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吉田羊×太賀『母さんがどんなに僕を嫌いでも』対談 「一本の筋を通して表現したかったんです」

リアルサウンド

18/11/25(日) 10:00

 太賀と吉田羊が共演する映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が公開中だ。原作者である歌川たいじが、実体験をもとに書き綴ったコミックエッセイを『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』の御法川修監督のメガホンによって映画化した本作は、親からも友達からも愛されたことがない青年が、壮絶な過去を乗り越えて、自分を拒絶してきた母の愛をつかみ取るまでの実話ベースの物語である。

参考:<a href=”http://www.realsound.jp/movie/2018/11/post-282754.html”>その他写真はこちら</a>

 今回リアルサウンド映画部では、主人公・タイジ役を務めた太賀、タイジを心身ともに傷つけてしまう母・光子を演じた吉田羊にインタビュー。原作者・歌川たいじとのエピソードや撮影の裏側、演技へのスタンスについてまで話を聞いた。

ーー本作は原作者・歌川たいじさんご本人の壮絶な過去が元になっています。

太賀:歌川さんの、実際にあった過去を演じるというのは簡単ではなかったです。というか、大変でしたね(笑)。

吉田羊(以下、吉田):本編を観た時に、太賀くん大変だっただろうなと思いました。原作にあったあのあらゆる喜怒哀楽を芝居とは言え「体感」したのですから。原作を読むと、虐待というデリケートな題材でありながらも、どこか温かくて、希望すら感じる作りになっているじゃないですか。それは偏えに歌川さんの、お母さんに対する愛情が根底にあるからだと思うんです。それが脚本になっても、御法川監督の、映画に関わった人や観た人に幸せになってほしいという愛情を感じられるものだったので、ただの虐待の映画では終わらない確信がありました。

ーー役を演じるにあたって、原作を意識した部分はありましたか?

太賀:あえて原作を意識するということは特になかったです。でも、羊さんが言うように、原作にとてもポジティブな雰囲気があったので、作品のトーンを把握するという意味では、原作からヒントをもらいました。

吉田:私も原作を意識するということはなかったんですが、光子さんが虐待にまで至る思考回路がどうしても理解できなくて、歌川さんにお母さんについて色々エピソードを聞かせていただいたことはありました。聞くに堪えないようなむごいお話ばかりなのに、一番母を拒絶するはずの歌川さんご本人が「それでも母は一生懸命生きた人だったんですよ」とすごくポジティブで、お母様を擁護すらしている。その時に「これを伝えればいいんだ」と気づきましたね。どんなに未熟な母親であっても、子どもは母を愛しているんだという歌川さんの思いを伝えれば、きっとこの映画を作る意味があると思いました。

ーー役作りの上で工夫されていた点は?

吉田:きっと光子さん自身も、自分がどう母親として振る舞ったらいいのか分からなかったと思うんです。他人からこうあるべきと要求されるものに、自分が追いつかない不安ってきっと大なり小なりみんなあるじゃないですか。私もこういう仕事をしている以上、吉田羊ってこういう人というイメージをつけられる経験はたくさんありますし、そのイメージへの不安もあります。そういう意味では、光子さんにリンクできる部分もあると思って、演じさせていただきました。ただ、虐待は肯定されるべきではないし、私も演じながら劇中で描かれる彼女の生い立ちや背景をエクスキューズにはしないでおこうとは決めていましたね。むしろ光子さんが未熟に映るように演じるほど、それでも息子は母を求めていたということが逆説的に色濃く、皆様に伝わればいいかなと思います。

ーー太賀さんはいかがですか?

僕は、歌川さんの実体験での悲しみを経験していないので、それを自分が体現できるのかというのはすごく不安でした。でもやるからには、その時々で歌川さんが感じた喜びも悲しみも何一つとしてこぼしたくはないと思って、タイジの喜怒哀楽を、繊細に表現することは意識しました。歌川さんも現場によく応援に来てくださっていて、それこそ劇中にも出てくる混ぜご飯やお菓子を作ってくれたりしたんです。だから聞こうと思えば、この時どういう気持ちだったのかとか聞くことはできたんですけど、それはしたくなくて。というのは、歌川さんが感じたことを僕自身が聞いて知ったような風じゃなくて、目の前に書かれている脚本に対峙した時に何を思ったのか、どういう気持ちだったのかを自分なりに想像することで、一本の筋を通して表現したかったんです。だから自分の想像力との戦いだったような気がします。

ーー歌川さんとのやり取りで印象に残っていることはありますか?

