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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

左:遠山正道、右:鈴木芳雄

第9回

遠山正道×鈴木芳雄「今日もアートの話をしよう」

建築倉庫ミュージアム「新素材研究所・—新素材×旧素材—」

月2回連載

19/1/4(金)

鈴木 今回は、建築倉庫ミュージアム(東京・天王洲アイル)で開催中の「新素材研究所・—新素材×旧素材—」(3月3日まで)を、紹介したいと思います。ただ二人で展覧会を見学するだけじゃなく、公開対談も行ったので、あわせてこの展覧会をレポートします。

遠山 まず「新素材研究所」について教えてください。

鈴木 「新素材研究所」(以下:新素研)っていうのは、世界的に活躍する現代美術作家の杉本博司さんと、建築家の榊田倫之さんが一緒に、2008年に設立した設計事務所のこと。今回の展覧会は、その活動を紹介するもの。

遠山 杉本さんと榊田さんは、「新素材」を「研究」して、建築設計を行ってるの?

鈴木 ここがまた面白いところなんだけど、「旧素材こそ最も新しい」というのが彼らの理念。伝統的な素材や技法を、どう現代に継承していくかということを探求してるんだよね。

遠山 なるほど。それで会場には、たくさんの古材や石なんかが並んでるわけだ。
 しかし杉本さんって本当に多才だよね。写真家でもあり、古美術商でもあり、そして建築家でもある。榊田さんとの出会いっていうのは大きかったんだろうね。

鈴木 榊田さんによると、「杉本さんは無級建築士。僕はたまたま一級建築士を持ってて、たまたま拾ってもらったって」。でも二人が揃ったことで、世界中に彼らの建築が求められ、世界中で「新素材研究所」が求められるようになった。

遠山 本当に芳雄さんって杉本さんの番記者だよね(笑)。杉本さん関係のこと聞いたら、なんでも答えてくれる。

鈴木 は1988年に杉本さんが、小池一子(註1)さんが創設した佐賀町エキジビットスペース(註2)でやった展覧会からずっと見ています。だから杉本ウォッチ30周年(笑)。

遠山 30年! すごい。この展覧会が杉本さんの日本初の個展だったの?

鈴木 1977年に当時、日本橋3丁目にあった現代美術ギャラリーの南画廊というところで開催されたのが、日本デビューなんだよね。当時杉本さんは29歳。

遠山 その時はどんな作品を展示してたの?

鈴木 残念ながら僕は見てないんだけど、「ジオラマ」(当時は「STILL LIFE」)のシリーズと、「劇場」(当時は「HALL」)シリーズと、もうひとつ、現在では展示されなくなったお経シリーズの3部構成だった。でもカタログは持ってる(笑)。

遠山 今年は杉本さんもだけど、新素研も忙しかったんじゃないの?

鈴木 ここ数年の中で一番忙しかったと思う。ニューヨークで大きい住宅の仕事もあったし、いまヴェルサイユ宮殿のトリアノン離宮で「SUGIMOTO VERSAILLES」(2月17日まで)が、長崎県美術館では「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 世界文化遺産登録記念 クアトロ・ラガッツィ 桃山の夢とまぼろし ―杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」( 1月27日まで)が、そしてテルアビブ美術館でも大個展を開催中。

遠山 いま4つの展覧会やってるの? すごすぎる。これは「新素材研究所」にフィーチャーした展覧会なんだよね?

鈴木 そう。

遠山 建築事務所だけど、「新素材研究所」って名前なのがすごく不思議で。

鈴木 そうだよね、一見すると新しいマテリアルをまさしく研究していそうな感じ。

遠山 なんか機械とかたくさんあって、強度とか経年変化とかを計測していそうな。でも実際には、旧いものを使って最先端の建築を行う事務所っていうのが実態。

註1:【小池一子】 
1936年生まれ。東京都出身。クリエイティブ・ディレクター、コピーライター。早稲田大学卒業後、アドセンター・堀内誠一の下働き、のちに独立。セゾングループのコピーライティングなどをアートディレクターの田中一光とともに手がけ、無印良品の立ち上げにも参画。1976年、編集・デザイン・美術展企画を行う「株式会社キチン」を創設。

註2:【佐賀町エキジビットスペース】 
廻米問屋市場として栄え、昭和の名建築となった「食糧ビル」(1927年竣工)の空間を再生し、1983年から2000年までの17年間、「いま生まれつつあるアートを発信しよう」という理念のもと、現在進行形のアートを発信した日本初の非営利のオルタナティブ・スペース。現代美術を中心に大竹伸朗、森村泰昌、内藤礼などの展覧会を行った。

直島護王神社

鈴木 まず展示の入口には新素研のシグネチャー的素材と言える箒垣が皆さんを出迎えます。

遠山 これって逆さになった竹箒をつなげて、垣にしてるんだ(笑)。

鈴木 箒を逆さにするのは帰れの合図だけど、それを連ねてド頭で出迎えるのが杉本流(笑)。
 そして次に杉本さんの最初の建築作品と言える、護王神社(香川・直島)の模型が展示されてる。

護王神社(香川・直島)の模型

遠山 これはまだ「新素材研究所」ではなく、杉本さんが個人で引き受けた建築なんだよね?

鈴木 そう。まだ新素研はなかったからね。杉本さんは「この仕事で日本の古代の信仰の姿を考える機会を得た」って言ってるんだけど、ここから、日本の建築からどんどんと顧みられなくなりつつある、旧素材を救済するという活動が始まったわけです。
 そしてこの護王神社は2002年に公開されたんだけど、ボロボロに荒れ果てていた神社を杉本さんが依頼されて再建した。