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本国より早く日本公開された『アンダー・ザ・シルバーレイク』 その危機一髪の裏事情

リアルサウンド

18/10/18(木) 13:30

 先週末の映画動員ランキングは、『宇宙の法ー黎明編ー』が土日2日間で動員13万4000人、興収1億6700万円をあげ初登場1位に。『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』、『モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』に続いて、これで3週連続で入れ替わり立ち替わりアニメーション作品が初登場1位となったわけだが、実は興行全体では9月末から低調な週が続いていて、直近3週の1位作品の興収は、そのまま今年に入ってからのワースト3の数字となっている。

参考:『アンダー・ザ・シルバーレイク』監督が語るLAとポップカルチャー 「映画自体が僕にとっては非常に大切」

 というわけで、今回は一般の「映画動員ランキング」とは別に発表されている「ミニシアターランキング」(小規模公開作品)で初登場1位となった、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の『アンダー・ザ・シルバーレイク』を取り上げたい。同作の公開日(10月13日)時点でのスクリーン数は全国16スクリーン。今のところ、全国38スクリーンで順次公開されていく予定が発表されているが、公開の遅いところでは2019年に入ってからになるので、同じ時期にスクリーンにかかることになるのは最大でも30スクリーン程度ということになる。ちなみに先週末の「映画動員ランキング」で最も少ないスクリーン数の作品は5位の『劇場版 夏目友人帳 うつせみに結ぶ』の136スクリーン、その次に少ないのは初登場2位の『日日是好日』の153スクリーン。近年はミニシアター系作品と言っても実際に上映されているのは大きなシネコンである場合が多いので、言葉遣いの面では少々紛らわしいが、「映画動員ランキング」にあがってくる作品と「ミニシアターランキング」に入っている作品には、同じロードショー作品といっても大きな公開規模の違いがあることがわかるだろう。

 実は、この『アンダー・ザ・シルバーレイク』、製作国であるアメリカ本国での公開日は今年の12月7日となっている。つまり、製作国での公開から何か月も遅れて公開されること(特にミニシアター系の作品では1年以上遅れることも珍しくない。それでも公開されるだけまだよくて、未公開のままになる作品が膨大にあることは言うまでもない)が多い日本の外国映画事情において、極めて珍しい興行となった。

 デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の前作にあたる『イット・フォローズ』(2014年)は日本でもミニシアター規模でのヒット作となり、その影響もあって、さらにその前作(長編デビュー作)『アメリカン・スリープオーバー』(2010年)が本国公開から6年遅れて日本でも一般公開されることに。同作も映画ファンのあいだで話題になり、ロングラン上映されることとなった。加えて、アンドリュー・ガーフィールドが出演している今回の『アンダー・ザ・シルバーレイク』は、デヴィッド・ロバート・ミッチェル作品としては初めての「知名度の高いハリウッドスター」の主演作。配給のギャガは、2018年初頭に発表した今年の公開作品ラインナップの中に本作を入れていた。つまり、もともと『アンダー・ザ・シルバーレイク』はその製作段階から日本で配給権が「青田買い」されるのも納得の注目作だったのだ。

 デヴィッド・ロバート・ミッチェル新作に寄せられていた期待は日本だけのことではなく、その後、同作は今年のカンヌ映画祭のコンペティション作品にも選ばれることに。ご存知のように今年のパルムドールは是枝裕和監督『万引き家族』(こちらもギャガの製作・配給作品だが)が獲って、『アンダー・ザ・シルバーレイク』は無冠に終わったわけだが、雲行きが怪しくなったのはここからだ。当初、カンヌ映画祭の翌月、6月22日にアメリカで公開が予定されていた(カンヌでの評判を見込んだ時期でもあったのだろう)本作は、急遽公開延期に。海外の一部報道では、カンヌでの審査員や批評家からの不評(中には絶賛している評もあったが)を受けて、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督が再編集することになった(139分という上映時間の長さも問題視されていた)という情報や、再編集した作品の仕上がり次第によってはNetflixにセールスをかけることになるかもしれない(実際にNetflixオリジナル作品の中には、映画会社が一般公開を見合わせてNetflixに権利を譲渡した作品も少なくない)という情報も伝えられた。

 結論を言うと、デヴィッド・ロバート・ミッチェルは再編集の作業を拒否し(実際に作品を観た人ならわかるだろうが、もし『アンダー・ザ・シルバーレイク』が再編集されて上映時間が短くなっていたら、当初の作品コンセプトから大きく外れることになっていたはずだ)、作品はオリジナルから変更のないまま、8月以降ヨーロッパ各国で順次公開、アメリカでは当初の6月から半年延期されて12月公開に。そして、日本では当初のスケジュール通り10月に公開される運びとなった。そのような紆余曲折をふまえると、今回「ミニシアターランキング」という括りではあるものの、こうして日本で同作が高く支持されたことを一番喜んでいるのは、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督本人かもしれない。(宇野維正)

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