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中島愛、花澤香菜、渕上舞、久保ユリカ……個性が感じられる声優アーティストの新作4選

リアルサウンド

19/2/5(火) 8:00

 アニメ/声優ソングのオススメ盤を紹介する本連載。2019年の一発目は「表現者としての個性が感じられる声優アーティストの作品」という切り口でお届けします。声優は主に“声で演じる仕事”を活動の中心にしている性質上、基本的にはキャラクターの向こう側の顔、声優本人のパーソナルな部分に触れられる機会は限られています(もちろん役者としての個性は演技を通じて感じることはできますが)。そんななかで彼ら彼女たちの個人としての性格や魅力がよりはっきりと浮かび上がるのがアーティスト活動。声のスペシャリストとして専業歌手とは違った意味合いの表現力を持った歌声を聴かせたり、作品の方向性や本人の関わり方によっては自身の人間としての核の部分を落とし込んだりと、音楽作品は声優が表現者としての一個人を表出できる場としても機能しているように思います。ここでは、いずれもその音楽を通して本人の眩いばかりのチャームが伝わってくる4作品をピックアップしました。

参考:北野創が選ぶ、2018年アニソン/声優アーティスト年間ベスト10 過渡期の中で若手の台頭も

 まず何を置いても紹介したいのが、中島愛のカバーミニアルバム『ラブリー・タイム・トラベル』。2009年1月28日にシングル『天使になりたい』でデビューしてからちょうど10周年を迎えたことを記念し、初のセルフプロデュースで制作された日本の昔のポップソングのカバー集です。かねてより(主に80年代の)アイドルソング好きであることを公言し、最近では文筆家・甲斐みのりと「乙女歌謡」について語り合った対談集『音楽が教えてくれたこと』の出版、DOMMUNEの作編曲家特集番組への3度に渡るゲスト出演(大村雅朗、船山基紀、林哲司の番組に登場)などを通じて、往時の歌謡曲やアイドルソングに対する造詣の深さとマニアックなまでの情熱を露わにしてきた彼女。そのこだわりぶりを自身のアーティスト性として作品に昇華したのが、本作と言えるでしょう。

 当然ながら選曲も一筋縄ではいかないものになっており、80年代アイドルの象徴たる松田聖子の楽曲からは、数あるヒットナンバーやシングル曲をあえて外し、1987年のアルバム『Strawberry Time』より小室哲哉提供の「Kimono Beat」をセレクト。松田版は大村雅朗のアレンジによる80年代らしい溌溂としたダンスポップでしたが、中島版はハウスプロデューサーのラスマス・フェイバーに編曲を託し、原曲の雰囲気をなぞりつつも流麗なフューチャーポップに仕立てています。ラスマスは今井美樹「雨にキッスの花束を」(1990年)のカバーもアレンジしていますが、こちらはラテンハウス仕様に。他にも、羽田惠理香 with CoCo「無言のファルセット」(1992年)ではKai Takahashi(LUCKY TAPES)、安田成美「透明なオレンジ」(1984年)では金澤ダイスケ(フジファブリック)をアレンジに起用するなど、ただカバーするだけでなく、あくまで現在進行形の音楽として楽曲本来の魅力を引き出すことに成功しています。

 また、松原みき「真夜中のドア」(1979年、原題は「真夜中のドア~Stay With Me」)のカバーが収録されているのも注目ポイント。シティーポップ文脈での再評価も著しい林哲司が作編曲を手がけ、90年代にはハウスユニットのGTSが英詞カバーを発表するなど、クラブシーンでも人気の高いこの楽曲。近年はいわゆる和モノブームの影響もあって海外での認知度も上昇しており、竹内まりや「プラスティック・ラブ」と同様にYouTubeの違法アップロード動画が1,000万回以上も再生されたりしています。そんな楽曲の中島版をアレンジしたのが、先日「プラスティック・ラブ」のカバーを発表して話題となったtofubeats。原曲の大きな魅力であるメロウなグルーヴ感はそのままに、KASHIEFのギターも加わった独自のモダンセンス溢れるサウンドで、海外における和ブギー/シティーポップ人気ともシンクロする世界観を構築しています。何よりどの曲を取っても、中島のオリジナル版シンガーへの愛とリスペクトに満ちた歌唱が素晴らしいので、ぜひ手に取ってほしい一枚です。

 そして、自身が影響を受けたアーティストと直接制作を行うことで表現者としての新たな一面を見せるのが花澤香菜。彼女の通算5枚目となるニューアルバム『ココベース』は、過去4枚のアルバムを一貫して手がけてきた北川勝利のもとを離れ、ギタリスト/プロデューサーとして多くの作品に関わってきた佐橋佳幸がプロデュースを担当。80年代からJ-POPシーンの第一線で活躍する彼の人脈も手伝って、大貫妙子、岡村靖幸、槇原敬之、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)ら豪華アーティストが楽曲提供を行っています。ただ、ここでポイントになるのは、それら参加陣の名前の大きさではなく、あくまでも“花澤自身が好きなアーティスト”という観点で楽曲提供のオファーを行っているということです。

