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倉木麻衣は歌姫としての“実りの時”を迎えたーー20周年へと続く東京国際フォーラム公演

リアルサウンド

18/11/17(土) 10:00

 倉木麻衣が、初のコンセプトアルバム『君 想ふ ~春夏秋冬~』の世界観をステージに再現したツアー『Mai Kuraki Live Project 2018 “Red it be ~君想ふ 春夏秋冬~”』を完走した。千葉・成田国際文化会館 大ホールの“春”公演、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)メインホールの“夏”公演、東京国際フォーラム ホールAの“秋”公演、そして名古屋・日本特殊陶業市民会館 フォレストホールでの“冬”公演の、全4回というプレミアム感満載なライブ。なかでも、11月1日に行なわれた“秋”公演は、“20周年”という実りの時を迎えた倉木麻衣らしさを感じる時間だった。

参考:倉木麻衣、理想の男性のタイプは江戸川コナン? バカリズム「相手見つかるの時間かかりそう」

 開演時間を迎え、スクリーンに映し出されたのは美しい四季折々の風景。種は芽吹き、稲穂は頭を垂れ、鳥は羽ばたき、人々は手を繋ぐ……当たり前のように過ぎゆく日々の中で、登場した倉木麻衣はいつだって私たちがイメージする倉木麻衣そのものだった。デビューして20年という大きな節目を前にしているとは思えないほど、変わらない透明感と可憐さ。とはいえ、彼女が真っ赤なドレスを翻せば確かに感じられる気高さ。16歳だった少女の顔も、36歳の大人の女性の顔も共存しているような、不思議な存在感だ。

 彼女自身が放つそんなタイムレスな雰囲気が、ライブ会場全体を神秘的な空間へと誘っていく。五色布を彷彿とさせる吹き流し、乱れ落ちる紅葉の映像をバックに「渡月橋 ~君 想ふ~」を歌い上げる倉木は、1000年前の歌姫を見ているような気分にさえさせてくれるのだ。まさに「今宵は夢を見させて」という気分だ。古き良き日本の美を、これほどストレートに私たちの心に訴えかけてくれる存在は、倉木をおいて他にいないのではないか。

 暗闇に浮かぶ灯篭の明かり、コスモスやイチョウなど秋のモチーフが描かれたステンドグラスの光。日本人が大切にしてきた丁寧な仕事を感じさせる情景と共に、倉木自身が絹のごとくなめらかな声を紡ぐように「SUMMER TIME GONE」「Your Best Friend」「Tomorrow is the last Time」「Secret of my heart」「mi corazon」を歌う。模様の異なる美しい絹布が次々と目の前で織り上げられるような心地よさ。気づけば、今を生きる私たちに向けたメッセージソング「Light Up My Life」が会場を包み込む。倉木の歌声であっという間に古風で雅な世界から、現代へとタイムスリップしてしまったようだ。

 「メッセージ、届いてますでしょうか?」落ち着いた語り口でスタートしたMCでは「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も」と、倉木が大切にしている座右の銘を明かす。そして、デビュー以来「いろいろな経験をさせていただいた」と、この20年を振り返る。強い想いと、周囲への感謝。正解のない時代に、何かを成し遂げるには、この縦糸と横糸のバランスが大切なのだろう。

 そして聞こえてきたのは、The Beatlesの名曲「Let It Be」のカバーだ。オリジナル曲とはまた異なる肌触りの歌声。だが、それでも“倉木麻衣の歌”として昇華されているのが心地良い。もっと他のカバー曲も聞いてみたくなった。それは、きっと異国を旅して、ふるさとの魅力を再確認したい気持ちに近いかもしれない。

 再び『君 思想ふ ~春夏秋冬~』の世界観へと戻り、ライブもいよいよ後半へ。「Be Proud ~we make new history~」「真っ赤な傘 ~京都の雨~」「Time After Time ~花舞う街で~」「花言葉」と、歌詞に合わせて傘や桜の花が出現する和風ファンタジックな演出が繰り広げられる。これぞ“今の倉木麻衣らしさ”を具現化した、集大成と呼ぶにふさわしいステージだ。

 そして、クライマックスで見せるのは、“未来の倉木麻衣”。激しいダンスサウンドが鳴り響き、キレキレのダンサーたちが踊る中、倉木はショートカットのウィッグ姿で登場。シルバーに輝く衣装は、グラディエーター風にも見える。軽やかにステップを踏み、拳を突き上げ、歌うのは「WE ARE HAPPY WOMEN」。闘うこれからの女性たちを牽引するかのごとく、イキイキとした表情で「もっともっと熱く! もっと行きましょう!」と鼓舞する倉木。客席の声を煽り、会場を端から端まで走りまくる。そして、全てを出し切ろうと「BE WITH U」「Stand Up」「SAWAGE☆LIFE」「Wake me up」「Do it!」とクライマックスをアップチューンで畳み掛け、ラストは高い高いジャンプで締めた。

 もちろん、ヒートアップした観客は誰ひとり席を立たず、熱烈なアンコールを送る。そのエネルギーに倉木も「無敵なハート」で応える。「みんな熱いですね! 楽しんでますか?」弾ける笑顔で問いかける倉木に会場からは全力の声援が飛んだ。そして20年分の「感謝を込めてお届けします」と、「Love, Day After Tomorrow」を披露。ラストは「エールを送らせてください」と銀テープが舞う中、「always」を歌い、気づけばファンと一緒に大熱唱となった。一人ひとりに視線を送り、何度も何度もステージのギリギリまで走りきった倉木は、ヘロヘロになりながら「受け止めてくれてありがとうございました」ととびきりの笑顔で会場を魅了するのだった。

 いにしえの歌姫から、16歳の少女、36歳の女性、そして未来を生きるひとりの人間……実に色々な顔を見せてくれた倉木麻衣のライブ。そこにあるのは、いつの時代も変わらないでほしい美しさと純粋さ、そして「為せば成る」の前向きさと「Let It Be」な柔軟さ。ついに20周年を迎える倉木麻衣が、次に見せてくれる新たな顔を楽しみにしている。(佐藤結衣)

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