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欅坂46、21人体制は何が特別だったのか “21人の未完成”だからこそ生まれたグループの魅力

リアルサウンド

18/11/25(日) 10:00

 欅坂46が初のグループ写真集『21人の未完成』を発売した。メンバー21人揃った作品はこれが最後とのことで、ファンにとっても特別な一冊となっている。そこで、彼女たちにとって大きなアイデンティティとなっていたその”21人体制”の意義について、改めてここで考えてみたい。

メンバー全員が輝くための21人体制

 多くのアイドルグループが採用する選抜制度は、メンバーの向上心や活動に対する積極性を育むのに有効だが、ひとたび”非選抜”のレッテルが貼られてしまうと自身の素質に早いうちに見切りをつけてしまったり、活動に対してネガティブな感情に陥ってしまうことも少なくない。全員にスポットライトが当たる全員選抜=”21人体制”は、チャンスをメンバー全員に最大限与えられる仕組みでもあるのだ。

 歌、ダンス、トーク力、文章力、表情の作り方、演技力、バラエティ対応……現在、アイドルには多くの能力が求められる。そのすべての項目にそれぞれ向き不向きがあるだろう。出来る者だけが選ばれて出来ない者は選ばれない制度は、ある意味では理にかなった合理的な手段だが、ある種の残酷性をともなった非情なやり方でもある。その面で全員選抜は、人の努力や将来性をあらかじめ高く見積もった性善説的なシステムとも言えるだろう。

 また、彼女たちのような大人数のグループでは人によってモチベーションに差が出てきたり、スキルの格差からヒエラルキーが生じてしまうことも珍しくない。しかし、彼女たちはそういった点での歩調は合っていたように思う。例えば、1stシングル曲「サイレントマジョリティー」こそ遅れて加入した長濱ねるが選抜から外れたものの、2ndシングル曲「世界には愛しかない」の選抜発表時には21人の全員選抜であることが告げられると、長濱の選抜入りを喜びスタジオ全体が涙で包まれる場面があった(『欅って、書けない?』テレビ東京/2016年6月27日放送)。つまり、この時すでに全員で活動していこうという意識や、メンバー同士の助け合いの精神が芽生えていたのが確認できる。

 21人体制は彼女たちにとって自分たちの能力を存分に試せる場であり、集団において起きやすい問題を解消する役割を持っていた。つまり、腐る者なく全員が輝けるようなグループに向かわせられることが21人体制の大きな意義であったのだ。そして、後から誕生した妹グループのけやき坂46が躍進している状況から「自分たちも頑張らなければいけない」といったコメントをよく残しているのを見るにつけ、全員選抜に欠けている”競争意識”の部分は、妹グループの存在によって補われていたのである。

他のグループとの差別化

 そもそも選抜制度であったり、ポジションに序列を設けたり、あるいは総選挙といった人気投票イベントなど、メンバーの優劣を競わせることによって成長してきたAKB48を母体としながら、欅坂46はことごとくそうした手段を採用しなかった。その意味では、他のグループとの差別化がしっかりとされていたことがデビュー直後から急激に人気を獲得できたひとつの要因とも言えるだろう。

 つまり、この体制は先輩グループとは別の路線を進むための明確な差別化のポイントでもあった。AKB48や乃木坂46といった他の人気グループにはないものがある、という強みが彼女たちがデビュー時から爆発的に人気を獲得できた理由のひとつとなっていたのだ。

 例えば、その独自路線が作品に顕著に現れたのが3rdシングル曲「二人セゾン」だ。それまで3列目にいたメンバーを前列に抜擢したことや、7人×3列というフォーメーションの実践、主役が代わる代わる入れ替わるダンス、欅タワーと名付けられた振り付け、〈そのどれが欠けたって 永遠は生まれない〉といったフレーズなど、グループ全員でひとつの作品を表現しようという意識がパフォーマンスに色濃く滲み出ている。この曲が多くの人から支持される背景には、サウンド面はもちろんだが、それ以外にもこうした”全員野球”な要素が散りばめられているからだろう。

”錆”を楽しむということ

 さらに言えば、代替不可能なパーツの組み合わせによるチーム作りとしての魅力がこの体制にはあった。多くのアイドルグループがそうであるように、構成員が入れ替わり新陳代謝することで組織そのものは半永久的に存続する構造には”人の人生を消費する”側面が如実に現れる。だからこそ幼い少女の大事な成長期をエンターテインメント化するアイドル文化にはアレルギー反応を持つ者も多い。こうしたアイドル文化の性質に対して”一人ひとりが代わりのいない存在である”というグループ運営は挑戦的な意味合いを帯びている。活動を円滑に進めるにあたっては困難も多いだろうが、錆びたら取り替えられる歯車ではなく、錆びてもその錆こそ魅力に変えてしまおうというのが21人体制の根本にある思想なのだ。要するに、循環型ではない新しいスタイルのグループ運営の仕方を作り上げたという面で、この体制には意義があった。錆びるし替えの部品もない、しかしどこかそのほころびに心が惹かれてしまう。まさに「21人の未完成」とは、このグループを表すのに相応しいタイトルだろう。

 彼女たちにとって、2018年は揃わない年だった。上半期は平手友梨奈の不在、5月には志田愛佳と原田葵の活動休止、下半期は今泉佑唯と米谷奈々未と志田の3名が卒業発表。全員が揃わないままもどかしい期間が長く続いた。ようやく21人全員揃った瞬間がこの写真集の発売だったのだ。それゆえメンバーもファンも感慨ひとしおだろう。21人体制というのは、ある面では非合理的なことばかりだ。しかし、である。だからこそ我々は、21人の彼女たちを応援したくなったのかもしれない。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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