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5FDP、Halestorm、Shinedown…モダンとクラシックが交差するアメリカンHR/HMの新たな潮流

リアルサウンド

18/7/15(日) 10:00

 前回のキュレーキョン記事では北欧エクストリームシーンに特化した内容だったこともあり(参考:Amorphis、Ihsahn、At The Gates……北欧エクストリームシーンを支える重鎮たち)、今回は視点を変えてアメリカのハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)シーンに目を向けてみたいと思います。

 つい先日、Guns N’ Rosesが1987年に発表したデビューアルバム『Appetite For Destruction』がリリースから30周年を迎えたことを記念した豪華ボックスセットが発売されましたが、80年代を懐かしむ世代のみならず、リアルタイムでは知らないけどこのタイミングに名盤に初めて触れたという世代も少なくないかもしれません。

Guns N’ Roses – Shadow Of Your Love (Lyric Video)

 また、80年代半ばのアメリカンハードロックシーンを一気に拡大させた張本人でもあるBon Joviも今年11月末に、2013年12月以来5年ぶりとなる来日公演が実現。2016年に発表したアルバム『This House Is Not For Sale』を携えたツアーがついに実現するだけでなく、今回の東京ドーム(11月26日)&京セラドーム大阪(11月27日)でそれぞれ101回目、102回目の日本公演を行うことになります。この記録は海外のハードロックバンドとしては異例のもので、今後この数字がどこまで増えていくのかも気になるところです。

 このほか、7月に入ってからはStone Temple Pilots、Daughtryの単独来日公演も実現。8月18日&19日に東京&大阪で同時開催される都市型フェス『SUMMER SONIC 2018』にもMastodonやQueens Of The Stone Age、Greta Van Fleetといったアメリカ出身のHR/HM&ラウド系バンド、そして隣のカナダからもNicklebackが出演します。

 もちろんすべてのバンドをHR/HMの枠で括るのは難しいことですが、そんな中で今、80年代のメタルブーム、90年代のグランジ/オルタナを経た新しい形のアメリカンHR/HMシーンが確立されつつある印象もあります。今回の記事ではこうした新たな潮流を意識しつつ、この春以降にリリースされた気になる6枚の新作を紹介していきたいと思います。

新たな王道アメリカンメタルの主役

 この初夏から真夏にかけて、現在のアメリカンHR/HMシーンにおける重要な存在2組がニューアルバムをリリースします。まずは、この10年の間に男臭いパワフルなメタルサウンドで人気を確かなものとしたFive Finger Death Punch(以下、5FDP)の7thアルバム『And Justice For None』から。彼らは2009年の2ndアルバム『War Is The Answer』以降、発表したすべてのオリジナルアルバムがBilloboardアルバムチャートTOP10入りを果たしており、この最新作も全米4位という好成績を残しています。

 彼らの魅力は90年代末以降のニューメタルをベースにしつつも、そこに70年代的なブルースロックやサザンロックなどの“枯れた”要素を取り入れることで、モダンながらもどこか懐かしいメロディ&サウンドを聴かせてくれるところです。例えが正しいかはわかりませんが、そういった“懐かしさ”は日本における歌謡曲や演歌に置き換えることもできるのではないでしょうか。とはいえ、サウンド自体は完全に“今”の音そのものなので、古臭いものを聴いている感覚は皆無。激しい曲ではひたすら頭を振らせ、スローな曲やバラードでは聴く者の涙腺を刺激する。そのバランス感こそが5FDPの魅力だと、今回の新作を聴いて確信しました。

Five Finger Death Punch – Sham Pain (Official Video)

 そしてもうひとつ、女性シンガーのリジー・ヘイル(Vo)をフロントに据えたHalestormの4thアルバム『Vicious』もこの夏、注目すべきアメリカンHR/HMアルバムのひとつです。アルバムを発表するごとに、着実に人気と知名度を高めてきたHalestorm。このバンドのサウンドもモダンさと懐かしさを併せ持つ稀有な存在で、カリスマチックなリジーの存在感同様に若年層から80〜90年代にHR/HMを楽しんだ世代まで惹きつける魅力を持ち合わせています。

 今回リリースされる3年ぶりの新作『Vicious』はチャート/セールス的にも成功を収めた過去作と比較しても、非常に挑戦的な内容と断言できるでしょう。重心の低いヘヴィサウンドとキャッチーなメロディにはより磨きがかかり、さらにドラマチックさも過去の作品以上のものがあります。すでに公開済みの「Uncomfortable」や「Black Vultures」だけではその全貌を完全に把握することは不可能な、とにかくタフで濃厚な1枚。特に中盤に配置された2曲(「Conflicted」「Killing Ourselves To Live」)は新たな可能性すら感じさせ、5FDP同様この音がこれからのアメリカンHR/HMにとって新たな王道になっていくのではないか……そんなことを予感させる力作です。

Halestorm – Uncomfortable [Official Video]

HR/HMとオルタナの融合が生み出したもの

 HR/HMファンにとって、90年代のシーンは非常に厳しいものがあったと思います。シアトルから登場したグランジや、80年代後半から勢力を強めるオルタナティヴロック、ミクスチャーロックがHR/HMと代わってシーンを席巻。80年代にヒットチャートを賑わせたHR/HMバンドたちはシーンの隅に追いやられ、時代の流れに沿った方向転換を強いられたり、最悪の場合は解散に追い込まれたりしました。

