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『ファー・フロム・ホーム』、3日間で10億突破 「スパイダーマンは日本で強い」は本当か?

リアルサウンド

19/7/3(水) 14:00

 先週の記事でも予想した通り、絶好調『アラジン』が先週末も動員61万1000人、興収8億7900万円と相変わらずの圧倒的強さで4週連続で1位をキープ。大ヒットを記録した『アベンジャーズ/エンドゲーム』の勢いにのって公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の首位スタートを阻止した。『ファー・フロム・ホーム』の成績は土日2日間で動員46万人、興収6億9900万円。初日からの3日間の累計では動員66万9304人、興収10億994万9700円。土日2日間の興収比では、シリーズとしての前作『スパイダーマン:ホームカミング』の156%、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の104%、MCUとしての前作『アベンジャーズ/エンドゲーム』の73%という結果。これは「期待通りの好スタート」と言っていい数字だが、もう少し詳しく探ってみたい。

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 6月28日に日本公開された『ファー・フロム・ホーム』は「世界最速公開」と銘打たれていて、実際にアメリカでは翌週の7月2日公開、ヨーロッパや南米の各国でも7月3日、もしくは4日の公開となっているが、厳密に言えば「中国、香港と並んでの世界最速公開」であった。先日、本作のプロデューサーであるケヴィン・ファイギとエイミー・パスカルにそれぞれ取材をする機会があったのだが、この判断はMCUによるものではなく、ソニー・ピクチャーズのマーケティングによるものだという。確かに、前作『ホームカミング』こそアメリカから1か月遅れの公開、非MCU作品の『スパイダーマン:スパイダーバース』にいたってはアメリカから実に3か月も遅れての公開ではあったが、サム・ライミ版の『スパイダーマン3』、マーク・ウェブ版の『アメイジング・スパイダーマン』、『アメイジング・スパイダーマン2』と、スパイダーマン・シリーズは過去にも本国に先駆けて日本で先行公開されてきた歴史がある。

 スパイダーマンの映画について日本で語られる時に、しばしば話題に挙がるのは、サム・ライミ版3部作公開当時の絶大な人気だ。2002年公開の『スパイダーマン』は興収75億、2004年公開の『スパイダーマン2』は興収67億、2007年公開の『スパイダーマン3』は興収71.2億。その翌年の2008年から始まったMCUは、今年公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』で初めて興収60億円を突破し、それは間違いなく快挙ではあったが、10年以上前、サム・ライミ版3部作は安定してその数字を上回っていたわけだ。

 もっとも、サム・ライミ版3部作が公開された00年代はまだまだハリウッドの実写映画が日本で強かった時代。70年代にテレビシリーズとして子供たちの人気を集めた(自分もドンピシャでこの世代だ)東映版『スパイダーマン』(1978年には劇場版も公開)によって他のマーベル・キャラクターと比べると抜群の知名度があったことも少なからず影響しているだろうが、そもそも「ハリウッドのエンターテインメント大作」のベースとなる数字が現在とは違っていた。

 まだMCUに加入前のマーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』が公開された2012年になると、その年の日本におけるスーパーヒーロー映画で2位(1位は『アベンジャーズ』、3位は『ダークナイト ライジング』)の興収31.6億円と、その絶対的な強さは、「海外と比べると日本ではまだ強い」という相対的な強さへと変化しつつあった。2014年に公開された『アメイジング・スパイダーマン2』は前作とほぼ同じ31.6億円。そして2017年のMCU加入以降の初めての単独作『ホームカミング』の興収は28億円。MCU人気が日本でも定着し始めていて、作中では大々的にアイアンマン(トニー・スターク)まで登場していたことをふまえると、同作が『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ2作の成績にも及ばなかった時点で「スパイダーマンは日本で強い」という定説は崩れかけていたと言っていいだろう。

 『ファー・フロム・ホーム』の『アメイジング・スパイダーマン2』以来となる世界最速公開というソニー・ピクチャーズの判断は、そんな停滞気味の状況を打破する意味もあったのかもしれない。そして、今作の好スタートの要因は、「スパイダーマンは日本で強い」というこれまでの要因以上に、『エンドゲーム』の大ヒットによって日本でのMCU人気がさらにもう一つ上の段階に入ったことが大きいのではないだろうか。MCUのファン、そしてスパイダーマンのファンとしては、現在のMCUとスパイダーマンの提携関係がこれからも続いていくことを願って止まない。もちろん、ピーター・パーカー役のトム・ホランドも続投で。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。

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