倉奈々と、まさに徹底して狙いに行っているあたりは実に興味深い。

 そして何より、極めて精巧なセットで再現された昭和の街並みと、いかにも土井裕泰演出らしい選りすぐられたロケーションが巧く交わっている点も、“朝ドラ”的な空気を感じる部分だろう。強いこだわりと熱量の高さが感じられる本作は、お世辞抜きに完璧だったアニメ映画版に匹敵する、期待以上のドラマに仕上がっていくのではないだろうか。(久保田和馬)

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