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androp、デビュー10周年イヤーへのときめきを伝えた一夜 『daily』ツアー初日を振り返る

リアルサウンド

19/6/29(土) 18:00

 デビュー10周年イヤーへ突入し、昨年リリースしたアルバム『daily』を引っ提げたandropのワンマンツアー『one-man live tour 2019 “daily”』が、5月15日恵比寿LIQUIDROOMからスタートした。今回のツアーは、仙台、名古屋、大阪、福岡と回り、再び東京へ戻ってandropが初めてワンマンライブを行なった代官山UNITでファイナルを迎えた。昨年行なったライブハウスツアー『one-man live tour 2018 “angstrom 0.9 pm”』同様に、今回も彼らにとって馴染みのあるライブハウスをまわる原点回帰的なツアーでありつつ、同時に『daily』という作品でのandropの新たな息吹を間近で感じてほしい思いもあるのだろう。この原稿では、ツアー初日の恵比寿LIQUIDROOM公演をレポートする。

 新作を携えたツアーの初日というものは、どんなバンドやアーティストでも独特の空気が漂うものだが、この日のandropとそしてチケットがソールドアウトしてフロアにみちみちに詰まった観客たちもまた然り。何かがはじまるときのひりっとした緊張感と高揚感がないまぜになった感覚が会場を覆い、SEが流れると同時にその空気はさらにグッと引き締まる。そして1曲目にプレイしたのは、andropとしては新しいタッチのミディアムで低温感のあるR&B「Blue Nude」。そしてシングル『Koi』のカップリングでありこちらもBPMは低めによるダンスミュージック「For You」へと続いていく。エレクトロと絡む伊藤彬彦(Dr)の的確なビートが気持ちがいい。フロントマン・内澤崇仁(Vo/Gt)はギター持たずグルーヴのある歌のみでフロアを引っ張っていき、前田恭介(Ba)はシンセをプレイするなどしてエレクトロなサウンドをバンドでフレキシブルに作り上げる。

 ライブ定番曲である「MirrorDance」から最新アルバム収録の「Saturday Night Apollo」へと、最初のブロックからダンスチューンの数珠つなぎである。また、andropサウンドのレンジを広げた曲を連投することで、バンド内にも新鮮な風が通っているのを感じるはじまりだ。初日とあって、まだバンドと観客とが探り合うような感覚はひしひしと伝わるが、徐々に緊張がほぐれて体を揺らしていく、ゆらりと動きはじめる素直なフロアの感じもまたライブならではだろう。

 「今日はなんと、初日です。非常に、興奮しております」と挨拶をした内澤は、「あまり興奮しているようには見えないと思うけど(笑)。音楽で、スペシャルな夜にしたい」と続ける。この日は令和になって初のワンマンだが、元号は変われども、洗練されゆく音楽とは裏腹にトークの方は素朴なまま。とはいえ、長年ライブに来ているようなファンは、こんな一幕にもホッとするようで、会場のムードが柔らかさを増すのを肌で感じる。そのムードに「Proust」と「Radio」という、ジェントルでジャジーな2曲がピタリとはまる。最新作からは、ギターの紡ぐ軽やかなループと歌で静かに漕ぎ出す「Blanco」が続く。まさにブランコのように、後半にいくにつれ大きく大きく広がっていく高揚感がシンガロングを生み、観客の声も心もつかむ曲となっている。この日のライブが初披露となった「Blanco」だが、思っていた以上にライブ映えのするスケールの大きいタフな曲で、これからさらに育っていきそうな曲になっている。

 聴き手がそれぞれに曲に想いを乗せ、心地よい一体感が会場を包むなか、中盤のMCは何かがスパークしたのか、メンバー同士のトークが止まらない。佐藤拓也(Gt/Key)から「初日からそんなに喋る!?」とツッコミが入るほど、どんどん話が膨らむ事態に。普段の4人の雰囲気や会話の温度が垣間見える、ステージとフロアとが近いライブハウスだからこそだろう。

 ますますフレンドリーな空間が生まれていくなか、最新作から「Canvas」、そして初期の作品から「Youth」や「Nam(a)e」が続く。聴きなじんできた曲が、新たな曲、新たなモードが加わったセットリストのなかで新鮮に響き、ちがった角度でも聞こえてくる。「Singer」は高揚感と同時に神聖さが増して、観客が力強くコーラスを担うなかで、美しくどこまでも広がっていくような歌となった。

 そして彼らにとって大きなヒットチューンとなった「Hikari」から、Creepy Nutsとの異色コラボで驚かせた「SOS!」という流れでギャップを見せて、後半は「Prism」、「Voice」、「Yeah! Yeah! Yeah!」と鉄板のシンガロングチューンで、観客は大きくジャンプして、声を張り上げた。

 「楽しいです、ありがとう。こういう瞬間があるから音楽を続けてきてよかったと思う。ライブは、俺たちにとって大切な場所。当たり前にできるわけではないし、大切にしたいからこそ、これからもいい音楽を作っていきたい」と内澤は観客に語りかける。喋るのはヘタだから、とその想いを託した曲だと言って最後に「Home」を演奏。andropの10年という歩み、バンドと音楽との10年、バンドと観客との10年、もっとパーソナルな個と音楽・歌とが紡いできた10年という重みある時間を曲に記し、どれだけ先に進んでも、いつでも帰れる場所とした「Home」。その暖かな光あふれる曲は、演奏するたびに、優しさを増している。

 アンコールではandropでは初めてと言える、まっすぐなラブソング「Koi」を披露。映画のために書き下ろした曲だが、この「Koi」もまた10年というアニバーサリーイヤーと、その先へと続いていくこれからにふさわしい。そのときめきを伝えるような一夜となった。

 すでに秋のツアー『one-man live tour 2019 “angstrom 1.0 pm”』開催が決まり、2020年1月には10周年を締めくくる人見記念講堂2デイズ『androp -10th Anniversary live-』が決定しており、ここからのライブ三昧のなかでも最新作の曲たちが大きく育っていきそうだ。

(文=吉羽さおり/写真=笹原清明) 

androp オフィシャルサイト

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