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相葉雅紀が最後に見せた切ない涙 『僕とシッポと神楽坂』清々しい最終回に

リアルサウンド

18/12/1(土) 12:00

 東京・神楽坂を舞台に、若き獣医師・高円寺達也(相葉雅紀)と動物、そしてその飼い主との心温まる交流を描いた金曜日ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系)。その最終話が11月30日に放送された。

 最終話では、穏やかな性格の達也が流す涙に心打たれた。心に秘めていたトキワ(広末涼子)への想いを具体的な行動に起こすことはなかったが、信頼以上のつながりが互いに通じ合ったように感じる。トキワは達也の前で涙を流したが、達也はトキワが立ち去った後、誰もいない病院で涙を流す。そのたったひとりで自身の感情を爆発させるシーンで、達也の深い想いがひしひしと感じられ、穏やかながらも切ないシーンとなった。

 トキワの夫・佑(眞島秀和)の生存が確認され、佑は日本へ帰国する。しかし彼は飛行機事故のショックから心神喪失状態となり、トキワや息子・大地(矢村央希)を認知することができなくなっていた。受け入れがたい現実に、トキワは大きなショックを受ける。

 トキワが直面する現実と重ね合わせるように、最終話に登場する動物の病状も重い。認知症を患った老犬とその飼い主が登場する。飼い主は自分の母の介護にも追われ、精神的にも追いつめられているようだ。

 誰も悪くないのに、どうにもならない現実を前にする2つの”家族”の姿は、見ていて心が苦しくなる。そんな彼らに対し、寄り添いながらも干渉しすぎない達也の距離感が印象的だった。達也に対して、夫・佑の状態を深く説明しているわけではないトキワを思いやる達也。母親と飼い犬の介護に疲れた飼い主を気遣う達也。「いつでも手助けできる」と彼女たちが頼りやすい場所をつくって待つ姿は、達也にしかできないことだろう。相葉は相手の目をまっすぐ見て話すが、その目が相手にプレッシャーを与えることはない。素直な思いやりの気持ちが、その目に込められている。

 劇中、達也は前話で受けたアメリカでの新しいプロジェクト参加の話を研修医である広樹(小瀧望)に話し、彼を推薦する。達也は神楽坂で動物病院を続ける決意をしたのだ。

 一方トキワは、佑が口笛を口ずさんでいる姿を見て心を決める。トキワは彼と共に生きることを決め、神楽坂を離れることにしたのだ。心神喪失状態の彼が口ずさんだ口笛は、佑とトキワの共通の思い出だ。彼の中にある“出会った頃の佑”を見いだしたトキワの決心だった。

 「病院での日々が楽しかった」と泣きじゃくるトキワに「笑って」と優しく声をかける達也。「笑ったほうがトキワさんらしい」と話す達也だが、相葉は達也が抱える想いを複雑な表情で表現する。トキワに笑顔を見せながらも、時折感情的になることを抑えるような苦しい表現を見せた。

 トキワとの別れ際、達也は握手をする。そっと手を出し、トキワもそこへ手を合わせる。ぐっと力を込めた達也の手と、それに応えるかのように力を込めたトキワの手から、お互いの信頼以上の思いが通じ合ったように見えた。

 病院へ戻ってきた達也は、トキワが残したメモ書きを見つけ涙する。はじめこそ静かに涙をこぼした達也だが、徐々に体をこわばらせ感情的に涙を流す。

 今作で相葉は、あまり感情的な姿を見せない達也を真摯に演じてきた。しかしこのシーンでは、達也の心の深い部分まで落とし込んで演じたようだ。泣きの演技をする相葉は、恋愛もののドラマでよく見られる“引き留めなかったことへの後悔”は感じさせない。だが彼女に対する強い想いはひしひしと感じる。トキワへの想いを噛みしめるように、声を潜めながら泣く姿はとても切なく、心打たれるものがあった。

 声を潜めながら泣く達也だったが、最後にふと笑顔を見せる。楽しかった日々を確かな思い出として大切にしていこうとする達也らしい笑顔だった。その笑顔からは、いつかトキワ達が病院へ遊びに来る未来が感じられる。清々しいラストとなった。

 『僕とシッポと神楽坂』の舞台は動物病院だが、人と動物の交流以上に、人と人との交流が繊細に描かれたドラマだった。主人公・達也を演じた相葉の、演技に対する真摯な姿勢が活かされたように感じる。また複雑な背景をもつ登場人物が多く登場する作品だったが、シリアスになりすぎなかったのは、毎話登場する動物の愛らしさやドラマ全体に漂う穏やかな空気のおかげだろう。“忙しい一週間で疲れた体と心を癒やす”ドラマであったことに間違いはない。(文=片山香帆)