 例えば、彼女は昨夏に行ったワンマンライブでフジファブリック「若者のすべて」のカバーを披露していましたが、今作では同バンドの山内総一郎が「マイ・ソング」を提供。「おとな人間」の作詞・作曲を行った橋本絵莉子(チャットモンチー済)とは、花澤が主演を務めた2010年のTVアニメ『海月姫』でチャットモンチーがOPテーマ「ここだけの話」を担当していた縁もありますが、花澤はそのときからチャット好きであることを語っていました。他にも、彼女とはほぼ同世代のOKAMOTO’S(ちなみに花澤とOKAMOTO’Sのオカモトレイジは子役時代にTV番組『あっぱれさんま大先生』で共演していたことも)、声優として共演歴のある浜野謙太が率いる在日ファンクなど、実はいずれも彼女が普段からその音楽に親しんできたアーティストばかり。そういった人たちの助力を得ることで、今まで以上に自身の本質的な部分を表出したのが『ココベース』なのです。本作が彼女の音楽活動にとっての新たなベースになることは間違いないでしょう。

 そのように自分の好きな音楽やアーティストを通して自己表現の幅を広げる人がいる一方で、みずから積極的に作詞を行うことでリリースごとにアーティスト性を深めていてるのが、『ガールズ&パンツァー』の主人公・西住みほ役や『アイドルマスター シンデレラガールズ』の北条加蓮役などで知られる渕上舞です。彼女は昨年1月に発表したデビューアルバム『Fly High Myway!』で12曲中6曲の歌詞を自分で手がけ、その後の「Rainbow Planet」「リベラシオン」という2枚のタイアップシングルでも作詞を担当(後者のみ松井洋平との共作)。作品の世界観を反映させつつ個人の楽曲としても成立させる、プロの作詞家が行うレベルの歌詞をしっかりと書き上げて、作詞スキルの高さを世に知らしめました。

 そんな渕上のアーティストデビュー1周年を飾ったミニアルバム『Journey & My music』は、鳥好きとしても知られる彼女が“渡り鳥”をテーマに、様々な国をイメージして制作された楽曲を巡り行く一枚に。CMJKが作詞・作曲・編曲したスパニッシュポップ「バレンシアガール」を除く全曲の作詞を渕上本人が担当しています。恋にアグレッシブな女子の気持ちを都会的なダンスサウンドに乗せて表現する「BLACK CAT」、寒さの厳しい雪国の美しさと希望を絶つような儚さを併せ持ったrionos提供の「雪に咲く花。蜃気楼。」など、どの楽曲もタイプは全然違えどそれぞれの国のイメージを喚起させる想像力豊かな内容。そして“旅”そのものをテーマにした最後の曲「Journey」は、彼女自身の人生(もしくは声優としてのキャリア)を旅に見立てたようなワードが散りばめられた、その活動を知っている人ほど感動するに違いないエモーショナルなバラードに仕上がっています。

 最後に紹介するのは、『ラブライブ!』の小泉花陽役をはじめ様々なアニメで活躍する久保ユリカのミニアルバム『VIVID VIVID』。2017年5月に発表した1stアルバム『すべてが大切な出会い~Meeting with you creates myself~』とそれに伴うライブを最後に、しばらくアーティスト活動から離れていた彼女ですが、昨年に歌手活動の再開を発表し、今作はそれ以来の新作になります。その前作では、ミト、前山田健一、Tom-H@ck、久保が昔からのファンだったというスムルースの徳田憲治らを起用し、バラエティ豊かなサウンドを展開していましたが、今回の新作は多彩さはそのままに、よりダンサブルな路線に振り切った印象です。

 タイトル曲にしてリードトラックの「VIVID VIVID」は、80’sフィーリングの煌びやかなシンセとモダンなビートが快い溌溂ダンスポップで、作編曲はDa-iCEやCrystal Kayらへの楽曲提供で知られるTAKAROTが担当(作曲はFUNK UCHINOとの共作)。4人のダンサーを従えてキュートに弾けたパフォーマンスを披露するMVを含め、これまでのナチュラル路線なアーティストイメージとはまた違った大人カワイイ魅力を打ち出しています。EDM調のよりエッジーな音で攻める「Instant@Heart」、ヒゲドライバーが得意の8ビットサウンドを引っ張り出したテクノポップ「しかししかじか」、TVアニメ『少女終末旅行』のOPテーマ「動く、動く」で繋がりのある毛蟹が提供したポップでエモいエレクトロハウス「幸せの雲」、本作唯一のバンドサウンドで未来への希望を歌った「旅風船」と、他の収録曲も粒ぞろい。アーティストとしての心機一転を図った一枚となっています。(北野 創)

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