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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

第2回

現代日本を泳ぐ気鋭のクリエイターに聞く「現代クリムト講座」

佐渡島庸平とクリムト、ラボを築く

特集

19/3/9(土)

「現代クリムト講座」の第2回は、クリエイターのエージェント企業「コルク」代表の佐渡島庸平さんに話を聞きます。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などの有名マンガ作品に編集として関わりながら、新しいビジネスモデルを模索し続ける佐渡島さん。いかにして彼は新しい刺激を取り込んでいるのでしょうか。アカデミズムから離脱しウィーン分離派(セセッション)を立ち上げたクリムトとの呼応を探ります。

浅草に住んでいたのは、20代の頃だ。遊びたい盛りのぼくは、土曜の夜になると、ふらっと築35年のマンションから抜け出して、雷門通り沿いの居酒屋に向かう。狭い階段を降りた先にあるひっそりとした店内には、20人近い人がひしめき合っている。勤める会社も住む街も異なる老若男女が、ビールを飲み、唐揚げに飛びつき、鍋に群がる。ぼくらはそこで、趣味について熱く議論し、仕事の悩みやマイホーム計画を共有した。やがてそのなかでも年齢の近い、近所に住む5〜6人くらいの友人で日曜の夜に会うようになり、さらにはそこから男子メンバーだけで集まって、仕事の早く終わった日にはちょっと飲もうかという話になり、よくもまぁ頻繁に集まっては飲み食い、語り合ったものだと、眩しい気持ちで当時を振り返る。

マンガ家や小説家といったクリエイターをエージェントする企業「コルク」の代表を務める佐渡島庸平に話を聞きながら思い出したのは、そんな浅草時代のことだった。

コルクは、小山宙哉『宇宙兄弟』や三田紀房『ドラゴン桜』などのマンガ、小説の世界観を、キャラクター・ライセンスやファン・コミュニティ運営といったコンテンツとして拡張している。

設立から7年目を迎え、その活動は少しずつ、変化と拡張を見せている。佐渡島自身はそれをどう捉えているのだろうか。

「7年前と比べると、やっぱりネットの状況が全くちがいますね。今までは常時接続が難しい時代だったので、接触したタイミングだけの売り切りモデルでした。『宇宙兄弟』のファンが作品と関係を築きたいと思ったときに、どれだけ作品のことが好きでも、(年間3冊ぐらいしか単行本が発売されないので)ひとりあたり大体1,800円しか払えない仕組みを、出版社が維持していました。7年間のあいだに(各人がコンテンツを公開できる)「note」や(仮想ライブ空間としてタレントとファンがコミュニケーションをとれる)「SHOWROOM」が始まり、クラウドファンディングも定着しました。ネットで常時接続している状態なので、マンガ本としてでなくサービスとして、どういう風に作品の世界観を提供するのか、ということがそもそも変わり出しています」。

クリムトが生きた19世紀末のウィーンでは、ハプスブルク家の城壁崩壊に代わってリンク(環状道路)ができたことで、産業革命による近代化と並走して、物資、民族、文化が激しく流入出するようになった。そのなかで彼は、伝統的な支持体のカンヴァスに留まらず、壁画、建築の装飾、ポスターなどに媒体を広げ、画家としてのオリジナリティを様々なかたちでアウトプットした。その構図は、ネットの導入によって書籍からサービスへと業態を広げたコルクの活動と重なる。