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いま、最高の一本に出会える

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、まごうことなき“おじさん映画”の傑作だ!

リアルサウンド

18/8/10(金) 12:00

 私がおじさんになっても、カッコよく撮れるの? 肉体美はとても無理よ、若い子には負けるわ……。森高千里の名曲「わたしがオバさんになっても」の一節が、一部のみ「おじさん」となって脳裏をよぎった。何の話か? トム・クルーズの話である。

参考:トム・クルーズ、骨折の瞬間【動画】

 「ハンサム」トム・クルーズは、そんな少し古い表現が似合う。青春スターとして登場した80年代、演技派の名声を得た90年代、色んな意味で激動のゼロ年代を経て、今や御年56歳。年齢だけで言うなら、立派な「おじさん」である。そんなトムクルさんの最新作は、脅威と狂気のアクション超大作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』。この映画は「やれんのか!」というアントニオ猪木的な魂の叫びが響き渡る、おじさん映画の傑作である。いわばトムクルさんからの激励だ。

 大人気スパイ映画シリーズの最新作だが、既に各所で話題になっているように、本作最大の魅力はトムクルさんの肉体酷使である。例によって世界的な陰謀を描くストーリーを背に、全身アザだらけになったという格闘シーン、本当に足の骨を折ったビルからビルへのジャンプ、トムクルさん自ら操縦して撮ったヘリ・チェイス等々、まさにアクションの満漢全席。特にヘリ関連のシーンは凄まじい。演じるトムクルさんの顔は完全にマジだ(あれが演技なら、それはそれでもっと凄い)。爽やかな顔面は死の危険に歪み、そこにいるのは懸命に頑張る等身大の56歳である。

 しかし、ただ56歳で頑張っているだけでは、おじさん映画の「傑作」の領域には届かない。本作を「傑作」たらしめているのは、トムクルさんの横に、その魅力を比較されるのを承知の上で、新進気鋭の美形パワーの持ち主を傍らに置いたことだ。現代のハリウッドでトップ・クラスの美形、CIAの諜報員オーガスト・ウォーカーを演じたヘンリー・カヴィルである。身長184cmの35歳。『マン・オブ・スティール』(13年)でスーパーマンに抜擢された、ギリシャ彫刻のようなビジュアルの持ち主だ。こんな冗談みたいな美形と並べられるのである。トムクルさんは身長が170cmなので、どうしても身長差が目立つ。年齢も20歳近く差があり、その上、トムクルさんは危険なスタントが目白押しで、カッコつけるヒマもない。一歩でも間違えれば、いわゆる「食われる」という状態。「これ、トムクルさんよりカヴィルさんの方がカッコよくないか?」となりかねない。まさに新旧美形頂上決戦だが、普通にやればトムクルさんが勝つことは不可能だ。過去にも数々の映画で、ベテラン美形俳優が若い美形俳優に食われることはあった。その再現となった可能性はある。

 ところが、トムクルさんは負けなかった。本作のトムクルさんはやっぱり圧倒的にカッコいい。それはなぜか? 逆説的だが、本作のトムクルさんはカッコ悪いからこそカッコいいのだ。この姿勢と戦略によって、トムクルさんはカヴィルに食われず、なおかつカヴィルを下げることなく、自身のカッコよさを維持する離れ業を成立させている。若手と張り合いつつ、同時に若手を立てているのだ(カヴィルはカヴィルでちゃんとカッコいいのだ!)。この点が本作を傑作の領域まで高めていると言えるだろう。この構図が端的に分かるのが、中盤の見せ場であるパリの追跡シーンだ。文字通り立っているだけで画になるカヴィルは、スマートかつエレガントに普通のペースで歩く。一方、トムクルさんは全力疾走だ。道なき道を走り、跳び、ギャグまで挟み、ボロボロになりながらカヴィルを追いかける。この追跡劇の途中で足も折る。その様が何よりもトム・クルーズという人物の凄みを語っている。そして新旧美形頂上決戦のトドメの一撃は、最後の最後にやってくる。全てが終わって傷だらけのトムクルさん。そのトムクルさんが浮かべる“あの”必殺スマイル。誰もが知っている、水戸黄門の印籠の如き無敵のスマイルだ。笑顔一つで映画を締められる。それはまさに完璧なるハンサム仕草である。世界で一番ハンサムな56歳であり、逆に56歳でもここまでハンサムたれるのだ。

 人は加齢とともに、色々なものを諦める。カッコよくあることだって、諦めの対象だろう。しかし、本作を観ればそんな諦めた心が再び踊りだすはずだ。「56であれだけやってる奴がいるんだ。だったら俺だって、せめて……!」そう思うこと必至である。世界一カッコいい「おじさん」が見れる映画であり、同時に世界中の「おじさん」の背中を「やれんのか!」と叩く。まごうことなき、おじさん映画の傑作だ。

【追伸】
 もちろん真似すると危ないから、そこは要注意ですよ。走るにしても、跳ぶにしても、ストレッチなどを行い、安全と限界を確かめた上で真似をしましょう。(加藤よしき)