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ジャッキー・チェンは今もワン&オンリー! 『ポリス・ストーリー REBORN』は大満足の出来

リアルサウンド

18/12/2(日) 10:00

 おまえが50歳になっても、ジャッキー・チェン、銃や刃物を持った相手と戦ったり、高くて足場の狭い場所でノースタントでバトルしたり、その末に「それ『滑落』じゃなくて『落下』じゃん」と言いたくなる按配で地面まで落っこちたりしてるぞ。64歳だぞ。

 『ドラゴンロード』の映画館の物販で、ドラゴンキッカーを使用用と保存用のふたつ買い求め、一緒に観に行った同級生とあたりがまっ暗になるまで蹴り合っていた、36年前の自分にそう教えたくなった。『ポリス・ストーリー REBORN』を観て、という話だ。で、映画館を出て、スマホで公式サイトを見たら、各界の著名人たちが寄せている推薦コメントの多くが、そんなふうに自分が思いを巡らせた感じと同じノリで、笑ってしまった。わかる。めっちゃわかるわあ。

 あ、ドラゴンキッカーというのは、『ドラゴンロード』に出てくる、サッカーとバトミントンを合わせたようなスポーツです。羽根を手で触らぬよう、地面に落とさぬよう、蹴って運んで敵のゴールに入れるというもので、当時、映画館ではその羽根(その商品名もドラゴンキッカー)が売られていたのです。蹴るたびにボロボロと羽が抜け、翌日には使えなくなるシロモノでした。

 何度にもわたるハリウッド進出→失敗の末、1990年代後半についに達成(『レッド・ブロンクス』から『ラッシュアワー』シリーズあたりですね)、その後2010年代に入ってからは、『ベスト・キッド』(準主演、2010年)あたりを最後に、本国に戻った感のあるジャッキー・チェン。要は、よくも悪くも、ちょっと落ち着いた、というか。

 って、海外の状況をそこまで詳しく把握しているのかおまえは、と問われると自信ないが、少なくとも日本国内においては、ここ数年のジャッキー・チェンの映画は、明らかに公開規模が小さくなってきている、という実感はある。

 「身体を張った本格アクション映画はこれで最後」という宣言と共に公開された『ライジング・ドラゴン』(2013年)や、エンディングの出演者全員舞踊シーンに「ジャッキー、ボリウッド映画やりたかったんだな」と納得するしかない『カンフー・ヨガ』(2017年)などはまだよかった。しかし、今作『ポリス・ストーリー REBORN』は、11月23日の公開時点では、都内はTOHOシネマズ日比谷・新宿の2館のみ。山形(3館)よりも少なくてどうする、とも言い切れない、なんとなくその感じを理解できてしまうのが、我ながらちょっとあれだなあ……と思いながら、いそいそと日比谷まで足を向けるのだった。

 本格アクションは引退したんじゃなかったのか? っていうか、敵がバイオロイドってどうなの? SFアクションになっちゃうのはありなの? 『ポリス・ストーリー』的には。映画冒頭の『プライベート・ライアン』かってくらい尺たっぷりの銃撃シーン、もはや「警察対犯罪者」というより「普通に戦争」だと思うんですが。そもそも設定やストーリー展開やキャラ設定などに「ちょっとちょっと」「いくらなんでもそれは」と言いたくなるポイント、多すぎない? 敵のボスのアンドレ(カラン・マルヴェイ)と、その第一の部下のえっれえ強い女(テス・ハウブリック)と、そのまた子分の戦闘員たち、さすがにマーベル感、強すぎない?

 というような揚げ足取りは、ジャッキー・チェンの映画である以上……いや、正確に言うと、ジャッキー・チェンが製作総指揮(もしくは監督)の映画である以上、なんの意味もなさないのだった。なんで。そういうもんだから、ハナから。冒頭に挙げた『ドラゴンロード』は、僕の中でトップクラスのジャッキー監督作だが、何度観ても言い切れる。犬が足で書いたようなストーリーだと。でも大好きだし、自分の人生にとってとても重要な映画であることは、36年間変わらない。

 『ドランクモンキー 酔拳』(1978年)で彼を知った世代。朝1回目の上映から夕方まで映画館に留まって、何度もジャッキーのアクションに酔いしれた世代(当時の映画館は入替制じゃなかったので、そういうことができたのです)。初代タイガーマスク佐山サトルとジャッキーが、最初の格闘ヒーローだった世代。「あんなのダンスだ」とバカにするブルース・リー原理主義者たちに、心底腹が立った世代。

 という僕のような奴にとって、常にそういうものであったのだ、ジャッキー・チェンの映画は。むしろハリウッド成功期の作品の方が、「なんかちゃんとしてない?」「ファン以外も楽しめる仕上がりになってない?」と不満を覚えることが多かったかもしれない。『ベスト・キッド』なんて、あまりにいい映画すぎて、ジャッキーもいい俳優すぎて、「これジャッキーじゃなくてもよくない?」と思ってしまったし。我ながら書いていることがむちゃくちゃだが、いや、でも、しかし。

 とにかくカネと手間が湯水のようにかかっていてほしい。ジャッキーに身体を張ってほしい。「素手で戦う」「銃撃で戦う」「落ちる」「飛ぶ」「カーチェイス」などのアクションシーンのバリエーションのいろいろをまず考えて、あとからそれらをつなぐためにストーリーを考えたみたいな映画であってほしい。物語の前半が中国、後半がシドニーを舞台にしているこの『ポリス・ストーリー REBORN』は、最初の銃撃戦争シーンと、シドニーのオペラハウスの屋根の上でタイマン勝負のシーン、あと最後の……(ネタバレ自粛)……のシーンの3つがまずあって、それをつないだ、と私は想像しました。だからもうバッチリなのだが、違っていたらごめんなさい、と謝ってもおきます。

 ブルース・リーには(リアルタイムでは)間に合わなかった、ジャッキーからカンフー映画・格闘映画を知ったにもかかわらず、とうに彼は、僕にとってもそのスジの絶対神ではない。カンフーの美しさという点でははるか昔にドニー・イェンに越えられたし、インドネシアからは「敵をちゃんと殺戮しながら倒す」シラットの映画スター、イコ・ウワイスが現れた(2019年1月公開の『マイル22』も最高でした)。そもそもジャッキーの直後に『少林寺』(1982年)でリー・リンチェイ(のちのジェット・リー)が現れた時点で「ほんとに強いのはこっちちゃう?」みたいな議論、既にあったし。

 しかし。「コミカルあり」の格闘においては、いまだにジャッキー・チェンを脅かすものはいない。誰にも脅かそうという気がないのかもしれないが、ゆえにジャッキー・チェンは、64歳の今もワン&オンリーなのだった、我々にとって。

 どんな内容であろうとも、エンドロールで「英雄故事」が高らかに響けば、それは『ポリス・ストーリー』!(しかも今回は新録!)。そこでNG集が流れれば大満足。それがファンというものです。あ、そのエンドロールでジャッキー、スタッフたちに「来年必ず続編を作ろう!」と言っていた。ほんとに撮るのかな。もう撮ってたりするのかな。

 余談。ヒロインであるジャッキーの娘役、オーヤン・ナナが、欧陽菲菲の姪である、という事実にも、しびれるものがありました。ジャッキー直撃世代は、「ラブ・イズ・オーヴァー」大ヒットをリアルタイムで知っている世代でもあるので。(文=兵庫慎司)

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