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一度却下された企画が実現? 『絶対零度』プロデューサーが明かす、シリーズ3作目の誕生秘話

リアルサウンド

18/8/13(月) 6:00

 7年ぶりとなる第3作目が現在放送されている『絶対零度』シリーズ(フジテレビ系)。前2作での主人公・桜木泉(上戸彩)から、新たに沢村一樹演じる元公安のエリート刑事・井沢範人を主人公に、“未来の犯罪を予測して捜査する”ことをテーマにした物語が描かれている。沢村をはじめとする新キャストと前シーズンから続投の上戸、横山裕が物語を動かしていく本作は、第1話の視聴率10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を皮切りに、第4話では11.7%を記録するなど高視聴率をマーク。今回リアルサウンド映画部では、プロデューサーの稲葉直人氏にインタビューを行い、シリーズ3作目の構想の経緯から、高視聴率の要因まで、本作の狙いを聞いた。

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■「『絶対零度』として何ができるのか? とても悩みました」

――稲葉さんは、本作で初めて『絶対零度』シリーズに携わっていますが、今回の3作目は、どのような構想を練っていったのでしょうか?

稲葉直人(以下、稲葉):最初、会社から『絶対零度』の新シリーズを作るように言われたときは正直戸惑いました。主演を含めたキャストもほとんど変えてという話だったので。それでまずはシーズン1とシーズン2を見返しました。新米刑事の桜木が葛藤を抱えながら事件と向き合っていく姿はやはり魅力的だったのですが、主演も変わるのに、これと同じことをやっても面白くはならないし、「そこまでして続編を作る必要があったのか?」と批判を受けるだけだろうと思ったんです。主演も代わる、部署も変わる、自ずと事件の内容も変わる。「別の刑事ドラマじゃないか」と誹りを受ける覚悟をした上で、『絶対零度』として何ができるのか? そこからはとても悩みました。そんな中、共同テレビの永井Pや佐藤監督と打ち合わせしているときに、かつて会社に通してもらえなかった企画を話したら、「それ面白いじゃないですか」となったんです。それが今回の未然犯罪捜査(ミハン)の企画でした。元々は若い女性刑事が主人公で、彼女に特殊能力がある設定だったのですが、『絶対零度』でSF設定は許されませんし、沢村一樹さんに主演を引き受けていただけそうな感じだったので、「どんな沢村さんを見たいか?」「沢村さんの魅力を最大限引き出せるキャラクターは?」を考えながら一気に企画書を書き直しました。他のキャラクターもキャスティングと並行しながら考えたので、当初の企画とはまるで違うものになりました。それで会社に企画書を提出したのですが、過去に却下されているものなので内心ドキドキしていたのですが、あっさりGOが出まして。複雑な心中でしたね(笑)。

――“未来の犯罪を予測して捜査する”というテーマは、どのような発想から?

稲葉:アメリカや中国、そして日本でも、ビッグデータやAI、最新鋭の防犯カメラを使って未然に犯罪を防ぐ捜査が始まっている、検討されているというニュースを見ているうちに、今回のミハンのような捜査もいずれ現実のものになるなと思ったのがきっかけです。『マイノリティ・リポート』のような近未来ではなく、現代の日本の警察を舞台とした物語は面白いんじゃないかと。それで調べたら、他にも米ドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』や小説などで犯罪予知の先行作品がいくつかあったので、それらと被らないように意識しながら内容を考えました。

■「“闇”の部分は色濃く出ている」

――シリーズ3作品を通して、『絶対零度』の軸として描かれているテーマは何でしょうか?

稲葉:伊藤淳史さん演じる東堂が、第1話で「未解決事件特命捜査では“過去”、特殊犯罪侵入捜査では“現在”、今回の未然犯罪潜入捜査では“未来”の犯罪を」と話している通り、シリーズ毎に時制のカテゴリーが進化しています。その中で共通しているテーマを挙げるなら、犯罪の根底にある憎しみやエゴや、犯罪から生まれる悲劇と、事件関係者や捜査官たち人間がどう向き合うのか、ということではないでしょうか。今回は捜査官たちそれぞれも過去の事件から心に闇を抱えているので、そうした“闇”の部分は色濃く出ていると思います。その分、暗くなりすぎないように、コミカルなシーンも盛り込むようにしています。

