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ScreenXは“映画を観る”体験をさらに拡張? 大海原が舞台の『MEG ザ・モンスター』から考える

リアルサウンド

18/9/11(火) 13:00

 近年3D上映やIMAXデジタルシアター、そして4DXなど様々な上映システムが登場する中、昨年夏にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場に日本初上陸を果たしたのがScreenX。正面にある通常のスクリーンに加えて、左右の壁にも映像を上映することで視界を270°にわたりカバーする画期的な上映システムだ。

 例えば3Dでは画面に奥行きを生み出し、4DXでは様々なエフェクトによって作品を一種のアトラクションへと変化させる。つまり両者は観客を映画の中に連れていく“体験”であるといえよう。しかし、ScreenXはそれらとは異なり、感覚としては限りなく通常の2D上映に近い。動かない座席に座ったままの観客が得られる、視覚からの情報量を増幅させることで、映画の世界のほうから観客へと近付き、そして包み込む。いわば映画というものが発明された頃から守られ続けてきた、映画を“観る”という極めてファンダメンタルな部分に立ち返り、その中で味わうことのできる臨場感を究極に突き詰めた形態と言えるのではないだろうか。

 9月7日から公開された、ジェイソン・ステイサム主演の海洋パニック・アクション『MEG ザ・モンスター』はこのScreenXを味わうには打ってつけの作品といえるだろう。マリアナ海溝よりも深い深海に向かった海洋探査チームが、そこで謎の巨大生物と遭遇。それは数万年前に絶滅したはずの巨大ザメ“メガロドン”。たちまち深海から人間の生息する地域まで近づいてきたメガロドンを退治するため、命知らずのダイバーが立ち向かっていくのだ。

 たとえば調査艇や救命艇などの閉塞的な空間に登場人物が置かれている時、正面のスクリーンではその登場人物の表情と視界の中心部分だけが提示される。しかしながら、そこに左右のスクリーンが加わると、いかにその人物が狭いところにいるのかがはっきりとわかり、閉塞的な空間を、開放的な映画館にいながらも同時に体験することができるわけだ。

 対照的に、大海原のどこまでも続く何もない海という、開放的でありながらも穏やかではない空間であったり、突如現れる巨大生物のスケール感を味わうことができるのもScreenXならではのこと。1面のスクリーンでは収まりきれないほど巨大なメガロドンの全貌が、左右のスクリーンとの合わせ技によって露呈されるだけでなく、いつ画面に現れるのかというスリルもまた、3倍になっていくのである。視界が制限されてしまう3Dであれば、観客の心理的にも「これは映画である」と容易に割り切れるであろうが、視界が自由な状態だからこそ生まれる余裕が、包み込んでくる映像と重なることで、かえって緊張感を増幅させていくのだ。

 もともとScreenXは、4DXと同様に韓国のCJ CGV社が開発した上映システムだ。2013年に釜山国際映画祭でキム・ジウン監督&カン・ドンウォン主演の短編映画『The X』でお披露目されると、2015年から本格的に始動。日本では通常上映のみだった『コインロッカーの女』や『新感染 ファイナル・エクスプレス』などの韓国作品をはじめ、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』や『ブラックパンサー』などのハリウッド大作、さらにはコンサート映像のODSなどで活用されている。

 もっとも、現在はまだ“完成形”にはたどり着いておらず、徐々に進化していく(もしかすると通常の映画と同様に、ゴールはないのかもしれない)過程であるといえよう。コンサート映像であればあらかじめ3面分の映像を撮影されるとはいえ、これが映画になるとそうはいかない。あらかじめ3面上映を想定した正面の画面作りがされているものと、後から付け足されたものとが存在し、何よりも作品のすべてのシーンを3面スクリーンでカバーしきれていない。重要なシーンや、映画が盛り上がりを見せるシーンで、ようやく左右に映像が登場するといったところだ。

 現状では映画のストーリーを追うことに特化しているのは正面のスクリーンのみではあるが、いずれは長編映画でも全シーンが3面で進行し、左右の画面でも物語が進行していく作品が登場する可能性も充分だろう。それどころか、あえて正面を軸にすることを保ったままで、天井にもスクリーンを配置してさらに視界を増幅するという進化を遂げるかもしれない。いずれにしても、映画を“観る”という映画の最も忠実な楽しみ方で、今後日本にも次々と導入劇場が増えていくであろうScreenX。今後、映画の技術とともにグレードアップしていく過程を見守っていくこともまた、映画ファンにとってはたまらない“映画体験”になるのではないだろうか。(文=久保田和馬)

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