Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

桑田佳祐のボウリング愛が結実ーー音楽との融合で感動起こした『KUWATA CUP 2019』

リアルサウンド

19/2/23(土) 18:00

 あの桑田佳祐が、渋谷ヒカリエに特設されたボウリングレーンの上で、楽しそうに歌っている。普段なら1度に3万人以上を動員するドームでライブをしている“桑田佳祐のライブ”としては考えられない、観客約600人という異例の規模だが、その盛り上がりは最高潮だ。ジュニア、アマチュアにトッププロも含めたボウラーたちもレーンに上がり、声を合わせる。桑田が愛するボウリングへの思いを綴った「レッツゴーボウリング」が、会場に響き渡ったーー。

 そんな多幸感に満たされた光景が見られたのは、2月10日。桑田が“自称・コミッショナー”=旗振り役となって昨年11月から開催された、大規模なボウリング大会『KUWATA CUP 2019』のクライマックスだった。同日は、なんと計約3万人ものボウラーが参加した同大会の決勝大会。午前にジュニアボウラー部門、一般アマチュアボウラー部門、マイボール&シューズを携えた男女競技アマチュアボウラー部門の優勝者が決定し、そして午後、男女のプロボウラーがしのぎを削り、緊張感のある決勝戦が行われた。

 午後の部の開始と同時に、名曲「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」に乗って登場した桑田。会場中央に2つのレーンがあり、その横に客席がすぐ広がっている。目を合わせ、会話ができるほどの距離。満員のボウリング&桑田ファンは大熱狂だ。始球式には原由子も登場し、夫婦そろって投球。リラックスしたムードでボウリングの楽しさを伝えた。

 とはいえ、試合の緊張感は凄まじい。至近距離での観戦だけに、観客も息を呑み、ボールがピンを弾く快音とともに、選手に拍手を送る。女子プロと男子プロのセミファイナルが続けて行われ、勝ち進んだ中野麻理子プロ、志摩竜太郎プロの技術とともに、メンタルの強さにも感嘆の声が上がった。

 『KUWATA CUP』は権威づけられた公式大会であると同時に、ボウリングファンのお祭りでもある。決勝の前にはチアダンスのハーフタイムショーが行われ、そしてエキシビジョンマッチとして、桑田佳祐&俳優・村田雄浩の「渡る世間にG★スポッターズ」と、姫路麗プロ&名和秋プロの「悩殺美人女子プロボウラーズ」による対戦が行われた。桑田チームが勝利すれば、両プロからのキス、女子プロボウラーズが勝利すれば、次回『KUWATA CUP』の開催と、対戦の条件も確定し、お互い“負けられない”戦いが始まった。

 ボウリング界のレジェンドたちが見守るなか、“名誉プロボウラー”として高い実力を誇る村田は、この大舞台で200というスコアを叩き出す、さすがの立ち回り。桑田も7、8、9フレームでターキーを記録するなど、ベストスコア299の実力を発揮した。これまで試合を努めて静かに見守っていたファンたちに手拍子を求め、ストライクが出れば、女子プロチームともハイタッチ。誰もが楽しめるレジャーとしてのボウリングの魅力をたっぷり伝えたが、さすがの実力を見せた女子プロチームに、チームスコア合計378-407で惜敗した。しかし、最後にはボウリング界を盛り上げようとしてくれている桑田へのリスペクトを込めて、感謝のキスが贈られるという女子プロからのサプライズも。桑田も『KUWATA CUP』の次回開催をしっかり検討することを約束した。

 決勝戦では、セミファイナルから勝ち上がった中野プロ、志摩プロが、予選1位通過で待ち構えていた坂本かや、太田隆昌両プロに勝利を収め、感動の涙も見られた。レーンコンディション、会場の雰囲気への慣れなど、普段とは違う環境で様々な要素が勝利を分けたと思われるが、どの選手も一様に、このように大掛かりで素晴らしい大会の開催への感謝を語り、「試合が終わればノーサイド」の精神で、健闘を称え合っていた。

 自らがプレゼンターも務めた表彰式の後、マイクの前に立った桑田は、ボウリングの実力はもちろん、人間性も優れた選手たちがより広く世の中に認知されることを祈り、ボウリングを通じた社会貢献についても考えを巡らせながら、これからも楽しんでいきたいと力を込めた。「愛すべきボウリング場に、多くの人が足しげく通うようになってほしい」と語った桑田は、その思いを込めて、冒頭に記したように「レッツゴーボウリング」を歌い上げたのだった。

 一種のアートとも言えるような、突き詰めた競技、スポーツとしての美しさと、誰でも盛り上がれる、歴史あるレジャーとしての楽しさーー。ボウリングが持つこの2つの側面を説得力を持って伝えられるのは、ボウリング愛に溢れ、かつ、人々の心を揺さぶる数々の名曲を世に送り出しながら、ときにユーモラスに、ファンを魅了してきた桑田佳祐というアーティストだからこそだろう。観客の中には、競技に詳しくない桑田ファンも数多くいただろうが、閉会後は誰もが笑顔で、「ボウリングってこんなに面白いんだね」「マイボール、買ってみようかな」と語り合う姿があった。取材であることを忘れて大会に見入ってしまった筆者も、その思いは同じだ。これだけの大掛かりな大会、ハードルは決して低くないはずだが、次回の開催に心から期待したい。(文=橋川良寛)

アプリで読む