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初登場1位は『ドラゴンボール超 ブロリー』 作品至上主義を貫く東映の手法とは?

リアルサウンド

18/12/20(木) 18:00

 先週末の映画動員ランキングは、『ドラゴンボール超 ブロリー』が土日2日間で動員63万9000人、興収8億1300万円をあげて初登場1位を獲得。初日から3日間では動員82万4000人、興収10億5100万円という大ヒットスタートを切っている。土日2日間の成績での比較では、2015年4月に公開された前作『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の興収比85%の成績となっているが、土曜日が初日だった前作と違って今作の初日は金曜日だったのでほぼ同程度の勢いと見ていいだろう。東宝、松竹と違って「初日金曜日」への移行に慎重だった東映(ラインナップにおける子ども向け作品の比率も影響しているのだろう)だが、来年以降の公開作として発表されている作品は、初日が祝日と重なる作品を除いてすべて初日が金曜日となっている。2018年を通して、ようやく日本映画界においても諸外国と同じ「初日金曜日」が定着したことになる。

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 1996年公開の『ドラゴンボール 最強への道』を最後に、長らく劇場版ではシリーズを休止していた『ドラゴンボール』を東映が17年ぶりに復活させたのが、2013年3月公開の『ドラゴンボールZ 神と神』だった。以来、2015年4月公開の『ドラゴンボールZ 復活の「F」』を経て、今作『ドラゴンボール超 ブロリー』が「リブート」後の作品としては3作目。かつての劇場版シリーズは1年に2作品、公開形態は他作品との併映だったので、現在のシリーズとは座組自体がまったく異なるわけだが、興味深いのは2013年以降の作品は前作との公開インターバルも公開時期も作品によってまちまちであることだ。ちなみに今作『ドラゴンボール超 ブロリー』は前作から3年8カ月ぶりの作品。公開スケジュールがイレギュラーなのは、東映のもう一つの看板シリーズ『ONE PIECE』も同様。毎年必ず『ドラえもん』『ポケットモンスター』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』『妖怪ウォッチ』といったシリーズ作品を律儀にまったく同じ時期に公開している東宝とは大きく異なる。

 これは、ルーティン化によってシリーズが疲弊していく(逆に言えば、ほとんどのシリーズでそうはなっていない現在の東宝がすごいとも言える)ことを回避して、作品至上主義を守るためでもあるのだろう。実際に2013年の『ドラゴンボールZ 神と神』以降は企画の段階から原作者である鳥山明が深く関与し、前作『ドラゴンボールZ 復活の「F」』と今作『ドラゴンボール超 ブロリー』では自身で脚本も手がけている。

 劇場版『ONE PIECE』でシリーズ最高興収を記録した『ONE PIECE FILM Z』も手がけてきた今作の監督の長峯達也のインタビュー(劇場パンフレットより)によると、「僕が直接鳥山明先生とお話したのは、0号試写の時だけで、制作前にはお話してないんですよ。ですから、鳥山明先生の書かれた脚本自体が、『ちゃんとやれよ』というメッセージだと受け取りました」とのことなので、その内幕はなかなかミステリアス。ちなみに鳥山明は本作についてのコメント(同じく、劇場パンフレットより)で「ブロリーはずいぶん昔、東映アニメのオリジナルストーリーで、キャラデザインだけは僕が描いたようですが、内容は簡単に聞いただけのようで、すっかり忘れていました」と、その天然ぶりを披露している。それでこんなに充実した脚本を仕上げてしまうのだから恐れ入るしかない。

 今や『ドラゴンボール』シリーズは完全なグローバル・コンテンツ。フランク・オーシャンをはじめ、アメリカのラッパーやシンガーなどからも度々リリックに引用されることがあるドラゴンボール用語だが、特に中南米における『ドラゴンボール』人気は絶大で、2013年以降の現行の劇場版シリーズ作品は中南米の各国で軒並み年間興収の上位にランクインしているほど。「毎年同じ時期に作品を公開する」という手法をとっていないのには、世界基準で考えてみればそちらの方が理にかなっているという側面もあるかもしれない。

 東映は先日、中国の大手映画会社Bona Film Groupと協力して日中合作映画として『西遊記』をモチーフとした『The Monkey Prince(仮)』(『ドラゴンボール』とルーツが少々被っているように思える企画だが……)を製作することも発表。東映、というか東映アニメーションは、日本の映画界において「世界との距離」という意味では最も「近い」場所にいる。(宇野維正)