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AKLO×ZORNのリミックスに感じたヒップホップ独自の面白さ 『A to Z TOUR 2018』東京公演

リアルサウンド

18/9/7(金) 8:00

 AKLOとZORNが8月24日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて『A to Z TOUR 2018』の東京公演を開催した。

 彼らは昨年7月、同会場でNORIKIYOが開催した『Bouquet Tour Final』にて初見を果たす。そして今年に入り、AKLOがZORNに共演依頼をしたことで、今回のツーマンライブが実現したという。千秋楽となったこの日は、その高いスキルに裏打ちされたラップのみならず、同ツアーのために制作されたリミックスナンバーのパフォーマンスを通じて、ヒップホップならではの魅力にも気づくことができた。

 ライブのトップバッターはZORN。「いい感じ」で幕開け、続く「Life Size」や「葛飾ラップソディー」で、ZORNにとって”何気ない日常”を歌ったかと思えば、ZONE THE DARKNESS時代の「奮エテ眠レ」や「Dark Side」で、かつて胸中にあった暗い陰影も覗かせる。しかし最後には、成長する娘たちへの想いを綴った「Letter」や「My Life」を歌唱。3児の父、そしてラッパーである彼の信念や父性を垣間見て、その人生における振れ幅の大きさを肌で感じるひとときだった。

 続くAKLOは、望むもの全てを手に入れると歌う「Getter」や、人生の浮き沈みをギャンブルに喩えた「NEW DAYS MOVE」などをキック。デビュー当時より親しいBACHLOGICの手掛けた緊張感あるトラックが、よりタイトにAKLOのラップを響かせる。また、彼のユーモラスな言葉選びや、滑らかなフロウから生まれる余裕ぶりは、ZORNとは一変して“孤高な王者”と評せるだろう。多くのラッパーは、自身の成功や、それに向けた野心を語る言葉選びのセンスが往々にして問われるが、AKLOはそのなかでも飛び抜けた存在だ。

 そして、この日のメインアクトであるAKLOとZORNのコラボステージに。彼らは今回のツアーに際して、それぞれの代表曲「RGTO」と「Backbone」のリミックスナンバーを制作。リリース当時とは桁違いのプロップスを稼ぐ彼らによって、前者はリリースから約4年、後者は約5年の時を経て“アップデート”されたのは、長年のヘッズに向けた“凱旋”の含みもあると思われ、非常に興味深い。また、ライブでフロアの起爆剤となるのはもちろん、ステージ外では、多くのリスナーが彼らのツーマンライブに興味を抱くきっかけにもなったはずだ。そう考えれば、両楽曲がツアーを通じて果たした役割はとても大きい。

 そもそもリミックスとは、ダンスミュージックなどでも用いられる制作手法のひとつ。既存曲のBPMやメロディにアレンジを加え、雰囲気の異なる楽曲に仕上げることだ。しかし、ヒップホップでは原曲のトラックをそのままに、新たなアーティストを客演に迎え、彼らが新規にリリックを書き添えるのが主流。原曲に対するアナザーストーリーの展開や、ラッパー同士の交流を目的に制作されるのは、ヒップホップならではだ。後者の一例には、ZORNの<昭和レコード>移籍時に発表され、この日も披露された「最ッ低のMC (2014 Showa Remix)」などが挙げられる。

 しかし、本稿では、現行ラップシーンへのスタンスを歌う「RGTO」に注目したい。同楽曲でAKLOは〈「ドープな Beats?」I Got It / 「Hot な Verse?」Like タイカレー〉と、一問一答形式でラッパーたる自身のスキルを誇示。最後には〈何か足りない物は他にないかね?〉とそれらを強く撥ね退ける。それと一変して、客演で参加したZORNは〈HIP HOPシーンの今? / 人としのぎ合う前に鏡を見な / 自分自身とインファイト〉と、シーンに対するアンサーを提示。中盤には〈お家のローン?もちろん35年〉という、ファンならお馴染みの住宅ローンネタのパンチライン、そしてラストヴァースでは〈バイバイキン バースがアンパンチ〉と、育児に精を出す彼らしい言葉選びで楽しませる。日常生活や人生背景、そこからひらめく言葉を取捨選択する感覚と、自身の得意なフロウ。以上の要素は各ラッパーで様々だが、それらがリミックスとしてうまく調和するからこそ、「RGTO」や「Backbone」と同じく、原曲にはない高揚感を味わうことができるのだ。

 楽曲ごとのテーマに対して、それぞれのラッパーが織りなす多様な世界観や、彼らのキャラクターにマッチした言葉選びを楽しめるのが、リミックスナンバーを耳にする醍醐味だ。また「Backbone (Remix)」では、原曲を歌うZORN、般若やNORIKIYOとは異なり、AKLOはリズムを崩したフロウを見せる。J-POPなどと比較して、その時々での歌い回しの流行が楽曲に強く反映されるのも、ヒップホップの魅力であり聴きどころだろう。

 終盤には、こちらも今回のツアーのために共同制作された「FUEGO」と「Walk This Way」を歌唱。「FUEGO」は、BACHLOGICによる硬質なトラップビートの楽曲。一方の「Walk This Way」は、dubby bunnyのアコースティックな音色が非常に映える作品だ。普段はトラップサウンドを好むAKLOが、アコースティックなトラックに乗るのはとても珍しく、今回のツアーなくしてはこのような機会もなかったであろう。

 ソロのみならず、リミックスナンバーなどをキックしたコラボアクトからも、ヒップホップの独自な面白さを感じられた『A to Z TOUR 2018』。終演前には、ツアーの追加公演も発表された。公演会場や開催時期などは未定だが、この夏を通じて全国を巻き込んだ“熱量”を、再び感じられるライブになるだろう。AKLOとZORNによる、“最初から最後まで”クライマックスなステージが、今からとても待ち遠しい。

(取材・文=青木皓太/写真=@kenji.87)

■関連リンク
AKLO オフィシャルサイト
ZORN オフィシャルサイト

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