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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

(C)Yuji Hori

第5回

加古隆 作曲家として、そしてピアニストとして

〜パリ時代 その2〜

連載

19/5/1(水)

 きっかけは、コンセルヴァトワールの「分析」の授業で知り合った盲目のトランペット奏者でした。期末試験の論文を出すにあたり、私はバルトークを選んで作品のアナライズを行ったのですが、彼はなんとジャズ奏者のジョン・コルトレーンを選んだのです。懐かしさから「コルトレーンが好きなのか? 僕もコルトレーンが大好きで、以前たくさん聴いていたんだ」と彼に言ったところ、「それならうちに遊びに来ないか」と誘われたのです。彼の家には古いジャズのレコードが沢山あったのです。しかし、コルトレーンといっても、そこで聴いたのは私の知らないスタイルのコルトレーンだったのです。超フリーで、前衛的になった時期のコルトレーンですね。他にも、ドン・チェリーなどなど、フリージャズの有名なレコードをたくさん聴かせてくれたのです。当時彼は学生の傍らジャズの評論家としても活動していて、「ジャズ・マガジン」などにレコード評などを書いていたのです。まさに、当時のパリのジャズ事情にとても詳しい人だったのです。その彼から「一緒にバンドをやろう」と誘われたのがきっかけでした。メンバー全員がフランス人のセミプロバンドでピアノを弾いたところが、「お前凄い!」と言われたわけです。その昔弾いていたジャズの経験と、その後どっぷり浸かっている現代音楽の2つを“一緒にしてしまえばいいんだ”と思って弾いたフリーな即興演奏です。演奏することからずっと離れていたけれども、ジャズのノリが好きなうえに、がんじがらめのコード進行からも開放されて“何を弾いてもいい”という状況の中から生み出された音楽だったのです。まさにフリージャズです。このスタイルが、私にはあっていたのでしょうね。「この人の演奏が凄いんだ」と言われたレコードを聴いて、「ああ、これならすぐにできそうだな」と思ったのです。そして本当にできてしまったのです。それを彼らがとても面白がってくれたのでした。

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