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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

乱れ雲

女性映画の巨匠として名高い成瀬巳喜男監督の遺作。夫を交通事故で亡くした若い美貌の人妻と、その加害者である青年との純愛を描いたメロドラマの傑作である。主演は前年の「ひき逃げ」(成瀬巳喜男監督)や「紀ノ川」(中村登監督)で演技面での成長を高く評価された司葉子と、やはり成瀬の「乱れる」(1964)で新境地を開いた加山雄三。司の上品で繊細な美しさと、加山の明朗な個性の組み合わせは絶品で、そのたたずまいだけで切ない思いをかきたてる。ヒロインを矢継ぎ早に不幸が襲うという状況設定には多少の無理があるものの、青年への憎しみが激しい愛へと転じる感情の動きの展開は、まさしく成瀬の独壇場だ。とりわけ印象深いのは、転勤で明日は西パキスタンへ発つという加山と司が湖畔で1日を過ごし、タクシーで宿舎へと向かうシーン。シネスコ画面が捉えたゆるやかに流れ去る車窓の外の風景と彼らの心が重なり合い、そこに見た交通事故の光景が忌まわしい過去をよみがえらせて二人を分かつまでが、無言のうちに語られる。武満徹の叙情的な音楽も忘れがたい。

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