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新時代を形成する“ダーク・ポップ”の担い手、ビリー・アイリッシュとは何者か?

リアルサウンド

19/3/29(金) 12:00

 2001年生まれ、17歳のビリー・アイリッシュはトップスターとなることが約束されたシンガーソングライターだ。そもそも、インターネットではすでにスターなのである。正式なデビューアルバムを出していないにも関わらず、Spotify再生数ビリオン超えのストリーム女王。ツアーも即完売させ、2018年には日本でサマーソニックへの出演を果たし、2019年には世界屈指の音楽イベントであるコーチェラ・フェスティバル(米カリフォルニア州)に出演する。ファンダムも強大で、Instagramのフォロワーは約1,500万人、その数はポップの女王マドンナよりも多い(2019年3月23日現在)。

(関連:“サブベース”がポップスで果たす役割 ビリー・アイリッシュ、ジェイムス・ブレイクなどから考察

 SNS世代よろしく大企業と契約する前にスターダムを築いたビリーだが、実は、その地位は能動的に望んだものではなかった。はじまりは13歳のころ、ビリーがダンスの先生とシェアするためにアップロードしたダンス用楽曲「Ocean Eyes」がSoundCloudで大ヒット。投稿した翌朝、目覚めるとレコード会社からメールが殺到していたのだという。つまり、彼女が自分自身を売り込む前に、才能が王冠を呼び寄せたのだ。そして2019年3月、ついにデビューアルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』がリリースされる。2020年代を代表するアーティストと予言されるビリー・アイリッシュとは、一体何者なのか。その音楽性からスタイルまで、おなじ平成生まれの筆者が紹介していきたい。

 ビリー・アイリッシュは、新時代を形成する「ダーク・ポップ」の担い手だ。音楽性としては、ゆっくりしていて静か、ときにゾッとするほど暗い。しかも、ただダークなだけではない。ビリーはリリックとメンタルヘルス問題を重要視するアーティストだ。たとえば、アルバムのリードシングル「bury a friend」。「友達を埋葬」とは一見過激だが、ここで対象とされているのは「ベッドの下のともだち」、つまり自身の内なる闇ー憂鬱や自己嫌悪ーを指す。こうしたビリーの作品は「最も孤独な世代」を代表するアートとして注目されている。

 現在のアメリカのティーンエイジャーは、最もメンタルヘルス問題を抱えるジェネレーションとされる。その推定要因にはSNS、政治と気候の混乱、そして校内銃乱射が挙げられており、自殺率も急増しているのだ。また、そんな若者たちの憂鬱を反映するかのように、ポップカルチャーも暗くなっている。たとえば、ビリーも楽曲を提供した人気ティーンドラマ『13の理由』は、女子高生が自殺する物語だ。音楽においても、ジュース・ワールドやXXXテンタシオン、リル・ピープなど憂鬱や死を描くSoundCloudラッパーが躍進。そして、2010年代最後の年、ビリー・アイリッシュの1stアルバムによって「ダーク・ポップ」時代が決定すると予想されている。

 アウトローなカリスマ性を喧伝されるビリーだが、その一方でファンとの信頼関係も厚い。あまり笑わないパブリックイメージについて「女の子は笑顔でいることを強いられるから(そのアンチテーゼ)」と語るなど、社会の抑圧にも意識的だ。ファッション面においても、ただスタイリッシュというわけではない。彼女のトレードマークとなっているアイテムは、ルイ・ヴィトンやグッチといった有名ブランドをコピーしたジェンダーフルイドなインディブランド品。権威あるブランドと異なり「製品化」されていないリアルなスタイルが存在すると同世代に伝えているのだという。

 このように、一見クールに見えるビリーは、つねにファンのことを考えているアーティストだ。名声を得た感想にしても「クソだけどファンと会える機会が増えることだけは良い」とするほどに。「声をあげられない人たちの声になること」、これこそビリー・アイリッシュが掲げる目標なのである。デビューアルバム前にワールドツアーを売り捌いてしまう強大な人気は、作品はもちろんのこと、このファン主義あってこそだろう。そのことを表すかのように、モッシュピットで有名な彼女のコンサートでは、多くの女子が熱狂している。

 “憂鬱な世代”を体現し導く若きカリスマは、ポップ界をサバイブする気概も万全だ。村上隆とのコラボレーションビデオも話題となった「you should see me in a crown」で、ビリーは「ハニー、私には王冠が似合う(あなたはそれを見るべきだ)」と王位獲得を宣言している。2019年、いや、それどころか2020年代を定義しかねないデビューアルバムはまさしく必聴だろう。ちなみに「you should see me in a crown」という楽曲題の元ネタは、人気ドラマ『SHERLOCK』。たった数行のコンピュータ・コードで世界の情報を制したと誇るモリアーティ(主人公シャーロックの宿敵)のセリフだ。稀代の天才によるこの言葉は、たった一曲をアップロードしてスターダムを駆けあがったビリーにこそふさわしいかもしれない。(辰巳JUNK)

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