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『劇場版コード・ブルー』山下智久ら5人が続ける、“家族との対話”の終わりなき追求

リアルサウンド

18/8/16(木) 12:00

 昨年放送された『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)では、5人のメインキャスト(山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介)から、新たな後輩たち(有岡大貴、成田凌、新木優子、馬場ふみか)への“継承”というテーマが加えられ、より大きな世界観が展開されていった。そして今夏、その一連の物語の一区切りとして、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が公開。本作では、人命救助を通じて医者が何を求められているのかということ、そして5人の結びつきが持つ可能性についての総括がなされたと言えよう。

 劇場版では、彼ら、彼女らが向き合っていかなくてはならない患者たちがまた新たに登場するわけであるが、いずれの患者にも共通すること、それはどういった形で命に向き合うかということは勿論のこと、いかにしてその家族や恋人といった存在に目を向けられるかが重要なポイントとなっている(というより、今回の劇場版に限らず、今までの『コード・ブルー』シリーズに流れる通奏低音は、この“家族との向き合い方”が大きく占めているといってよいだろう。そういった意味で、劇場版は今までに登場人物たちが学んでいったことの“総括”として大変ふさわしかった)。

※以下、一部ネタバレを含みます。

 まず、今回の劇場版を語る上で欠かせない患者は、山谷花純演じる、末期がんを抱えた花嫁・富澤未知である。“人生最後の旅行”に向けて乗り込んだ飛行機で事故に見舞われ、翔北救命センターに運び込まれる。一命は取りとめたが、未知には壮絶な過去があったことが判明する。彼女はかつて、岩田彰生(新田真剣佑)という青年をフィアンセにもっていたが、彼女の深刻な病が発覚すると、そんな彼女を支えきれずに、彰生は逃げ出してしまう。

 未知に主に向き合っていったのは、冴島(比嘉愛未)であった。ドラマ版からご覧になっている方はご存知のように、冴島は藤川(浅利陽介)との交際を進めており、劇場版では結婚式に向けた準備を着々と進めているという設定だった。ところが、未知とは状況が異なるけれど、冴島はかつて恋人を病気で失ったという苦い過去を抱えていただけに、病床の未知に対する向き合い方は説得力のあるものだった。命のリミットを抱えた患者を前にしたとき、医者や看護師はどんな言葉をかけ、どのような接し方をしていくのか。慰めたり、勇気づけたりしようとしても、ただ安易に思いついた言葉をかけても、患者にとって何のパワーにもならないどころか、むしろより一層暗い現実を前に、失意に沈み込ませてしまうものである(実際、冴島も本作では未知から厳しい言葉で言い返される場面がある)。それでも、冴島は自身の経験に基づいて、残りの時間の尊さ、そしてどう過ごしていくべきかについてそっと語りかける。まさしくそこには“情理を尽くして”話しかける姿勢があった。

 未知が残された人生で行ったこと、そしてその後に待ち受ける衝撃的な結末。ただ、この未知のエピソードでは、未知本人はもとより、フィアンセだった彰生の存在も重要なパートを占める。先述の通り、医者・看護師はまず患者の命の対処に全力を尽くすべきであるが、同時にいかに近しい人間たちとの関わりにも向き合うことの重要さを教えてくれる本作。『コード・ブルー』シリーズは病気を治す上での専門的な困難にスポットを当てる作品(直近で言えば『ブラックペアン』(TBS系)など)というより、患者とその周りの人々の繋がりに重きを置いている。

 劇場版では、そのもう一つの具体例として、作中では海ほたるの事故で、鉄の棒が体に突き刺さってしまった男性が登場する。その救命にあたるのが、藍沢(山下智久)と白石(新垣結衣)なのであるが、その時男性のすぐ側には、家族と思しき青年・杉原剛志(平埜生成)の姿があった。剛志はかつてその男性に虐待を受けていた息子だったということを、藍沢は事故現場で本人から知る。そこでも、“家族とのつながり”にスポットを当てた演出がなされる。ただ、未知のときも、剛志のときにも共通しているのは、“こうしなければいけない”ということを藍沢たちの側から押し付けるようなことはしないのだ。最後は患者自身に、どこに向かうべきかを気づかせる手助けまでが藍沢たちの仕事であって、最後は人生の当事者たちに寄り添うのみであるということ。断定形に走り過ぎない語り口。これこそが『コード・ブルー』が示す医者・看護師たちのあるべき姿の真髄であるように思われる。

 藍沢たちは、間違いなく救命という仕事を通じて多くのことを学んで、成長していったことは言うまでもない。ただ、恐らく患者とその家族への向き合い方の“正解”にはたどり着くことがないように思われる、というよりも、“正解”なんていうものはないのだろう。劇場版では、脳死状態の患者の遺族に、正確にはどのような言葉をかけるべきだったのかという灰谷(成田凌)の質問に対し、橘(椎名桔平)は「分からんよ」と答える。橘ほどのベテランにとっても、常に患者と家族に対する向き合い方は模索段階なのである。今後、藍沢たちもまた様々な患者に出会っていくと思われるが、試行錯誤の連続をこれからも繰り返していくのであろう。

 劇場版のエンディングでは、藍沢ら主要メンバー5人がヘリポートの付近でその結束を確かめ合うところが描かれた。言葉を交わさなくとも、通じ合える可能性を秘めた特別な5人の関係性。5人それぞれが個性的なキャラクターを持っていることは言うまでもなく、相互補完的に振る舞うことで、見事にチームワークを発揮してきた。完璧すぎる医者の快刀乱麻ぶりを描く作品もそれはそれで観ていて興奮するものであるが、『劇場版コード・ブルー』は答えのない医者・看護師の姿を模索し続ける作品の奥深さを教えてくれた作品であった。(國重駿平)

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