――今回、主演の沢村さんをはじめ、新しいキャラクターが登場していますね。

稲葉:キャラクターを自由に考えることができるというのが、オリジナルの良いところだと思っています。また、せっかく一緒にお仕事させていただく俳優さんたちなのですから、その方々の持つ魅力を最大限引き出したい、輝かせたい、という欲は常にあります。先ほど申し上げたように、沢村さんの井沢範人という役は「沢村さんの持つ魅力を最大限に引き出す」ことを目的に考えたものです。ひょうひょうとした沢村さんも魅力的なのですが、ダークサイドの顔も見たくなってしまった。その二つの顔を持つダークヒーローの主人公がどう受け止められるのか、楽しみでもあります。

――“ミハン”メンバーの紅一点、小田切唯を演じている本田翼さんのSっ気あるキャラクターも毎回話題になっています。

稲葉:本田さんは、僕が前に映画でご一緒したときに、「Sっぽい役どころが絶対に合う」と密かに思っていたんです。ご本人自体はいつもフワフワしていて優しい雰囲気をまとった方なのですが、なぜかそう思ってしまったんです。永井Pからは「稲葉さんがドMだからでは?」と言われています(笑)。また華奢な彼女がアクションをしたらギャップが生まれて面白いのでは? と考えました。ただ、普段運動をしない方なので、できるかどうか心配でもありました。ご本人も「できるかな~?」といった感じだったので(笑)。でも、アクションに挑む彼女の姿勢はとても真摯で、何時間もある練習も音を上げるどころか、真剣な表情で挑んでいます。今回の小田切という役を視聴者の皆さんに楽しく見ていただけてるならすごく嬉しいですし、それはひとえに本田さんの頑張りによるものだと思います。

――過去作から引き続き登場している上戸さんが演じる桜木は、本作の中ではどう描いていくのでしょうか。

稲葉:シーズン2のときはまだ新米クラスだった桜木も、あれから7年が経っているわけですから、かなり成長しているはずです。しかも年上の山内という“後輩”もできました。下ができると人は一段と成長したりしますが、桜木はまさにそれなのではないかと。それで今回は一流の捜査官になっている設定にしました。前のシリーズでは銃も持っていませんでしたが、今回第2話の回想シーンで、桜木の射撃を練習しているシーンを入れたり、成長して一流になった捜査官・桜木泉として、上戸さんにご出演いただいています。

■「より良いものを作るためにジタバタできる余地がある」

――稲葉さんは、映画のプロデュースをこれまで多く手掛けていますが、今回担当しているドラマならではの楽しさや、やりがいを感じるところはどこでしょうか?

稲葉:視聴者の方々の反応を見ながら、それを作品に反映できるということですかね。映画は完成して封切ってしまったら、それができないですから。あと、現場でキャストやスタッフとやり取りしていく中で発見や気づかされることが多々あります。そうしたことも作品に反映させることができる。つまり、より良いものを作るためにジタバタできる余地があるんです。後半に向けてキャラクターがだんだん面白くなってきたりすることがありますが、それは制作者も役者もその役において進化していっているからなんだと思います。

――“月9”としては、視聴率も先週の第5話は10.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調ですが、その理由をどう考えていますか?

稲葉:スタッフやキャストみんなが頑張っているからということに尽きます。手を抜かずに、みんなが頑張っていて、毎週の1時間にそのエネルギーが詰まっているからだと思うんです。1時間の中で二転三転する脚本を作るために脚本家もプロデューサーも苦しみながらやっている。事件モノなので演出部や美術さんも用意する物が多いし、ロケ地も多岐に渡るから制作部も大変。キャストのみなさんだって、猛暑の中での撮影の合間を縫って何時間もアクションの練習をしているんです。先ほどお話した本田さんなんか、汗だくで3~4時間くらい練習した後に「もう1時間やります」なんて言ってたりして。「え~! 7話もアクションあるの!?」とか口では言いながら、実は陰で努力していて、モデルの仕事大丈夫ですか? っていうくらい体中アザだらけになってやっているんです。それが涙ぐましかったり。やっぱり、そうやってスタッフやキャストみんなが「面白いドラマをつくりたい!」と頑張っているエネルギーが、この作品に宿り、それが視聴者のみなさんにも伝わっているのではないかと。

――最後に、今後の見どころについて教えてください。

稲葉:第6話は未然に犯罪を防ぐ話ではなく、第2話、第3話、第5話と3件連続して起きているミハンに絡む不審死について、犯人が明らかにされるところまで描かれます。捜査一課も動き出すので、それはミハン解散の危機だったりもします。なので「最終回じゃないですか!」というくらいの盛り上がりを見せると思います。前半戦の山場となる回なので、犯人を予想しながら楽しんでいただければと思います。

(大和田茉椰)

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