吉田:歌川さんは、しょっちゅう現場で泣いていましたね。彼の中で思い入れの深いエピソードのシーンでは、撮影の合間にモニター前で号泣していました。

太賀:色んな思いを巡らせながら、歌川さんはモニターを見ていたと思うんですけど、本番が終わってオッケーが出た後は、僕らのところに近づいてきて「本当に良かったです」って言ってくれたんですよね。それが本当に嬉しくて。この作品が、見てくれる人にどう評価されるのか分からないですけど、とにかくこの人のためにやりたい、歌川さんが喜んでくれたらそれでいいと思えたんですよね。

吉田:ああいう風に泣けること自体が、きっと彼にとっては大事なんだと思うんです。やっと自分の母のこと、人生のことを受け入れられるようになったからこそ、過去のこととして泣けるようになったのかなと彼を見ていて感じました。

ーー撮影現場の雰囲気はいかがでした?

吉田:太賀くんとのシーンに関しては、常にピリピリしていました。だけど、それがよかったのかなと思いますね。

太賀:あの緊張感が、芝居をする上でも必要でしたよね。

吉田:意識的に、横にいてもほとんど太賀くんとは話さなかったし、一緒にご飯も食べないようにしていましたね。

ーーでは、撮影を終えてからようやく仲が深まった?

吉田:そうですね。太賀くんって、こんな風に笑うのかみたいな(笑)。

太賀:ようやく気が楽になった感じです(笑)。

ーー森崎ウィンさんら他のキャストの方々とはいかがでしたか?

太賀:僕は、彼らとはコミュニケーションを多くとろうと思っていましたし、彼らもそう思っていたんじゃないかな。一緒にご飯を食べに行ったり、旅館に行くシーンの撮影の前日に一緒にお酒を飲んだりしました。それがあったからこそ、羊さんと対峙するシーンで、緊張感を持ってやれたのかなと思います。劇中でも、友達が寄り添ってくれたからこそタイジは母・光子に向き合えたので、羊さんとのやりとりとはまた違う意味で、ものすごく重要な関係だったと思いますね。

吉田:私は劇中通り、孤独でした(笑)。でもあえてそういう環境を自分で作りましたし、太賀くんの時も、子役の小山春朋くんの時も一切スキンシップを取らずに彼を無視し続けていましたね。でも、彼のクランクアップの日にもう会わないと思って、「今回はありがとうね」と言ったら、「僕、羊さんに嫌われてると思ってました」と言われて(笑)、抱きしめて「好きだよ!」って伝えました。

ーー吉田さんはドラマ『中学聖日記』(TBS系)、映画『ハナレイ・ベイ』、太賀さんもドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、映画『50回目のファーストキス』など、お二人とも作品によって異なる印象を受けます。自身で、演技をするにあたって常に意識していることはありますか。

吉田:え、聞いてみたい(笑)。

太賀:いやいやそんな(笑)。でも、みんなそうかもしれないですけど、自分の中で役を固めすぎないというのはありますね。自分の中では心づもりだけ決めて、あとは演出家さんや共演者の方と呼応していくようにやれたらいいなと。ちゃんと呼吸して会話のキャッチボールになるように、独りよがりにならないようにというのはなるべく心がけていますね。だからいつも素敵な方とお仕事したいなという気持ちでいます。

吉田:私も基本的にスタンスは太賀くんと一緒で、あまり決めすぎずに現場に入りたいですね。現場に入って、実際に相手役の方とお話をしたり、目に入るちょっとした小道具だったりで、台本では感じなかった感情が生まれたりするんです。だから、自分だけで作ろうとしないというのは心がけています。あと、演じるキャラクターの日常が見える演技をしたいなと思っています。そのキャラクターの生活における癖みたいなものを考えるのが好きですね。 (取材・文=島田怜於/写真=伊藤惇)

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