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KEYTALKが“応援ソング”で発揮するソングライティングスキル 新曲「Cheers!」から考察

リアルサウンド

18/7/22(日) 10:00

 7月18日にリリースされた、KEYTALKのニューシングル『Cheers!』。表題曲はC.C.レモンのキャンペーンソングに起用され、元プロテニスプレーヤーの松岡修造とのコラボレーションでも話題を呼んだポップパンクナンバーだ。

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 踊れるサウンドで人気のKEYTALKだが、ファンの間では歌詞の良さも魅力のひとつとして知られている。特に今作でも光っているのが、リスナーを励まし鼓舞する歌詞の秀逸さだ。 “頑張れ”という言葉が苦手な人にこそ聴いてほしい、KEYTALKの応援ソングの魅力に迫ってみよう。

 いわゆる定番応援ソングといわれる楽曲の多くは、真っ直ぐなメッセージ性の強い歌詞が最大の魅力だ。“頑張れ”“諦めないで”などのストレートな歌詞に励まされたという人も多いだろう。しかし一方で、応援ソングのストレートなメッセージ性は、人によってはプレッシャーを感じさせてしまう諸刃の剣でもある。KEYTALKの歌詞には、“頑張れ”といったわかりやすいメッセージはあまり見られない。もちろん明るくポジティブな歌詞ではあるが、そこにはストレートなメッセージ性のみに頼らない高いソングライティングスキルが見て取れる。

 まず印象的なのは、歌詞全体のストーリー性の高さだ。KEYTALKの歌詞の魅力のひとつに、情感豊かな心象風景描写がある。これは数多くのシングル、アルバムリードトラックの作詞を手がけてきた首藤義勝(Vo/Ba)の得意技であり、特に「トラベリング」「MURASAKI」「Love me」などのラブソングで片想いや失恋の切なさを際立たせるチャームポイントとして活かされることが多いが、「Cheers!」以外の応援ソングでもその存在感は健在だ。

 たとえば、「ASTRO」の冒頭部分〈夢終えた深夜の帰路に空見上げて/過去は走馬灯のように駆け巡って/遥か何億光年先の星のかけら/あの日の僕がよみがえる〉という一節。自身の過去を走馬灯のように思い出しながら夜空を見上げて感慨に耽る、楽曲の中の主人公の様子がまるで映画のワンシーンのように目に浮かぶ。また、「スターリングスター」の〈小高い丘に駆け上って/街を見降ろして〉のように、動作描写を併せて用いることが多いのも特徴的だ。主人公が今現在見ている風景に心理状態を投影し、リスナーに主人公と同じ気持ちを追体験させようと試みている。小説ではよく見られる手法だが、首藤はこのテクニックを作詞に応用しているのだ。巧みな情景描写によってリスナーは楽曲の世界観を鮮烈に想像することができ、気がつけばそのストーリーに惹き込まれているに違いない。

 さらに、歌詞の中にほんの少しだけ“ネガティブさ”が隠されている点も、KEYTALKの楽曲の特徴的な部分だ。先に引用した「ASTRO」では、〈形ないものばかり追い続けて/姿見えない不安ってやつに追い込まれて/希望なんて見失うこともあるだろう〉というフレーズが見られる。八方塞がりの現状に苦しむ様子が描かれることで、ポジティブで力強いサビへと繋がるフレーズ〈未来は見てほら/裏切らないから〉の輝きを一層際立たせることに成功している。また、寺中友将(Vo/Gt)が作詞作曲を手がけた「Oh!En!Ka!」では、〈One day いつもの交差点 くたびれた歩幅の帰り道/見上げた空が滲んで見えた〉と、情景描写との併用でさらにエモーショナルな表現になっている。

 KEYTALKの今までの楽曲と比べても随一のポジティブさを誇る新曲「Cheers!」にも、〈もやもやしたり つまずいちゃったり そんな毎日/流れるままに 眺めるままに 通り過ぎてく〉と、悩み多き日常をポップな言い回しで表現している一節がある。どんなに明るい題材でもネガティブな気持ちをしっかり描き込むことで、リスナーの心にそっと寄り添い、サビなどのポジティブな歌詞のカタルシス感を際立たせるエッセンスとして活用しているのだ。

 また、寺中が手がけた『Cheers!』のカップリング曲「東京シネマ」の歌詞には、〈優しさを唄う歌は 誰かへのナイフに 変わるかもしれない〉というフレーズがある。この歌詞からは、“頑張れ”などの人を励ます善意のメッセージがかえって人を追い詰めてしまうかもしれないことを、寺中が日頃から意識して作詞をしていることが伝わってくる。これは寺中個人から発せられた言葉でありながら、KEYTALKの作詞の根本的なスタンスを明確に言い表している言葉でもあるだろう。

 人を励ますメッセージの重さをしっかりと理解し、その高いソングライティングスキルと深い優しさで独自のスタイルを築き上げた、KEYTALKの応援ソングの数々。ストレートな応援ソングに苦手意識を抱いたことがある人も、彼らの描き出すストーリーにきっと励まされるはずだ。(五十嵐文章)

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