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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

和田彩花の「アートに夢中!」

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド

月2回連載

第12回

19/3/20(水)

伊藤若冲、曽我蕭白をはじめ、アヴァンギャルドな江戸時代の絵画を精選して紹介する「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館、4月7日まで)。美術史家・辻惟雄氏が1970年に上梓した『奇想の系譜』(美術出版社)を下敷きにし、同書で取り上げられた岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、歌川国芳、長沢芦雪の6名とともに、新しく白隠慧鶴、鈴木其一を追加した8名を紹介している。人々を驚かせる奇抜な発想を持ち、類稀なる才能を発揮した“奇想の画家”たち。なかでも特に和田さんが注目した作品とは?

とても豪華で、めっちゃくちゃ楽しい展覧会でした! 辻惟雄先生が書かれた『奇想の系譜』のことは知らなかったのですが、今回の展覧会で、本で取り上げられた6名と、追加の2名の画家が「奇想の画家」と呼ばれていることを知りました。もちろん、出品されている作家は知っていましたし、実際に目にした作品もありましたが、「奇想」というくくりで選ばれたこの展覧会は、江戸絵画の新しい見方を教えてくれるものでした。

躍動感あふれる雌雄の鶏
《鶏図押絵貼屏風》

私、実は伊藤若冲の作品を観たのは今回が初めてだったんです。2016年に東京都美術館で開催された「生誕300年記念 若冲展」は、あまりの混雑に行くのを断念してしまって。

若冲は私もずっと気になっていた存在だったんですが、私の中では全然触れてこなかった分野であり、画家だったんですよね。だから今回、「初めての若冲だ!」と、ちょっと興奮しました(笑)

いままで若冲の作品については、「緻密」「鮮やか」「綺麗」などいろいろと見聞きしていましたが、画集やネットなどでその絵を見るのと、実際の絵を見るのとでは全然違います。実物はとても美しく細かいのはもちろん、装飾的と言っていいほど華やか。単純に「すごい!」と思える作品でした。

若冲といえば《動植綵絵》をはじめ、そういった極彩色の緻密な作品を想像する方が多いと思いんじゃないでしょうか。かくいう私もそうでした。しかし若冲の魅力はそれだけじゃないんです。墨だけで描かれた水墨画も必見。こんな作品まで描いてるの? と驚かされました。

伊藤若冲《鶏図押絵貼屏風》紙本墨画 六曲一双 各167.0×348.0cm 個人蔵

私が今回選んだ若冲の作品が、《鶏図押絵貼屏風》。

これは一枚一枚独立した図を貼る、「押絵貼」という様式の屏風です。12匹の雌雄の鶏の様々な姿が楽しめるように構成された、躍動感あふれる作品です。

一羽一羽どれも同じ動きをしている鶏はいません。上を向いていたり正面を向いていたり、下を向いていたり。でも共通しているのは、いまにも動き出しそうということです。どこかアニメーションのコマ割りのようにも見えると思いませんか?

この作品で一番驚かされたのは、墨の濃淡だけで、こんなにも生き生きと鶏が描かれているということ。特に少し濃い目の墨で描かれた尾羽は、スピード感と勢いのある筆によって、翻り、宙を舞うように描かれています。しかも背景には何も描かれておらず、鶏だけで勝負しているのも面白いところ。

そして極彩色の細密な絵とは違い、簡略化されてはいますが、その細部は鶏の特徴をおさえていますし、動きは鶏そのもの。若冲は鶏を飼っており、毎日観察していたといいますから、このどこかユニークでユーモラスな表情や動きは、その観察の賜物なんだと思いました。

でも、若冲という人は、これでもかというほど緻密な絵も描くし、この作品のような、一瞬の鶏を捉えた水墨画も描くし、《象と鯨図屏風》のような、どこか簡略的でとてもデザイン的な作品など、なんでも描ける人なんだということを、今回の展覧会で知りました。

初めて見た若冲。やっぱりすごいな、ということがよくわかりました。

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