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『グッド・ドクター』と『透明なゆりかご』に共通点? 命が交差するドラマが教えてくれたもの

リアルサウンド

18/9/20(木) 6:00

 今期の夏ドラマで評価が高く、SNSでも話題になり、とりわけ印象に残る作品となった『グッド・ドクター』(フジテレビ系)と『透明なゆりかご』(NHK総合)。9月13日に最終回を迎えた『グッド・ドクター』では自閉症スペクトラム障害でサヴァン症候群の青年が、偏見や困難を乗り越えて、小児外科医として成長してゆく姿が描かれた。そして、9月21日に最終回を迎える『透明なゆりかご』は、町の小さな産婦人科医院で看護師見習いのアルバイトをする少女が見つめる命をめぐる物語だ。

参考:「すべての子どもが大人になれますように」 『グッド・ドクター』で繋がれた命と山崎賢人の想い

 医療ドラマというだけでなく、この2つの作品にはいくつかの共通点がある。病気を治療して解決という単純な話ではなく、その患者と家族、医師や看護師の心の動きを丁寧に追うヒューマンドラマであること。『透明なゆりかご』の中で描かれるのは、幸せな出産だけでなく、中絶や望まない妊娠によって消えていく命を取り上げる、むしろ産婦人科の陰の部分だ。妊娠をきっかけに逃げてしまう男性がいる一方、女性はたとえ心の準備ができていなくてもすべてを背負わなければならず、ひとりで対処しきれない苦境に立たされることもある。

 『グッド・ドクター』の第8話、小児科医の瀬戸夏美(上野樹里)のセリフに「私たち小児外科医は、子供の命を救うだけじゃない。その未来も預かってるの」とあったように、小児外科もまた子供の病気やケガを治療するだけの場所ではなく、子供とその家族の未来を考慮したうえで最善の方法を導くための決断が迫られる。

 小さな命のたくましさと儚さ、その命に真摯に向き合う人々の人間ドラマ。命には望まれて生まれてくる輝く命もあれば、人知れず消えていく透明な命もある。圧倒的な生命力で誕生できたとしても、病気もケガもなくすべての子供が大人になれるとは限らない。切実で重いテーマを扱っている分、どちらの作品も主人公のまっすぐな眼差し、ピュアで爽やかな好演が際立った。

 この2つの医療ドラマの主人公は、コミュニケーション能力に障害を抱えている。山崎が演じた『グッド・ドクター』の主人公・新堂湊は、自閉症スペクトラム障害でサヴァン症候群のため、周囲の人とのコミュニケーションがうまく取れないが、驚異的な記憶力で医師としての能力を発揮できる。一方、『透明なゆりかご』の主人公・青田アオイ(清原果耶)は、医師から子供の頃に発達障害(注意欠如・多動性障害)と診断される場面があった。

 コミュニケーション能力に秀でている人ならば、空気を読んで大人の事情を察し、暗黙の了解のうちに行動できるだろう。説明する時間をとって相手に「面倒くさい」と思われないよう、ペースに合わせることも簡単なはずだ。しかし、生まれつき障害があると診断されている主人公たちは、大人の事情や曖昧な事柄への対応に戸惑う。

 『グッド・ドクター』では、小児外科医が医師全体の0.3%しかいない現実を取り上げ、不採算の小児外科を廃止して高齢者向け医療型病院になる計画が進んでいた。成功する確率が低いリスクのある手術を避けようとする医師や経営側の意見に対して「どうして助けてはいけないんですか?」「簡単に諦めてはいけません」など率直に言葉を発し、周囲を戸惑わせながらもレジデントとして湊は少しずつ理解者を増やしていった。

 『透明なゆりかご』のアオイは、些細なミスをするたびに激怒し、いつも不機嫌な妊婦のことを「怒る人の気持ち、ちゃんと分かりたいんです」とおびえながらも、知ろうとしていた。分からないことを曖昧にできない、知らないから知りたい。とりあえず理解したフリで素通りしてしまうのではなく、自分が納得する答えに近づこうとする。

 アオイがアルバイトをする産婦人科医院の由比院長(瀬戸康史)は、「妊娠した女性の身体の中で起きていることは医療的にはわかっていても、気持ちは分かりません。それが無性に悔しく思うこともあります。でも、分からないぶん、分かりたいって思う気持ちは強いです。女性の医師だから分かるって流しているところも、僕は勉強して経験を積んで分かろうとします」と語っていた。

 仕事をしていくうえでコミュニケーションは必要で、誰もが悩まずにはいられない。分からないから曖昧にせず、自分から知ろうとして勉強したり経験を積んで分かろうとする。近くにいる存在だからといって心が通じ合えるのは当たり前のことではなく、誰かの助けを必要とすることや逆に誰かに尽くすことで自分が救われることがある。

 湊もアオイもその真っ直ぐさ故に周囲に迷惑をかける。しかし、その真っ直ぐさは、必要以上に他人の気持ちを推し量り、正面から向き合うことを忘れた“大人”たちとはまったく違う意味を持っていた。決してコミュニケーション能力に秀でたわけではない主人公たちだったからこそ、人と人が“向き合う”ことの意味を改めて私たちに教えてくれたように思う。

 生まれて成長していこうとする命、消える命が交差する場所でその命について深く考えるドラマと出会えた。簡単に解決しない問題を抱えた物語ゆえ、もしかしたら続編があるのでは? 高視聴率で終えた『グッド・ドクター』は続編への期待がふくらむ余韻を残す爽やかなラストだった。残り1話となった『透明なゆりかご』も固唾をのんで見守りたい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(池沢奈々見)

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