 では、あれから20年以上経った今はどうでしょう。むしろ、それぞれのシーンがお互いを尊重しながら共存している、そんな印象すら受けます。フロリダ出身の4人組バンドShinedownはそういったHR/HMとオルタナの良い部分を吸収して大きくなっていったバンドのひとつと言えるでしょう。デビューアルバム『Leave A Whisper』(2003年)は90年代初頭のグランジ勢を思わせるポスト・グランジサウンドで人気を博しますが、ブレント・スミス(Vo)の歌唱法はメタルのそれに近いものがあり、個人的にもそのハイブリッド感に興味を持って聴くようになりました。

 通算6枚目のアルバムにあたる最新作『Attention Attention』は、彼らにとって初のコンセプトアルバム。心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安と戦いながら生きる人々の様が、時にヘヴィで引きずるようなサウンド、時には現代的なエレクトロサウンドを織り交ぜながら表現されています。アルバムのオープニングを飾る「The Entrance」〜「Devil」からラストナンバー「Brilliant」までで人生がどう好転していくのか、ぜひ歌詞(対訳)とあわせて楽しんでほしい1枚です。

Shinedown – “THE HUMAN RADIO” (Official Video)

 Shinedownと同じく、ポスト・グランジ的なポジションからスタートしたのがクリス・ドートリー(Vo)率いる6人組バンドDaughtry。クリスは2006年にアメリカで放送されたオーディション番組『アメリカン・アイドル』シーズン5に参加し、セミ・ファイナルまで勝ち残った実力の持ち主で、同年に発表されたバンドのデビュー作『Daughtry』は番組効果もあり全米No.1を獲得。現在までに全世界で800万枚を超えるアルバムセールスを誇る、アメリカを代表するバンドのひとつにまで成長しました。

 今回発表される5年ぶりの新作『Cage To Rattle』はナイル・ホーラン(One Directionなど)、ジャクワイア・キング(Kings Of Leon、ジェームズ・ベイなど)といったHR/HMとは無縁のプロデューサー陣を迎えて制作された、かなりの挑戦&実験作です。楽曲の見せ方/聴かせ方がかなり工夫されており、メタルやラウドロックというよりはかなりポップサイドに寄った“聴きやすい”内容に仕上がっています。これをHR/HMと呼ぶかどうかは受け取り手に任せますが、個人的にはこういったサウンドまでをも包括するのがHR/HMシーンの面白さだと考えています。今後もいろんな“融合”を経て、HR/HMシーンはさらに拡大していくことでしょう。

Daughtry – Backbone (Official Video)

ソロ作品で見せる新たな可能性

 すでに一時代を築いた、あるいは押しも押されぬ人気を誇るバンドのフロントマンが、バンドとは異なるテイストのソロアルバムを発表することは今に始まった話ではありません。バンドに在籍しながらも、ある種の“ガス抜き”としてソロアルバムを制作したり、あるいはバンドからの“次のステップ”としてソロアルバムに可能性を見出したり、理由は人それぞれでしょう。

 例えば、先日海外でリリースされたKornのジョナサン・デイヴィス(Vo)の初ソロアルバム『Black Labyrinth』はどうでしょう。彼がソロアルバムに着手したという噂はかなり前から出回っていましたが、実際にはバンド活動と並行して2008年からじっくり時間をかけてソロアルバムを作っていたそうです。

 90年代以降のヘヴィロックシーンで常に第一線を駆け抜けてきたジョナサン。KornというバンドでもプログレッシヴロックやEDMなどに接近してきましたが、このソロアルバムではメタルというジャンルに縛られない、広い意味での“ロック”が表現されています。オープニングを飾る「Underneath My Skin」の壮大さを筆頭に、ゴシックロックやニューウェイブ、民族音楽、エレクトロニックミュージックなどジョナサンの懐の深さが感じられる、さまざまなタイプの楽曲が楽しめます。もちろん随所に“Kornらしさ”はにじみ出ているので、バンドのファンが聴いても楽しめるはずですし、「Kornはちょっとうるさくて」と感じている人にも手にとってもらいたい1枚です。

JONATHAN DAVIS – Underneath My Skin

 最後は、この秋にニューアルバム『Living The Dream』のリリースを控えている、Guns N’ Rosesのギタリスト・スラッシュのソロバンドSlash featuring Myles Kennedy & The Conspiratorsのボーカリスト、マイルス・ケネディ初のソロアルバム『Year Of The Tiger』を紹介します。マイルスはスラッシュのバンド以外にも、自身のメインバンドAlter Bridgeのフロントマンとしてもおなじみの存在。Alter Bridgeでは2016年に発表した5thアルバム『The Last Hero』が全米8位、全英3位という好成績を残しており、昨年秋にはライブ音源+レア音源からなる3枚組作品『Live At The O2 Arena + Rarities』を発表したばかりです。

 そんな彼がソロアルバムで表現したかったのは、実の父親が亡くなった1974年を中心とした幼少期が題材のコンセプチュアルなもの。ブルースなどトラディショナルなルーツミュージックをベースに、普遍性の高いフォーキーなロックが展開されています。どこか内省的な雰囲気がありながらも、中には「The Great Beyond」のようにドラマチックな盛り上がりを見せる楽曲も含まれており、マイルスがこれまでに関わってきたバンドに興味があるリスナーなら間違いなく気に入ることでしょう。逆に、このソロアルバムをきっかけに、ここ日本では知名度がそれほど高くないAlter Bridgeに目を向けてみるのもいいかもしれません。

Myles Kennedy: “Year Of The Tiger” (Official Music Video)

■西廣智一(にしびろともかず)
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。Twitter

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